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玄米や麦ごはんなどの「全粒穀物」が心臓病や脳卒中のリスクを低下 「超加工食品」の食べ過ぎにも注意

 白米や白パンなどの精製穀物を食べ過ぎていると、心臓病や脳卒中などのリスクが上昇することが、21ヵ国の約14万人を10年近く追跡した研究で明らかになった。
 精製穀物を食べ過ぎていると、早期死亡のリスクが27%、心臓病のリスクが33%、脳卒中のリスクが47%、それぞれ上昇するという。
 「最適な健康状態を得るには、玄米や大麦などの全粒穀物を食べ、精製穀物を少なくすることが勧められます。炭水化物は質の良いものを選ぶことが大切です」と、研究者は述べている。
玄米や麦ごはんなどの「全粒穀物」はメリットが多い
 「全粒穀物(ホールグレイン)」とは、精白などの処理で、果皮、種皮、胚、胚乳といった部位を取り除いていない未精製の穀物のこと。

 未精製の穀類として、玄米、分つき米、麦ごはん、雑穀、ライ麦パン、全粒粉パンなどがある。このうち、玄米は食物繊維、ビタミン・ミネラルなどを豊富に含み、とくにビタミンB1は白米よりも多く含まれている。

 玄米は、白米より水に長時間ひたすといったコツで、食べやすく炊くことができる。最近は、玄米モードを備えた炊飯器や、圧力鍋などが普及し、味も好まれるようになってきた。従来の玄米より炊きやすく食感・食味が良い発芽玄米なども販売されている。

 炭水化物を適切に選び、食べる量を調整することは、糖尿病をコントロールするための最良のアプローチとなる。三大栄養素のうち、血糖にすぐに影響するのは炭水化物なので、その摂り方には注意が必要だ。
精製穀物の食べ過ぎが心臓病や脳卒中のリスクを上昇
 「精製された小麦粉や白米などを食べると、炭水化物の量は同じであっても、食物繊維が少ないため吸収が速く、食後の血糖上昇が起こりやすくなります」と、カナダのサイモン フレイザー大学健康科学部のスコット リア教授は言う。

 「血糖値をコントロールする必要のある人にとって、勧められるのは全粒穀物です」としている。

 研究グループは、北米、南米、欧州、アフリカ、中東、南アジア、東南アジア、中国を含む21ヵ国で行われた、「前向き都市農村疫学調査(PURE)」のデータを利用し、コホート研究を行った。

 PURE研究にした参加した13万1,370人を、16年以上追跡して調査した。研究開始時の参加者の平均年齢は50.1歳で、男性が41.6%だった。

 その結果、精製穀物の摂取量がもっとも少ない(1日50g未満)群に比べ、もっとも多い(1日350g以上)群では、早期死亡のリスクが27%高くなり、心臓病のリスクが33%高くなり、脳卒中のリスクが47%高くなることが分かった。

 さらに、玄米や大麦などの全粒穀物については、健康への悪影響はみられなかった。

関連情報
食物繊維が食後の血糖上昇をゆるやかに
 「多くの国の食事ガイドラインで、全粒穀物の摂取を増やすことが勧められていますが、今回の研究はそれを支持するものになりました。5大陸の21ヵ国のデータを使用しており、1ヵ国のみで行われた研究よりも普遍性は高いといえます」と、リア教授は言う。

 「タンパク質・脂質・炭水化物などは小腸から体中に吸収されますが、食物繊維は小腸を通過して大腸まで達します。食物繊維が豊富に含まれる穀物は、吸収がゆっくりで、食後の血糖値の上昇をゆるやかにします」。

 「しかし、精製された穀類であると、食物繊維がもつ健康上のメリットが失われてしまいます。健康的な食事では、栄養価が高いだけでなく、血糖変動の面でのメリットも多い食物を選ぶことが大切です」としている。

 健康な食生活を実現するために、良質なタンパク質、野菜や果物とともに、良質な炭水化物も取り入れるべきだとしている。
「超加工食品」の食べ過ぎにも注意
 一方で、「超加工食品」を摂り過ぎていると、心臓病リスクと死亡リスクが上昇するという研究も発表されている。

 「超加工食品」(Ultra-Processed Foods)とは聞きなれない言葉だが、実は私たちの身のまわりにあふれている食品だ。インスタント食品やファストフード、スナック菓子、高カロリーの清涼飲料などが典型的な超加工食品。

 米国糖尿病学会(ADA)によると、超加工食品とは「糖分、塩分、脂肪を多く含む、加工済みの食品。硬化油、添加糖、香味料、乳化剤、保存料など添加物を加え、工業的な過程を経て作られ、常温で保存できたり、日持ちを良くしてあることが多い。全粒穀物も最小限かまったく含まれない」。

 「平均的な米国人は、1日の食事のカロリーの半分以上を超加工食品から摂っています。超加工食品の消費は、世界中でますます増えています」と、米国のニューヨーク大学公衆衛生学部のフィリッパ ジュル氏は言う。

 「今回の研究では、1日の超加工食品の摂取量が増えるごとに、心臓病と死亡のリスクが高まることが分かりました。超加工食品を摂り過ぎないようにすることが大切です」。

 「プロテインバー、朝食用シリアル、工業的に生産されたパンなど、健康的と思われている超加工食品であっても、栄養表示をよく見ると、糖分、塩分、脂肪などを加えてあることが多いので注意が必要です」としている。
「超加工食品」の食べ過ぎで心臓病のリスクが上昇
 研究チームは、米国で1970年代から行われている心血管系疾患リスクに関する 研究である「フラミンガム子孫研究」に参加した男女3,003人のデータを解析した。

 参加者の平均年齢は53.5歳で、半数以上が女性で、5.8%が糖尿病、19%が高血圧だった。

 その結果、超加工食品が毎日1サービングの増えるごとに、心血管疾患(冠動脈疾患死、心筋梗塞、脳卒中)のリスクが7%、冠動脈疾患(冠動脈疾患死、心筋梗塞)のリスクが9%、すべての心血管疾患のリスクが5%、および心血管疾患による死亡リスクが9%、それぞれ上昇することが明らかになった。

 「超加工食品の利用は、所得の低い層でより多い傾向があります。2型糖尿病や心臓病などを予防・改善するために、食生活を改善するための個別の栄養カウンセリングができるように、取り組みを強化することが求められています」と、ジュル氏は指摘する。

 「超加工食品はあらゆる場所で売られています。超加工食品の摂取量を減らすために、食事ガイドラインを改正したり、食品加工について推奨事項を設ける、食品会社にも働きかけるなど、ポピュレーションベースの戦略が必要です」。

 「新鮮な野菜や果物、全粒穀物などより健康的な食品にアクセスしやすくするための社会整備も必要とされています」としている。

Eating more refined grains increases risk of heart attack, early death(サイモン フレイザー大学 2021年2月19日)
Associations of cereal grains intake with cardiovascular disease and mortality across 21 countries in Prospective Urban and Rural Epidemiology study: prospective cohort study(BMJ 2021年2月3日)
Ultra-processed foods are breaking your heart: Ultra-processed food consumption associated with increased risk of heart disease, death(米国心臓病学会 2021年3月22日)
Ultra-Processed Foods and Incident Cardiovascular Disease in the Framingham Offspring Study(Journal of the American College of Cardiology 2021年3月30日)
[Terahata]
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