Part 2は2025年春以降に公開予定です!

01産業保健・産業保健師とは?

労働の場における保健活動―
産業保健、産業保健師
って、なんだろう?

保健師による保健活動は「人の一生」のあらゆるステージをカバーしています。

「人の一生」のうち、多くの人は「現役世代」として、企業等の職場で長い時間を過ごすことになります。このような「労働の場」で、企業等と労働者が安全で健康に活動できるよう支援するとりくみが「産業保健」です。

そして、「現役世代」が健康で生きがいをもって労働できるよう、心身面でのサポートや、働きやすい環境整備についても留意し活動しているのが「産業保健師」です。
産業保健活動の基盤
産業保健活動の基盤となるのが、企業等の事業主とすべての雇用者の安全・衛生について定めた「労働安全衛生法」です。 この「労働安全衛生法」を基本に、さまざまな産業保健活動が計画的に展開されます。

労働安全衛生法のポイント

目的
職場における労働者の安全と健康の確保と、快適な職場環境の形成の促進
概要
  • 事業主及び労働者の責任・実施事項衛生委員会の設置
  • 産業医の選任
  • 健康診断の実施
  • 就業上の措置等
関連する法律
「労働安全衛生法」以外にも、産業保健活動を遂行するうえで欠かすことができない法律がいくつかあります。以下はその一例です。
  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
  • じん肺法
  • 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(旧 雇用対策法)
  • 労働契約法
  • 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)
  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)
  • 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律
これらは情勢に合わせて都度改正されるため、定期的にチェックすることをオススメします。
保健指導に携わる人が知っておきたい法律・制度をまとめた「保健指導アトラス」

産業保健師
はどんなことができる?

企業等をフィールドに、労働者・事業者の健康支援を行っている「産業保健師」は、労働者ひとりひとり(個人)だけでなく、集団・組織(企業)に対してアプローチすることができます。

産業保健師の最大のミッションは、労働者が健康的に働き、企業の業務が円滑に進められるように、健康課題をアセスメントし、「予防」していくことです。

事前に設定した「産業保健計画」や「安全衛生年間計画」をもとに、労働者を対象とした健康診断や保健指導、職場環境の改善や労働衛生管理や、メンタルヘルス活動など、多岐にわたる業務を遂行していきます。
労働衛生の3管理とは?
「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」の3管理を指します。
これらは、業務中の事故を未然に防ぎ、従業員が健康を維持して安全に働けるようにするために行うものです。
産業保健師の活動で、欠かすことができない視点です。
「労働衛生の3管理」をもっと詳しく知りたい方はこちらをクリック!

1.作業環境管理
作業環境中の有害となる原因を取り除き、良好な状態で管理することを指します。例えば、屋内作業場での浮遊粉じんや臭気を除去するためには有圧換気扇を設置したり、喫煙場所を指定するといった対応が考えられます。また、有害となる原因を把握するには作業環境測定が行われます。

職場巡視による環境評価/作業環境測定結果の評価と改善提案/工学的対策・環境改善の助言 など

2.作業管理
労働環境を改善するための作業方法や、作業負荷を軽減する作業方法を定め、適切に実施できるよう管理することを指します。例えば、長時間のデスクワーク作業で負荷がかかりすぎないように、適切な作業時間および休憩時間設けることなどが考えられます。

作業手順の評価と改善提案/過重労働対策の立案と実施/保護具の選定や管理 など

3.健康管理
労働者の健康状態をチェックし、健康の保持増進を図ることを指します。健康の異常を早期に発見したり、進行・悪化しないよう予防に働きかけることが求められます。

健康診断の実施と事後措置/長時間労働者の面接指導/保健指導・健康教育 など

これら「3管理」は労働衛生における基本的な枠組みです。それぞれの職場で特性やニーズは異なるため、相互に関連づけながら適切な管理方法を考え、計画し、実践したあと、繰り返し改善していくことが大切です。

参考 職場のあんぜんサイト「労働衛生の3管理」(厚生労働省)

産業保健師って何人いるの?
令和4年末現在の就業保健師は60,299人(男1,947人、女58,352人)です。
このうち「事業所」に就業しているのは「4,201人」で、就業保健師のうち7%が「産業保健師」として働いている、といえます。
令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況(厚生労働省)より

いま、
産業保健師
が企業に注目されている理由とは?

ヒントは、「職場における健康課題の多様化」です。

現代では、労働安全衛生法が制定された昭和47(1972)年当時には想定されていなかったさまざまな健康課題が数多く生じています。 参考までに、「産業保健のあり方に関する検討会」では、産業保健に関する現状と課題として下記が挙げられています。
  • メンタルヘルス対策及びメンタルヘルス不調者への対応(職場復帰、就業管理等)の増大
  • 高年齢労働者の増加に対する疾病管理や重症化予防(増加を続ける健診の有所見率)
  • がん等の病気の治療と仕事を両立する労働者への疾病管理や就業管理
  • 女性就業者の増加に伴う女性の健康問題への対応・化学物質の自律的な管理への移行に伴う健康管理対策
  • COVIDー19対応等の感染症対策(突発的な業務への対応による過重労働等対策を含む)
  • テレワークの増加に伴う健康管理上の問題等への対応 など
このような新たに生じた課題を含んだ「職場の健康課題」は、年を追うごとに深刻化しています。
現場で活躍する産業保健師!
しかし、このような状況だからこそ、「産業保健師」のニーズが高まっているといえます。
すでに健診事後フォローやメンタルヘルス対策をはじめとした、種々の保健指導に対するニーズの高まりから、産業保健の現場で活動する保健師は増加しつつあり、多くの事業場で重要な役割を担っています。

「健康経営」の考え方を意識する経営者も増え、さらに健康管理を支援するIT技術も日々進歩しています。
どのような状況でも柔軟に対応することができる「産業保健師」が求められるシチュエーションは、今後ますます増えていくと考えられます!

~「中小企業」と労働災害~

日本の企業のうち、全事業所に占める中小企業の割合をご存知ですか?
「中小企業法」での定義は業種によって異なりますが、日本全体の企業でみると「99.7%」が中小企業です。法令では、事業場ごとに産業医及び衛生管理者(50人未満の事業場は衛生推進者)を選任し、これらの者が産業保健活動を担うことが想定されています。

ところが、1,000人未満の事業場では必要な健康管理活動が行えていないことが多く、50人未満の事業場では、産業保健活動そのものがほとんど行われていないのが実態です。法令が想定する産業保健活動とその実態には大きな乖離があるのです。さらに、労働災害は小規模な事業場ほど多く発生しています。安全配慮義務を徹底するためにも、中小企業における産業保健の普及が望まれています。

参考 産業保健のあり方に関する検討会 資料2 日本を支える中小企業(独立行政補腎 中小企業基盤整備機構) 労働災害統計(職場のあんぜんサイト) 令和4年度 保健師の活動基盤に関する基礎調査報告書

Part 2は2025年春以降に公開予定です!

ページのトップへ戻る トップページへ ▶