腰痛改善、主軸は運動療法 ~専門家「自ら体づくりを」~
腰の痛みで安静を強いられたり、医療機関や整体施設などに通ったりした経験はないだろうか。腰痛は慢性的なタイプが多く、対処・治療は運動療法が中心となる。筋力や柔軟性、体幹の強化などに向け、受け身ではなく自ら進んで取り組む姿勢が求められるという。

国民病と言われるほど腰痛に悩む人は多い
◇8割は画像で診断できず
「腰痛は画像で診断できない場合が多く、どこの組織にどのような問題があって痛みが生じているのかを分かっている人は少ない。それにどう対処するかが大きな問題だ」。早稲田大教授で整形外科医の金岡恒治氏は、腰痛診断をめぐる課題についてこう指摘する。同教授がセカンドオピニオンとして意見を求められた中では、筋肉や関節の痛みが原因であるにもかかわらず、脊柱管狭窄(きょうさく)症と診断された人がかなりいた。
腰痛のうち、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、圧迫骨折など何らかの疾患に起因し、画像検査で診断が下せるのは2割ほど。残りの8割程度は画像では分からず、同教授は「見えない腰痛」と呼ぶ。このタイプでは①筋肉の酷使による筋・筋膜性腰痛②前かがみになったときに椎間板が圧迫される椎間板性腰痛③体を反った際に背骨の後ろ側にある椎間関節がぶつかる椎間関節性腰痛④おしりに近い仙骨の付け根のゆがみなどによる仙腸関節性腰痛―の四つが代表的な例として挙げられる。
これらの慢性的腰痛については診察が重要になる。詳細な問診に加え、「腰を後ろ、あるいは斜め後ろにそる、うつぶせで寝てもらい手で押す、あおむけで足を持ち上げてみる、などの動作によって痛みの原因を推定する」(金岡教授)という。
◇姿勢・動きのくせ修正
慢性タイプへの対処・治療法に関しては、指針となる診療ガイドラインでは運動療法の推奨度が最も高い。腰回りを中心とした筋トレ、持久力を向上させる有酸素運動、関節などの柔軟性を保つストレッチといった手法が用いられる。
金岡教授がこの他に重視するのは、体の使い方を正すモーターコントロールエクササイズ(MCE)。体幹の筋肉をうまく使って正しい姿勢の維持やバランスの良い動きを可能にし、腰に過度な負担がかからないようにする。インナーマッスル(体の深層部にある筋肉)のトレーニング、ピラティス、バランス体操、ダンス、ヨガなどが役に立つ。
北海道東川町の住民76人を対象に2023年度に実施した研究調査では、MCEを3カ月継続したところ、ロコモと判定された人の割合が低下したり、精神の健康度が改善したりしたのに加え、腰痛軽減の効果が認められた。参加者からは「全然できなかった動きが、すっと楽にいくようになった」との声が寄せられた。
腰専門のコンディショニングスタジオを運営するコアトリム(東京都渋谷区)の仁科倫抽・代表取締役も「多くの慢性的な痛みは体の使い方のくせや姿勢からくる。裏を返せば自分でコントロールできるということだ」と、体の使い方の重要性を強調。もも裏側や背中のストレッチ、深部腹筋のトレーニング、骨盤の前傾・後傾運動などを通じ、腰への負担軽減に取り組む必要性を説く。

腰痛を軽減する運動の一例(仁科氏の説明資料より)
ただ金岡教授によると、国内では運動療法の指導環境が整っていない。的確に対応できる医療機関が少ないのが課題とされる。
◇再発防止へ身体機能高める
腰がひどく痛むとき、鎮痛剤やサポート器具などを使って症状を和らげることは必要だ。しかし、一時的に改善しても抜本的な対処策にはならず、再発の恐れがつきまとう。金岡教授は「本当に重要なのは身体機能を高めることだ。病院で痛みを取ってもらうだけでは駄目で、痛くならない体づくりに自分で取り組んでほしい」と自助努力を促す。
腰痛を自覚している日本人は非常に多く、国民病とも言われる。腰の痛みのせいで仕事の生産性が低下し、年間でおよそ3兆円もの経済的損失が発生しているとの試算もある。関連医療費を含めれば損失は4兆円近いとも言われる。
もちろん個人の生活・人生にも深刻な影響を及ぼし得る。高齢化の進展に伴って要介護者が増加しているが、腰痛を患う人は要介護リスクが1.5倍との報告もある。「30~40代から腰痛や肩凝りに悩まされているような人たちは60~70代で健康寿命が尽き、残り10~20年は要介護状態になってしまうことが危惧される」と同教授は言う。(平満)
[時事通信社 2026年 9月18日]
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