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【新型コロナ】ワクチン接種の利益とリスクを正しく理解し判断を 感染症学会「有効性は高く、副反応は一過性」

日本感染症学会「COVID-19ワクチンに関する提言(第2版)」
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンは、日本でも医療従事者への接種が開始されており、3月1日時点での総接種回数は3万回を超えている。
 ワクチンの効果は強く期待されており、今後、高齢者や、糖尿病などの基礎疾患をもつ人への接種もはじまる。
 COVID-19の感染拡大防止に、ワクチンの普及が欠かせない。しかし、COVID-19のワクチンも他の薬剤と同様に、「ゼロリスク」ではない。
 そこで日本感染症学会は、「COVID-19ワクチンに関する提言(第2版)」を発表した。
 「国民1人ひとりがその利益とリスクを正しく評価して、接種について判断することが必要です」と呼びかけている。
国民1人ひとりが接種について判断すべき
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が進むなか、欧米では新たに開発されたCOVID-19ワクチンの接種が昨年12月初旬からはじまり、1回以上の接種を受けた人は世界で1億人を超えた。

 日本でもファイザーのCOVID-19ワクチンが2021年2月14日に薬事承認され、2月17日から医療従事者への接種が始まった。4月からは高齢者への接種がはじめられ、その後、高齢者、糖尿病などの基礎疾患のある人の接種もはじめられる見込みだ。また、アストラゼネカのワクチンも2月5日に承認申請が行われている。

 昨年12月に国会で可決された予防接種法の改正により、COVID-19ワクチンの接種について、国が接種を勧奨するとともに、国民には努力義務が課せられることになった。費用の自己負担はなく、健康被害に対する救済も高水準で実施される。

 一方で、これらのワクチンは、欧米では高い有効性が伝えられている一方、従来にない手法を用いて極めて短期間に開発されたこともあり、接種にともなうリスクの可能性も指摘されている。

 そこで日本感染症学会ワクチン委員会では、学会会員および国民に対し、現在海外で接種が開始されているCOVID-19ワクチンの有効性と安全性に関する科学的な情報を提供し、それぞれが接種の必要性を判断する際の参考にしてもらうべく、「COVID-19ワクチンに関する提言(第2版)」を公開した。

 同学会は「ワクチンも他の薬剤と同様にゼロリスクはありえません。病気を予防するという利益と副反応のリスクを比較して、利益がリスクを大きく上回る場合に接種が推奨されます」としたうえで、「国が奨めるから接種するというのではなく、国民1人ひとりがその利益とリスクを正しく評価して、接種するかどうかを自分で判断することが必要です」と提言している。
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COVID-19ワクチンの有効性は高く、副反応は一過性と報告
 日本でもファイザーのCOVID-19ワクチンの医療従事者への接種がすでに始まっている。日本は米ファイザー、米モデルナ、英アストラゼネカとワクチンの供給を受ける契約または基本合意を締結しているが、日本国内でも独自のワクチン開発が進められている。

 現在開発中のCOVID-19ワクチンには、不活化ワクチンまたはウイルスベクターワクチンが多くみられるが、生ワクチンの開発も行われている。これまでの不活化ワクチンに用いられた病原体の成分は、タンパク質や多糖体が主体だったが、COVID-19ワクチンでは、mRNA(メッセンジャーRNA)、DNAなどの核酸が用いられている。核酸ワクチンやウイルスベクターワクチンは迅速に実用化できる利点があり、緊急性が求められるパンデミックワクチンの方法として有用だ。

 現在までの情報では、mRNAを用いたCOVID-19ワクチンの有効性は高く、副反応も一過性のものに限られ、アナフィラキシー以外には重篤な健康被害はみられていない。

 米国の調査では、100万接種あたりのアナフィラキシーの頻度は、ファイザーとモデルナの両ワクチン合わせて100万接種あたり4.5件とされており、頻度はごくまれだ。

 日本で承認されたCOVID-19ワクチンについて、日本感染症学会は次の通り述べている。

 長期的な有効性や安全性の点でまだ不明な点はあるものの、日本で承認されたCOVID-19ワクチンを接種することが望まれます。なお、(発症予防効果は約95%と報告されているものの)ワクチン接種を受けることで安全が保証されるわけではありません。接種しても一部の人はCOVID-19を発症します。また、発症しなくても感染し無症状病原体保有者として人に広げる可能性もあります。またワクチンの効果がどのくらい続くかも不明です。COVID-19の蔓延状況が改善するまでは、マスク、手洗いなどの基本的な感染対策は維持しなければなりません。
(中略)
 ワクチンの副反応とは、ワクチン自体によって誘導された健康上不利益なことまたはそれが疑われるものですが、副反応がまったくないワクチンはありません。接種部位には腫脹や痛みなど何らかの局所反応が必ずみられますし、一定の頻度で発熱や倦怠感などの全身症状も一過性にみられます。ごくまれに、接種直後のアナフィラキシーショックなどの重篤な健康被害も発生します。
気になる有害事象(副作用)の可能性は
 ファイザーのmRNAワクチンは、1回目の接種後、通常は3週間の間隔で2回目の接種を受ける必要がある。 同学会は、臨床試験での1回目および2回目の接種後の有害事象の頻度を表にまとめている。

