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【新型コロナ】働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査 コロナ禍で健康・意識・雇用・介護が変化

 東京大学社会科学研究所は、「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」の最新の研究成果を発表した。

 コロナ禍で、主観的な健康観について、悪くなっていると考えている人が増えており、とくに飲食業や製造業では、勤務日数・労働時間・収入が減少していることが分かった。

 家族介護については、主に女性が担っており、就業を中断させ健康を悪化させている可能性があるという。

コロナ禍で働き方とライフスタイルが変化

 東京大学社会科学研究所は、2007年より実施している「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」の最新のデータを用いて、コロナ禍やライフステージでの健康・意識・雇用・介護について分析した。

 分析結果から、コロナ禍やライフステージでの人々の生活や意識の実態および変化が明らかになった。主な結果は次の通り――。

  • コロナ禍で、主観的な健康観について、悪くなっていると考えている人の比率が増えている。
  • 生活満足感がある程度高い水準で一定のまま推移している一方で、日本社会への希望は低水準ながら変動し推移している。
  • 医療従事者や介護・福祉職に従事する人は、勤務日数や労働時間が増加し、それにともない収入も増加しているのに対し、飲食業や製造業では、勤務日数・労働時間・収入が減少している。
  • 家族介護について、主に女性が担っており、就業を中断させ健康を悪化させている可能性がある。

 「急激な少子化・高齢化や経済変動が人々の生活に与える影響について関心が高まるなかで、実証研究にもとづく本研究の知見は、今後の政策議論を深める素材を提供しうるものです。調査のさらなる継続により、さまざまなライフステージでの意識や行動を精確に把握することが可能になると期待されます」と、研究グループでは述べている。

 研究は、東京大学社会科学研究所の石田浩特別教授、石田賢示准教授、大久保将貴特任助教、俣野美咲特任助教らによるもの。

同一の人々に繰り返し尋ね続ける「パネル調査」を実施

 「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」の追跡調査は、全国に居住する20~34歳(若年調査)と、35~40歳(壮年調査)の男女を母集団として、地域・都市規模・性別・年齢により層化し、対象者を抽出した追跡調査。

 研究グループは、2007年1月から4月に第1回目(Wave 1)の調査を郵送配布・訪問回収の方法で行い、「若年調査」は3,367件、「壮年調査」は1,433件を回収した。2011年には「追加サンプル」を補充し、同年齢の24~38歳(若年)712件と39~44歳(壮年)251件を回収した。その後これらの対象者も毎年追跡している。

 今回の研究は、2019年に新たに実施したリフレッシュサンプル調査の対象者に対して、2020年8月末~11月にウェブで行ったもの。

 調査では、コロナ禍での生活や意識について尋ねており、(1)コロナ禍での人々の不安および健康と生活意識の変化、(2)コロナ禍での社会的孤立リスクの格差の蓄積、(3)新型コロナのリスク認知と行動、という3つの視点から分析した。

 2000年代後半から現在までの、個人の行動や意識の変化を検証している研究は少なく、またこの調査は、同一の人々に繰り返し尋ね続ける「パネル調査」という手法を採用しており、変化を適切に捉えられ、信頼性の高い調査結果を提供しているとしている。

コロナ禍が人々の生活に深刻な影響を与えている

(1) コロナ禍で健康状態は「悪くなっている」と考える人が増えている

 調査では、人々の健康状態について、日本で新型コロナの拡大が起きる前の2019年初旬~2020年初旬の変化と、コロナ禍以後の2020年初旬~2021年初旬にかけての変化を比較した。

 メンタルヘルスと健康による活動制限については、悪化した人々の比率が、とりわけコロナ禍以後に上昇したわけではないが、主観的な健康観については、悪くなっていると考えている人の比率が有意に増えていることが分かった。女性と低学歴者で主観的健康が悪化している傾向もみられた。

