トピックス・レポート

Vol.6 業種ごとの特徴を知ることが、過労死等の予防につながる
RECORDs「業種別ファクトシート」の活用

過労死等防止調査研究センター(RECORDs)
吉川 徹

研究成果を現場につなぐ「ファクトシート」

 保健指導や職場の健康づくりでは、「長時間労働に気を付けましょう」「十分な休養を取りましょう」といった共通のメッセージだけでは十分とは言えません。
 働く人が直面する健康リスクは、業種や職種によって大きく異なります。その特徴を理解したうえで保健指導や職場改善を進めることが、安全で健康に、いきいきと働くことのできる労働環境づくりにつながり、ひいては過労死・過労自殺等の予防につながります。

 労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター(RECORDs)では、これまで行ってきた過労死等事案の調査研究をもとに、業種・職種ごとの特徴を分かりやすく整理した「ファクトシート」を作成しています。これは、研究成果を、産業保健スタッフや事業者、働く人が日常の活動で活用しやすいよう、一枚にまとめた資料です。

業種によって異なる健康リスク

 現在公開しているファクトシートの一つは、令和6年4月から時間外労働の上限規制が適用された「運輸業版」です。研究では、脳・心臓疾患の労災認定事案の約3分の1を運輸業・郵便業が占めること、不規則な勤務や夜間・早朝出庫を伴う長時間拘束の運行パターンが多いこと、さらに真冬や猛暑の時期に発症が多いことなどが明らかになりました。
 こうした特徴を知ることは、勤務管理や健康管理の重点を考える際の参考になります。

 また、「建設業版」では、脳・心臓疾患だけでなく精神障害にも着目しています。調査研究から現場監督や技術者では、自殺に至る割合が高いことがわかりました。技能労働者では「事故や災害の体験」が急性ストレス障害やPTSDなどの精神障害のきっかけとなる事例が多くみられました。
 建設現場での安全対策は怪我や事故防止だけでなく、メンタルヘルス対策としても重要であることが分かります。


健康教育から職場巡視まで幅広く活用

 ファクトシートは、健康教育や安全衛生委員会の資料として利用できるほか、職場巡視や管理監督者への助言、保健指導の場面で「この業種ではどのような健康リスクがあるのか」を共有する資料として活用できます。また、掲載された二次元コードから、RECORDsポータルサイト「健康な働き方に向けて」の関連資料や研究報告書へアクセスでき、必要に応じて詳しい情報を確認することもできます。

 保健指導では、一人ひとりの健康状態をみることはもちろん重要ですが、その背景にある「仕事の特徴」を理解することも欠かせません。RECORDsのファクトシートは、研究成果を現場で活用するための「橋渡し」となるツールです。
 ぜひ、日々の保健活動や職場改善にご活用いただくとともに、RECORDsポータルサイト「健康な働き方に向けて」で公開している関連資料もご覧ください。現場の実践と研究成果を結び付けることで、より実効性の高い過労死等防止対策につながることを期待しています。

医療・IT・外食産業などへ対象を拡大

 私たちは、過労死等事案を分析して終わりではなく、その知見を現場で役立つ形に変換し、働く人の健康を守ることを目指しています。ファクトシートは、そのための橋渡し役です。

現在、過労死等防止の重点業種・職種である医療(医師、看護師)、IT産業、外食産業、教員、メディア業界、芸能従事者などのファクトシートを作成し、今後、順次公開予定です。
 ぜひRECORDsポータルサイト「健康な働き方に向けて」をご覧いただき、研究成果を日々の保健指導や職場改善にお役立てください。


 私たちRECORDs(過労死等防止調査研究センター)は、ポータルサイト「健康な働き方に向けて」で、研究成果の紹介、国内外の最新研究動向、産業保健の現場で活用できるツール、制度に関する情報など、幅広いコンテンツを発信しています。毎年3月にはシンポジウムを開催していますので、ぜひ、ご参加ください。


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[保健指導リソースガイド編集部]