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【新型コロナ】コロナ禍での人々の孤独を調査 若い世代と暮らし向きが悪化した人で孤独感がとくに強い

 新型コロナの感染拡大の影響の長期化が、人々の孤独感にどのような影響を与えているかを調べた調査で、4割近くの人が孤独感を抱えており、比較的若い世代や、新型コロナの感染拡大により暮らし向きが悪化した人で、とくに孤独感が強いことが示された。

 孤独状態にある人は、うつ状態や不安障害を抱える傾向が、孤独でない人に比べて5倍程度に高まることも分かった。「政府の孤独・孤立対策」については、6割程度の人が実施に賛成した。

孤独状態にある人はうつや不安が5倍に上昇

 この「コロナ下での人々の孤独に関する調査」は、NPO法人あなたのいばしょと早稲田大学政治経済学術院の上田路子准教授(同NPO法人理事)が共同で、2022年2月に実施したもの。

 同NPO法人は、自殺防止のための無料・匿名の相談窓口「あなたのいばしょチャット相談(厚生労働省自殺防止対策事業)」を運営している。相談窓口には、1日に約1,000件以上の相談が寄せられ、2021年の相談件数は約20万件に上るという。

 コロナ禍で対人交流を制限され、多くの人々が孤独感を抱えているとみられるが、日本人を対象とした大規模な調査は、主に2020年のものに限られており、新型コロナの感染拡大の長期化が、人々の孤独感にどのような影響を与えているかは明らかになっていない。

 日本在住の約3,000人を対象に行った今回の調査では、4割近くの人が孤独感を抱えており、新型コロナの感染拡大から2年近くが経った時点で、孤独感はほとんど減少してないことが明らかになった。

 また、「若者・中年(20~59歳)の人」、「男性」、「(コロナ前と比較して)暮らし向きが悪くなった人」、「(個人的なことを話せる)友人が1人もいない人」で、とくに孤独感が強い傾向が示された。

 孤独状態にある人は、うつ状態や不安障害を抱える傾向が、孤独でない人に比べて5倍程度に高まることも分かった。「政府の孤独・孤立対策」については、6割程度の人が実施に賛成している。

 「今回の調査は、新型コロナの感染拡大が長期化し、自殺などの問題も深刻化する中で、人々が抱える孤独感を把握することを目的としています」と、研究者は述べている。

 「比較的若い世代に対しても孤独・孤立対策を行うことが大切であること、そして暮らし向きが悪化した人が孤独な状況に陥る経緯を特定し、その知見にもとづいて必要な支援を届けていくことが必要であることが示唆されました」。

 さらに、「孤独・孤立対策の意義について、一定の支持は得られているものの、政府は丁寧な説明を続けていくことが大切であると考えられます」としている。

コロナ禍で孤独感の高い人が増え、その後も減っていない
2020年4月~2022年2月に調査
出典:科学技術振興機構、2022年

3000人超を対象に孤独感について調査

 研究グループは、20歳以上の日本在住の人を対象に、1回目は2022年2月2日~4日に実施し(有効回答者数994人)、2回目は2022年2月15日~17日に実施し(有効回答者数2,017人)、2回の調査を合わせた3,011人を分析対象とした。

 孤独感に苦しむ人たちは、メンタルヘルスの不調をあわせもつことが多く、自殺を考える傾向も高いことが知られている。「孤独感」とは、知り合いの数などで客観的に測ることのできる「社会的孤立」とは異なる、人間関係について当人が感じている主観的な気持ちのこと。そのため、人々が抱える孤独感を把握するには、当人に直接尋ねることが不可欠となる。

 そこで孤独感について、国際的に用いられている尺度である「UCLA孤独感尺度」(3項目版)を用いて測った。うつ状態については「PHQ-8」を、不安状態については「GAD-7」を用いて測定した。

 「UCLA孤独感尺度」は3つの質問で構成され、回答者の対人関係についての主観的な気持ちが分かる。23項目の質問の回答を数値化し、6点以上を「孤独(状態)」と定義した。「PHQ-8」と「GAD-7」では、それぞれ10点以上を「うつ状態」(中程度から重度のうつ状態)、「不安障害」(同上)と定義した。

