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「介護離職ゼロ」を目指して 介護と仕事の両立を支援するも企業の48%は「対策が不十分」

 介護のために退職する「介護離職」が近い将来、さらに深刻化する可能性がある。政府は「介護離職ゼロ」を目指して社会整備を加速していく意向を示しているが、企業の半数は介護と仕事の両立支援の取り組みが「不十分」と考えている。
「介護離職」の数は10万人
 総務省が2012年に公表した「就業構造基本調査」によると、介護や看護のために離職・転職した「介護離職」の数は2011年に10万人を超えた。2016年~2017年の1年間に介護のため離職した者は9万9,000人となっており、前回調査から横ばいになっている。

 離職に追い込まれるのは40~50歳代が多いという。介護離職が増加すれば、企業にとって人材流出となるだけでなく、労働力不足の問題をいっそう深刻化させ、経済の減速につながることも懸念される。経済産業省によると、介護離職にともなう経済全体の付加価値損失は1年当たり約6,500億円と見込まれる。

 政府は「介護離職ゼロ」に向けた具体策として、「仕事と介護の両立が可能な働き方の普及」を掲げている。介護離職を防ぐため、各職場において、両立支援のための各種制度を活用し、柔軟な働き方を選択することにより就業を継続することを求めている。
7割強が「仕事と介護」の両立に不安を感じている
 厚生労働省委託事業の「2012年度仕事と介護の両立に関する労働者調査」によると、介護をする雇用者の年齢階級別構成割合をみると「40歳代・50歳代・60歳代」が全体の8割以上を占めている。

 男女各1,000人の正社員を対象とした調査では、仕事と介護を両立することに対して「不安を感じる(非常に不安を感じる、不安を感じる)」と回答した人が男性で74.4%、女性で79.8%を占めており、男女とも将来親の介護や手助けをする状況に直面した場合の不安が強いことが示されている。

 仕事と介護の両立のためには、まず情報収集が重要だ。常時介護が必要な家族を介護している労働者は、育児・介護休業法などの公的介護保険制度により、介護休業、介護休暇などの制度を利用でき、通算93日間の介護休業を取得できるが、この制度を知らない労働者も多い。

 介護に関する具体的な不安として、「制度の仕組がわからないこと」(53.3%)、「介護がいつまで続くかわからず、将来の見通しを立てにくいこと」(52.2%)、「仕事を辞めずに介護と仕事を両立するための仕組がわからないこと」(44.7%)が多く挙がっている。「勤務先の介護にかかわる支援制度がない、もしくはわからないこと」も39.1%に上る。
「仕事と介護」の両立に必要な支援
 「2016年度版高齢社会白書」によると、介護を理由に離職した人のその理由については、男性女性ともにもっとも多かったのが「仕事と手助け・介護の両立が難しい職場だったため」だった(男性 62.1%、女性 62.7%)。

 「自分の希望として手助け・介護に専念したかったため」も、男女ともに2割ほどいるものの、6割の人が介護と仕事の両立ができずに退職してしまっている状況にある。また、離職の際に就業の継続意向を調査したところ、男女ともに5割以上が仕事を「続けたかった」と回答した。
半数の企業が「介護と仕事の両立支援の取り組みは不十分」
 過去1年間に介護離職が発生した企業は1割に達し、介護と仕事の両立支援の取り組みが「不十分」と感じている企業は48%に上ることが、東京商工リサーチのアンケート調査で明らかになった。

 調査は2019年にインターネットで実施し、全国の6,545社から回答を得た。それによると、過去1年間に介護離職があったとした企業は10%に当たる666社で、介護離職の将来見通しについては「増える」と回答した企業が69%に上った。

 離職者の男女別では「男性が多い」が「女性が多い」を11.9ポイント上回り、少子高齢化で未婚者が親を介護するケースも増加するなど、最近の傾向を色濃く反映する結果となった。

 仕事と介護の両立支援について、自社での取り組みが「十分と思わない」とした企業は48.2%で、「十分と思う」企業の12.0%を大幅に上回った。仕事を続けられる環境整備が遅れている現状が浮き彫りになった。

 自社での取り組みや整備した制度を聞くと、44.7%が「就業規則や介護休業・休暇利用をマニュアルなどで明文化」を選択し、一般社員への浸透が比較的低い「介護休業や介護休暇の周知、奨励」(17.7%)と同様に、制度の認知や啓発に努めている。
仕事と介護の両立のための制度
 厚生労働省は「介護離職ゼロを目指して」と題して、下記の内容のリーフレットを配布している。

 育児・介護休業法で定められた制度について一部紹介します。法律の詳細は「育児・介護休業法のあらまし」を参照するか、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご相談ください。また、勤務先の制度については勤務先の人事・総務担当に相談してください。

1. 介護休業制度
 介護が必要な家族1人について、通算して93日まで、3回を上限として分割して休業できる制度で、労働者から会社に申し出ることで利用できます。 また、介護休業期間中は、要件を満たせば雇用保険から休業前の賃金の67%が支給されます(介護休業給付金)。

2. 介護休暇制度
 介護が必要な家族1人につき、1年度に5日まで、対象家族が2人以上の場合は1年度に10日まで、介護休業や年次有給休暇とは別に1日単位または半日(所定労働時間の2分の1)単位で休暇を取得でき、労働者から会社に申し出ることで利用できます。(令和3年1月1日から、時間単位での取得が可能となります。)

3. 介護のための短時間勤務等の制度
 事業主は以下のa~dのいずれかの制度(介護が必要な家族1人につき利用開始から3年間で2回以上の利用が可能な制度)を作らなければならないことになっています。

a 短時間勤務の制度:日単位、週単位、月単位などで勤務時間や勤務日数の短縮を行う制度です。
b フレックスタイム制度:3か月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各自の始業・終業時刻を自分で決めて働く制度です。
c 時差出勤の制度:1日の労働時間は変えずに、所定の始業時刻と終業時刻を早めたり、遅くしたりする制度です。
d 労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度

4. 介護のための所定外労働の制限(残業免除の制度)
 介護終了まで利用できる残業免除の制度で、労働者から会社に申し出ることで利用できます。

出典:厚生労働省「介護離職ゼロ ポータルサイト」

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2018 社会で支える継続就職~「働きやすさ」も「働きがい」も~(内閣府「仕事と生活の調和」推進サイト)
仕事と介護の両立~介護離職を防ぐために~(厚生労働省)
両立支援のひろば(厚生労働省)
家庭と仕事の両立支援ポータルサイト(東京都)
仕事と介護の両立支援実践マニュアル(厚生労働省)
介護離職「男性が多い」企業、「女性が多い」を11ポイント上回る 第2回「介護離職」に関するアンケート調査(東京商工リサーチ)
[Terahata]

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