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【厚労省検討会最終報告】一般健康診断に血清クレアチニン検査を追加 女性特有健康課題の問診導入へ

 厚生労働省は2025年12月24日、「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」の最終報告書を公表した。検討会は2023年12月から計11回開催され、最新の医学的知見や就労環境の変化を踏まえ、一般健康診断の検査項目や問診内容の妥当性について議論を重ねてきた。
 最終報告では、血清クレアチニン検査の追加や喀痰検査の廃止に加え、女性特有の健康課題を把握する問診の導入方針が示されている。

検討会設置の背景と議論の流れ

 労働安全衛生法に基づく一般健康診断は、事業者が労働者に対して定期的に実施すべき健康診断として長年運用されてきた。現行制度では、問診、身体計測、視力・聴力、胸部X線、血圧、血液検査(貧血、肝機能、脂質、血糖)、尿検査、心電図検査などが法定項目として定められている。

 一方で近年は、高齢化に伴う就業期間の長期化や女性の就業拡大に加え、慢性疾患を抱えながら働く労働者の増加など、労働者の健康課題が大きく変化している。
 こうした状況を踏まえ、厚生労働省は2023年に本検討会を設置し、最新の医学的知見や疫学データを踏まえた健診項目の妥当性、追加の必要性、問診内容の見直しについて検討を進めてきた。

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出典:「第11回 労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」参考資料8(厚生労働省、2025年12月17日)

 2024年11月には中間とりまとめが公表され、その後の追加検討を経て、2025年12月24日に最終報告書が取りまとめられた。

血清クレアチニン測定の追加とその意義

 「中間とりまとめ」以降、検討会では最新の疫学データを踏まえ、現行の健診項目が主要な健康リスクを十分に捉えられているかについて再検証が行われた。あわせて、各学会から提案された新規健診項目についても検討が進められた。
 特に血清クレアチニンについては、尿蛋白や血圧、血糖に異常がみられない場合でも、推算糸球体濾過量(eGFR)の低下を通じて慢性腎臓病(CKD)リスクを早期に把握できる可能性があることから、追加の是非が重点的に議論された。

 検査項目を追加するか否かについては、「中間とりまとめ」でも示された8つの「健診項目を検討する際の要件・着眼点」に基づき、慎重な検討が行われた。

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出典:「第11回 労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」参考資料7(厚生労働省、2025年12月17日)

 そして最終報告書では、空腹時血糖、血圧、血中脂質に加え、HbA1cやがん検診など、内閣府規制改革推進会議第11回医療・介護・感染症対策ワーキング・グループなどの各方面から追加や見直しが求められていた項目についても検討されたが、現時点では追加や見直しを要する十分なエビデンスは得られなかったとしている。

 検討結果は以下の通りで、「血清クレアチニン検査」追加と「喀痰検査」廃止以外、基本的には現行制度を概ね維持することとされた。

  • 既存項目のうち、内閣府規制改革推進会議において指摘のあった「胸部X線検査」及び「心電図検査」は引き続き実施。
  • 学会等から新規項目として提案のあった「眼底検査」は、緑内障の業務起因性又は業務増悪性等のエビデンスが乏しいことを踏まえ、追加することは困難。ただし、一般健診の機会を活用した推奨を行った上で、眼科受診につなげる方策を検討する。
  • 同じく提案のあった「血清クレアチニン検査」は追加することが適当。ただし40歳未満については、医師が必要でないと認める場合には省略可能とされている。
  • 女性の健康課題として挙げられていた「骨粗鬆症検査」は、追加は困難だが、機会を捉えて周知を行う。
  • 「喀痰検査」は廃止。
  • 肝機能検査の名称のうち、国際臨床化学連合勧告に沿っていないGOT等の名称は国際基準に一致させる。
  • 歯科検診は「中間とりまとめ」の通り。

女性の健康課題問診の導入と実施マニュアル公表

 最終報告書では「一般健康診断問診票に女性特有の健康課題(月経困難症、月経前症候群、更年期障害等)に係る質問を追加することが適当」とされた。これは「女性版骨太の方針2023」で示された方向性を具体化するものだ。

 なお、この問診の主目的は、女性労働者自身が健康課題に気付く機会を提供し、必要な場合には専門医受診や就業上の配慮につなげることであり、一次スクリーニングや疾病確定を目的とするものではない。
 また、受診者の任意で行われるものであり、回答内容は健診機関から事業者に直接提供されることはないが、労働者が専門医の診断を受けたうえで事業者に相談することも想定されており、こうした運用方針は2026年1月19日に公表された健診機関向けマニュアル等に明示されている。

実施体制と事業者・健診機関への影響

 報告書では、女性特有の健康課題に関する問診を円滑に実施するためには、健診機関と事業者双方における体制整備が不可欠であるとしている。

 健診機関には、問診の趣旨説明やプライバシーに配慮した情報管理体制の構築が求められる。一方、事業者側には、問診結果を踏まえた就業上の措置や産業医・保健師等との連携体制の整備が必要となる。
 とりわけ小規模事業場では産業医選任義務がないケースも多く、地域産業保健センターなど外部資源の活用が重要となる。保健指導専門職にとっては、今後、女性の健康課題に関する相談対応や職場調整支援の場面が増えることも想定される。

 現時点では省令改正や施行時期は未定であり、今後の労働政策審議会での議論を経て具体化される見通しだ。制度化の段階では、実施要領の整理や現場向け研修の充実が重要となるだろう。

参 考

労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会|厚生労働省
労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会 報告書|厚生労働省(2025年12月24日)
「女性特有の健康課題に関する問診に係る健診機関実施マニュアル」及び「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル」を公表します|厚生労働省(2026年1月19日)
第11回 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ 議事次第:規制改革|内閣府(2023年4月24日)

[保健指導リソースガイド編集部]