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ラクトフェリンが冬の急性胃腸症状を抑制 ノロウイルスを抑える作用の報告も 信州大学など産官学連携の取組み
2021年02月24日

信州大学は、「ラクトフェリン」の摂取が冬の急性胃腸症状を抑制することを成人ではじめて確認したと発表した。松本市、森永乳業との産官学連携での取組みの成果。
ラクトフェリンが冬の急性胃腸症状を抑制
信州大学は、ラクトフェリン配合錠菓の摂取が、保育園、幼稚園職員の冬の急性胃腸症状に与える影響を調査し、ラクトフェリンを1日200mgまたは600mg摂取することで、急性胃腸症状の有症率が低下することを確認したと発表した。
研究は、信州大学医学部衛生学公衆衛生学教室の野見山哲生教授の研究グループが、松本市、森永乳業との産官学連携で実施したもの。研究成果は、学術誌「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載された。
「ラクトフェリン」は、ヒトなどの哺乳類の乳汁や唾液に含まれるタンパク質で、加熱殺菌前の牛乳にも微量含まれる。
抗菌、抗ウイルス、免疫調節作用を示すことが知られている。これまでの基礎研究から、ラクトフェリンは冬の感染性胃腸炎の主要な病原体であるノロウイルスに対して抗ウイルス作用を示すことが報告されている。
森永乳業 ラクトフェリン研究所によると、ラクトフェリンは食中毒菌の付着タンパク質を分解するほか、ウイルスや菌が腸壁の細胞に付着するのを防ぐ効果があるという。
子供と大人の職員で急性胃腸症状を抑制
保育園や幼稚園は、免疫機能が未発達な子供が集団生活をしている。そのため、感染症が蔓延しやすい環境にあり、子供と接する職員もまた高いリスクにさらされている。
研究グループは今回、松本地域の保育園、幼稚園の職員を対象に、ラクトフェリンの摂取が冬の急性胃腸症状を抑制するかを調べる臨床試験を実施した。
ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験で、松本地域56の保育園、幼稚園職員346人を無作為に3群に分け、プラセボ、ラクトフェリン200mg/日、同600mg/日のいずれかを冬の間の12週間摂取してもらい、摂取期間中の急性胃腸症状の有症率を調査した。
その結果、急性胃腸症状の有症率は、200mg群、600mg群でプラセボ群と比較して有意に低下した。
急性胃腸症状の有症率(%)
ラクトフェリンを摂取すると幼稚園職員の急性胃腸症状が抑制された
ラクトフェリンを摂取すると幼稚園職員の急性胃腸症状が抑制された

出典:信州大学衛生学公衆衛生学教室、2021年
ラクトフェリンを幅広い年代の感染防御に活用できる可能性
松本市の保育園児(1~2歳)が、ラクトフェリン配合ミルク(48mg/日)を摂取することで、冬の急性胃腸症状の有症率が低下し、急性呼吸器症状の日数が減少することも報告されている。
松本市の保育園児(3~6歳児)が、ラクトフェリン配合ヨーグルト(100mg/日)を摂取することで、冬の嘔吐による病欠率が低下することも確認されており、ラクトフェリンの急性胃腸症状に対する抑制効果は再現性を持って確認されている。
成人での抑制効果は今回の研究で、世界ではじめて確認された。「ラクトフェリンが幅広い年代の感染防御に活用できる可能性を示すことができたと考えられます」と、研究グループは述べている。
信州大学衛生学公衆衛生学教室森永乳業 ラクトフェリン研究所
Effects of Lactoferrin on Prevention of Acute Gastrointestinal Symptoms in Winter: A Randomized, Double-Blinded, Placebo-Controlled Trial for Staff of Kindergartens and Nursery Schools in Japan(International Journal of Environmental Research and Public Health 2020年12月21日)
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