健康関連項目で「悪くなった比率」の時点間比較
コロナ禍以後は以前に比べ、健康状態は「悪くなっている」と考える人が増えた。
出典:東京大学社会科学研究所、2022年

(2) コロナ禍の生活不安が社会に対する希望を低下させている可能性

 日本社会への希望の変化について、生活満足感と比較しながら2021年までの推移を検討したところ、生活満足感はある程度高い水準で一定のまま推移しているのに対し、日本社会への希望は、低水準ながら時期により変動しつつ推移していることが分かった。

 とくに、2019年~2021年に、他の時期と比べて希望の水準が大きく低下している。解釈には留意が必要であるものの、コロナ禍で長期化する生活不安が、社会に対する希望の低下の背景となっている可能性がある。

 また、個人内で変化する側面に着目して、社会への希望の変化と関連する要因を探ったところ、雇用形態や世帯年収などの経済的側面の変化とは関連がない一方、友人や親との関係に対する満足感やメンタルヘルス、健康状態の変化とは関連があり、これらの質の改善にともない希望の水準も上昇していることが明らかになった。

日本社会への希望と生活満足感の変化
2009年の水準と比較したときの各調査年の差
コロナ禍の2019年~2021年には日本社会への希望が大きく低下した。

日本社会への希望の変化と、友人・親との満足感との関連
友人や親との関係に対する満足感が良いと、日本社会への希望は上昇する。
出典:東京大学社会科学研究所、2022年

(3) コロナ禍が雇用や収入に影響していない人も多いが、影響があった人は収入減少に苦しんでいる

 新型コロナによる、人々の雇用・収入面への影響について分析したところ、雇用や収入に関する影響について、男性では4割、女性では5割が「いずれも当てはまらない」と答えており、コロナ禍以前と変化していない人々は少なくない。

 しかし、影響があった人々のなかでもっとも多かったのは、男女ともに「収入が減った」であり、新型コロナのパンデミックが人々の生活に深刻な影響を与えていることが示唆された。

 また、医療従事者や介護・福祉職に従事する人は、勤務日数や労働時間が増加し、それにともない収入も増加していたのに対し、飲食業や製造業では勤務日数、労働時間、収入が減少しやすい傾向が示された。

 勤務形態の変更や通勤方法の変更は、正規雇用者や事務職で起こりやすく、在宅勤務が認められている割合には、正規雇用者と非正規雇用者の間で20ポイントの差があることも明らかになった。

 正規雇用者と非正規雇用者では、雇用や収入の影響の受け方が大きく異なり、非正規雇用者はさまざまな側面で不利な立場に置かれやすいことが知られているが、コロナ禍でその格差がより顕著にあらわれている可能性が示された。

コロナ禍における雇用・収入に関する影響(男女別)
コロナ禍で影響があったこととして、「収入が減った」「通勤方法」「在宅勤務」「勤務日数」「労働時間」を挙げた人が多かった。
出典:東京大学社会科学研究所、2022年

(4) 女性では家族介護のために就業率が低下 メンタルヘルスも悪化

 誰が家族介護をしているのか、また家族介護は就業や健康にどのような影響を与えるのかについて分析したところ、2021年には、壮年調査世代の女性で16%、壮年調査世代の男性で4.8%、若年調査世代の女性で5.4%、若年調査世代の男性で3.3%が、家族介護をしていることが分かった。

 この家族介護者の割合は、2020年に比べてやや低下しており、コロナ禍で家族介護ができない状況があると考えられる。

 家族介護が就業に与える影響については、女性のみが影響を受けており、具体的には、家族介護をすると就業確率が平均で5%低くなり、労働時間(月)が平均で5時間短くなる。さらに、家族介護は女性でのみメンタルヘルスを悪化させる傾向がみられた。

家族介護が健康やメンタルヘルスに与える影響
女性では家族介護をすると健康(主観的健康とメンタルヘルス)への影響が大きいことが示された。
出典:東京大学社会科学研究所、2022年

東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センター
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