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介護士の「腰痛」に心身のストレスが影響 腰痛対策のためにストレスマネジメントを

 東京大学医学部附属病院は、介護士の腰痛休業について、心身のストレス反応による身体愁訴によるものが多く、腰痛を過度にかばう思考・行動が重要であることを明らかにした。対策としてストレスマネジメントや認知行動的アプローチが重要であることが示された
介護士の腰痛は社会問題化している
 介護士の腰痛休業については、腰にかかる過度な負担を減らすための施策が行われているが、有病者数は増え続けている。東京大学医学部附属病院は、腰痛は心身のストレス反応による身体愁訴によるものが多いことを明らかにした。身体愁訴の症状として、めまい、肩こり、目の疲れ、動機息切れ、胃腸の不調、食欲低下、睡眠障害などがある。

 日本人の腰痛の生涯有訴率は8割を超えており、欠勤や休職の代表的な原因となっている。介護士の腰痛による休業件数は増え続けており、仕事中に発生した腰痛で4日以上休職したという届け出件数が、介護施設で勤務する介護士において、年間1,000件を超えるという報告がある。欠勤や休職だけでなく、腰痛を抱えながら仕事をすることによる労働損失も問題になっている。

 腰痛には、「重い荷物を持ったり介護をしたりする」「不良姿勢」といった腰自体への負担に関わる問題に加え、さまざまな心理的要因が影響している。腰への負担がさらに増したり、脳機能の変化や自律神経のバランスの乱れを介し、痛みが難治化することが明らかになっている。

 しかし、介護士では腰への過度な負担のみに焦点が当てられ、心理的要因を検討した大規模な観察研究は、ほとんど行われてこなかった。介護士の数は高齢化の進展により増加が見込まれ、腰痛対策は早急に検討すべき重要な課題と考えられている。

 研究は、東京大学医学部附属病院22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座の松平浩特任教授、岡敬之特任准教授、吉本隆彦特任研究員らによるもの。詳細は医学誌「Journal of Pain Research」に掲載された。
「ストレス反応」「過度にかばう思考」がリスク因子
 研究グループは、介護施設で働く介護士に限定した観察研究を実施。石川産業保健総合支援センターの小山善子所長の協力のもと、石川県内にある95の介護施設に勤務する介護士1,704名のデータ分析を行った。

 自記式質問表の調査項目は、(1)腰痛の状況と重症度、(2)個人的要因(性別、年齢、学歴、婚姻)、(3)生活習慣(喫煙、運動習慣、睡眠時間、睡眠の質)、(4)労働要因(雇用形態、経験年数、職種、労働時間、夜勤の回数)、(5)心理・社会的要因(職業性ストレス調査票、心理的要因を踏まえて腰痛の遷延化をスクリーニングできるSBST日本語版、専門的には恐怖回避思考・行動と呼ばれる痛みを過度にかばう思考・行動を測定するTSK日本語版)――とした。なお、データの分析は、疫学研究の一般的手法である多変量ロジスティクス回帰分析により行った。

 その結果、仕事に支障をきたすほどの腰痛が3ヵ月以上続いている重度の腰痛と、統計学的に有意に関連していたのは、職業性ストレス調査票で、めまい、肩こり、睡眠障害などの身体愁訴が多いこと、抑うつや不安といった要素を含むSBSTの心理的要因点数が高いこと、TSK得点が高い(腰痛を過度にかばう思考・行動が強い)ことの3項目だった。

 これにより、介護施設で働く介護士の仕事に支障をきたす腰痛が長引く要因について「心身のストレス反応を示唆する身体愁訴が多いこと」「腰痛を過度にかばう思考であること」というリスク因子が明らかになった。
ストレスマネジメントや認知行動的アプローチが重要
 従来の対策では、厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」で、作業中の腰にかかる過度の負担を減らすための対策、例えばリフトを積極的に活用することや日頃の体操の習慣化などが推奨されている。

 これに加え、今回の研究で明らになったリスク要因を加味した労働衛生教育や、ストレスマネジメントが腰痛対策に直結すること、恐怖回避思考・行動を軽減させる認知行動的アプローチが重要なことが示された。

 ストレスマネジメントが腰痛対策に直結することや、恐怖回避思考・行動を軽減させる認知行動的アプローチが重要であることを普及啓発し、標準化することによって、介護士の慢性腰痛の減少、さらには労働生産性を向上できる可能性がある。

 今回の研究で明らになったリスク要因を加味した教育・対策を標準化することにより、社会問題となっている介護士の慢性腰痛が減少し、労働生産性が向上することが期待される。

東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座
Survey on chronic disabling low back pain among care workers at nursing care facilities: a multicenter collaborative cross-sectional study(Journal of Pain Research 2019年3月21日)
[Terahata]

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