ニュース

優しさを伝える介護技術「ユマニチュード」をAIで学習 "優しい介護"を誰もが学べる

 京都大学は、優しさを伝える介護技術として知られている「ユマニチュード」の技術をAI(人工知能)で評価する手法を開発したと発表した。
 介護の基本であるコミュニケーションの要素「見ること」を定量化することを可能にした。
「優しい介護技術=ユマニチュード」技術をAIで評価
 認知症患者が増えるにつれ、その介護問題、特に人材の不足や介護者の疲弊が社会問題となっている。研究グループはこの問題に対し、認知症の介護者および被介護者の負担感を減らす優しい介護技術「ユマニチュード」を介護の初学者や家族介護者が確実に学べる方法の開発に取り組んできた。

 研究では、介護者の被介護者に対する「見る」技術、具体的には目線の使い方などのコミュニケーション技術の違いを、ユマニチュードの熟練介護者と初学者の間で明らかにした。

 この方法を用いることで、「優しい介護技術」を学ぼうとする人が自分の介護技術を客観的にみることができる。今後は、研究成果にもとづき、より良い介護技術を学習できるシステムの開発を目指す。

 研究は、京都大学情報学研究科の中澤篤志准教授、同こころの未来研究センターの吉川左紀子特定教授、九州大学の倉爪亮教授、東京医療センターの本田美和子氏らの研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「Journal of Intelligent Robotics Systems」オンライン版に掲載された。

関連情報
訓練を要し多くの人に伝えることが困難な「ユマニチュード」
 2025年に必要となる介護者の数は253万人と推定されているにもかかわらず、実際の介護者数は215万人と推定されており、大幅な不足が予想されている。また、認知症には、「認知症行動心理症状(BPSD)」と呼ばれる暴力的な言動をともなうことがあり、これが介護者の精神的・身体的負担を増大させ、介護者の疲弊や介護専門職の離職をまねいている。

 介護は社会的に大きな問題であるとともに、家族など身近な人にも起こりうる個人的にも重要なテーマだ。

 そこで研究グループは、東京医療センターの本田美和子医師を中心に、フランス発祥の優しさを伝える介護技術「ユマニチュード」を日本に導入した。「ユマニチュード」は病院や介護現場を中心に広がりつつある一方で、技術の習得は人対人による訓練によってのみ行われるため、多くの人に確実に伝えることが困難という課題がある。

 この問題に対し研究グループは、画像認識やセンシングなどの技術を使い、AIを用いて解析することで、優しい介護技術の「技術のコツ」を見出し、自己学習システムなどを通して、技術レベルを自動的に評価・自己学習できるようにする手法の開発を目指してきた。
初心者/中級者/熟練者の間に明確な差が
 研究グループは、ユマニチュードの初心者/中級者/熟練者(インストラクター)の介護動作中の目線や頭部の動きを、頭部装着カメラ(ウェアラブルカメラ)で撮影。ここから、顔検出技術、アイコンタクト検出技術などを使い、介護者と被介護者の間のアイコンタクト成立頻度や頭部の姿勢/距離などを検出。

 その結果、初心者/中級者/熟練者の間で、アイコンタクトの成立頻度や顔間距離、顔正対方向の角度において大きな差があることを明らかにした。

 さらに、14人のユマニチュード初心者/中級者/熟練者から得られたデータを統計的データ分析処理(主成分分析)し、初心者/中級者/熟練者の間に明確な境界があることを確かめた。これは、介護者の動作スキルの評価がAIによって行える可能性を示している。

 研究グループが取り組んでいる画像認識による顔検出やアイコンタクト検出技術を組み合わせることで、介護の基本であるコミュニケーションの要素「見ること」を定量化することが可能になる。

 この処理はサーバー上で自動的に処理されるため、人の主観による評価が入らず、また、大量のデータを処理することが可能なため、学習者はいつでもどこでも自分の介護スキルの振り返りを行うことができ、介護技術を向上できる可能性がある。
多くの人が"優しい介護"技術を学べるようになる
 研究グループは現在、同システムを国内の大学に展開し、医療/看護系学生のセルフトレーニングに活用する実証実験を計画している。これにより、同システムの教育効果や使用者によるシステム評価を行う。

 同システムにより、認知症看護における「ユマニチュード」のコミュニケーションスキルの一部を、多くの人に学んでもらうことが可能になる。

 「"優しい介護"技術を学ぶことで、その負担感を少しでも減らせることを目指して研究を行う。この技術が、看護/介護職の方とともに、家族介護をされている方にも使っていただけるように努力を続けています」と、研究者は述べている。

京都大学大学院情報学研究科
九州大学大学院システム情報科学研究院
京都大学こころの未来研究センター
First-person Video Analysis for Evaluating Skill Level in the Humanitude Tender-Care Technique(Journal of Intelligent & Robotic Systems 2019年7月4日)
[Terahata]

「記事の内容」に関するニュース

2019年08月20日
米を中心にした食事はメリットが多い 食べ過ぎると糖尿病リスクが上昇
2019年08月20日
「ワークライフバランス」の改善の効果 生活満足度は女性より男性で改善 34ヵ国を比較
2019年08月20日
高脂肪の肉が「乳がん」リスクを上昇 代わりに低脂肪の鶏肉を食べるとリスクは減少
2019年08月20日
金沢大学がAIを活用した糖尿病性腎症重症化予防の共同研究を開始 日本人に最適な予防法を開発
2019年08月20日
シロタ株を含む乳製品を摂取すると便秘リスクが低減 適度な運動が加わるとさらに効果的
2019年08月15日
働き方改革 「長時間労働」が脳卒中のリスクを上昇させる 産業医の7割が「改善を感じる」と回答
2019年08月14日
認知症を予防するための10の方法 健康的な生活スタイルを実行すれば脳の老化を抑えられる
2019年08月13日
たった12週間のウォーキングで自分は変えられる 運動は考えている以上に簡単
2019年08月09日
「乳がん」を早期発見 唾液をAIで高精度に検査 低コストな測定方法の開発へ
2019年08月07日
トマトのリコピンが肥満とメタボのリスクを低下 血管を健康にする抗酸化作用
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 8,441 人(2019年06月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