 さらに、新型コロナの感染拡大以前と現在を比較した「暮らし向き」の変化についても尋ね、調査対象者の置かれている経済的状況によって孤独感やメンタルヘルスの状態がどのように異なるかを分析した。また、現在政府が取り組んでいる「孤独・孤立対策」への賛否についても調査した。

37%が孤独感を抱えている 暮らし向きが悪化した人では半数近くに

 その結果、全体では37.3%の人々が孤独感を抱えていた。2020年4月~2021年2月に実施した調査と比べたところ、新型コロナの感染拡大から2年近くが経った時点でも、孤独感はほとんど減少してないことが明らかになった。

 性別でみると、女性では35.1%が、男性では39.5%が孤独感を抱えていた。さらに、ひとり暮らしの人や配偶者がいない人は、同居者がいる人たちや配偶者をもつ人(事実婚含む)に比べ、孤独感が高い傾向があることが分かった。

 世帯年収が下がるにつれ、孤独感をもつ人の割合は上がる傾向にあり、暮らし向きの変化についても「(コロナ前より)悪化した」と答えた人のうち半数近く(47.8%)が孤独を感じていた。

 個人的なことを話せる友人の数について、「そのような友人がいない(0人)」と答えた人の57.6%が孤独感を抱えており、友人の数が上がるにつれ、孤独感は低くなる傾向がみられた。

 孤独感に複数の要因が相互に影響を与えている可能性があるため、上記の要因をすべて考慮に入れて分析を行なったところ、「若者・中年(20~59歳)」、「男性」、「暮らし向きが悪くなったこと」、「(個人的なことを話せる)友人が1人もいないこと」が、孤独感を高める要因であることが明らかになった。

コロナ禍で孤独感のある人が増加 若年者や中年者で深刻

 うつ状態については、高齢者よりも若年者で該当者が多い傾向があり、中程度から重度のうつ状態と判断された割合は、高齢者では7.5%だったが、20~39歳では28.2%が該当した。不安障害についても同様に、高齢者よりも若年者のほうが強い傾向がみられた。

 孤独感とうつ状態・不安状態の関係については、孤独を感じている人は、感じていない人に比べて、うつ状態を抱える傾向が4.7倍に、不安障害は4.8倍にそれぞれ上昇した。

 さらに、コロナ以前に比べて暮らし向きが悪化した人も、メンタルヘルスの状態が悪い傾向にあることが分かった。政府の孤独・孤立対策については、57.9%が行うことに賛成した。

 「孤独を感じている人の割合は、新型コロナの感染拡大の直後から減っておらず、高いレベルで継続されています。そして、孤独感をすべての年齢層の人が抱えている可能性があります」と、研究者は述べている。

 「若年者や中年の人の方が高齢者よりも、さらに孤独を感じている傾向にあります。うつ状態について、新型コロナの前は若年者と高齢者の間にこれほどの大きな違いがあったとは報告されていません」。

 「比較的若い世代に向けた、孤独・孤立対策を行うことが重要であると考えられます」としている。

孤独・孤立対策について丁寧な説明が必要

 「今後の課題として、暮らし向きが悪化した人が孤独な状況に陥る経緯を特定し、その知見にもとづいて必要な支援を届けていくことが大切であると考えられます」と、研究者は述べている。

 「たとえば、失業などにより社会との接点が少なくなり、そのことが孤独感やメンタルヘルスの状態の悪化につながった可能性が考えられることから、孤独・孤立の実態について引き続き調査を行うことが必要です」としている。

 さらに、政府が行う孤独・孤立対策については、6割程度の人が賛成であったことから、「一定の支持は得られていることが明らかになりました」としている。

 しかし、「わからない」と回答した人も一定数いるので、政府には孤独・孤立対策の意義や内容について丁寧な説明を続けていくことが求められるという。

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国立研究開発法人 科学技術振興機構 (JST)
SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム (社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築)について(社会技術研究開発センター)
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