 ファイザーのワクチンは、局所反応として日常生活に支障が出る中等度以上の疼痛が報告されており、アストラゼネカのウイルスベクターワクチンでも若年者層(18~55歳)で疼痛の頻度が高かった。

 ファイザーのワクチンでは、活動に支障が出る中等度以上の疼痛が、1回目接種後の約30%、2回目接種後の約15%に、日常生活を妨げる重度の疼痛が、1回目で0.7%、2回目で0.9%報告されている。

 全身症状についてもmRNAワクチンでは高頻度にみられたが、対照群においても倦怠感、頭痛、寒気、嘔気・嘔吐、筋肉痛がある程度みられたことに注意が必要だという。

 同学会は「なお、この接種後の疼痛は接種数時間後から翌日にかけてみられるもので、1~2日間ほどで軽快します。注射の際の痛みは軽微と思われます」としている。

 「海外で高齢者や基礎疾患のある方にも接種が進んでいるなか、現在のところ死亡につながるなどの重篤な有害事象は問題になっておらず、COVID-19に罹患して重症化するリスクに比べるとワクチンの副反応のリスクは小さいと考えます」。

ファイザーのCOVID-19ワクチン「コミナティ筋注」
国内第1/2相試験の1回目接種後の有害事象

国内第1/2相試験の2回目接種後の有害事象

出典:日本感染症学会、2021年
糖尿病などの基礎疾患のある人の接種は優先される
 国は、承認されたCOVID-19ワクチンについて、重症化リスクの大きさと医療提供体制の確保などをふまえ、(1)医療従事者などへの接種、(2)65歳以上の高齢者、(3)高齢者以外で基礎疾患を有する人、および高齢者施設など(障害者施設等を含む)の従事者の順番で接種を進める予定にしている。

 インスリンや飲み薬で治療中の糖尿病または他の病気を併発している糖尿病の人のワクチン接種も優先されることが決まっている。

COVID-19ワクチンの優先接種の対象となる基礎疾患を有する人の範囲
1. 以下の病気や状態の人で、通院/入院している人
  (1) 慢性の呼吸器の病気
  (2) 慢性の心臓病(高血圧を含む)
  (3) 慢性の腎臓病
  (4) 慢性の肝臓病(肝硬変など)
  (5) インスリンや飲み薬で治療中の糖尿病または他の病気を併発している糖尿病
  (6) 血液の病気(ただし、鉄欠乏性貧血を除く)
  (7) 免疫の機能が低下する病気(治療中の悪性腫瘍を含む)
  (8) ステロイドなど、免疫の機能を低下させる治療を受けている
  (9) 免疫の異常に伴う神経疾患や神経筋疾患
  (10) 神経疾患や神経筋疾患が原因で身体の機能が衰えた状態(呼吸障害など)
  (11) 染色体異常
  (12) 重症心身障害(重度の肢体不自由と重度の知的障害が重複した状態)
  (13) 睡眠時無呼吸症候群

2. 基準(BMI 30以上)を満たす肥満の人

出典:日本感染症学会、2021年

 高齢者や基礎疾患のある人の接種は、市町村からの文書(接種クーポン券)などによる通知が計画されており、それにことづいて医療機関や市町村設置会場で接種が行われる。

 市町村設置会場での集団接種では、実施体制の整備が進められており、アナフィラキシーが起きた場合の緊急対応ができる薬剤の準備や医療体制の整備も行われる。

 同学会は、「薬剤やワクチンによる重度のアレルギー既往のある人は30分間、それ以外の人でも少なくとも15間の待機が必要です。また、血管迷走神経反射による失神は、筋肉内注射では起こりやすいため、接種後の健康観察ができる体制や発生した時に臥床するベッドやソファの準備など、事前の準備が求められます」と指摘している。

医療の最前線で治療にあたる医療従事者が
新型コロナのワクチン接種を受けている様子

米ヴァンダービルト医療センター
ワクチン接種後の症状などを追跡して調査
 これまでの海外のCOVID-19ワクチン臨床試験での被接種者数は、数千人から数万人台だったが、日本では160人と対象者数が限られる。そのため、数万人に1人というごくまれな健康被害については見逃されている可能性がある。

 新しく導入されるワクチンは、数百万人規模に接種された後に新たな副反応が判明することも考えられることから、数年にわたる長期的な有害事象の観察が重要だ。

 接種を受けた人が発症した場合に、症状がより重くなるワクチン関連疾患増悪(VAED)や、ワクチンによってできた抗体によって感染が増強する抗体依存性増強(ADE)などにも、継続的で注意深い観察が必要だとしている。

 国は、1~2万人の先行接種者を含め、のべ約300万人を対象に、ワクチン接種後の症状などを調査する計画をたてている。ワクチンの安全性を継続して確認し、提供された安全性に関する最新の情報は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のサイトで公開されている。

海外で開発された新型コロナウイルスのワクチン

ファイザー、ビオンテック
mRNAワクチン
2020年7月から米などで第3相試験を実施。12月から英米などで接種開始。
日本でも2021年2月に承認。

アストラゼネカ、オックスフォード大学
ウイルスベクターワクチン
2020年5月から英で第2/3相試験を実施。8月から米で第3相試験を実施。2021年1月から英で接種開始。
日本でも2021年2月に承認申請。

モデルナ
mRNAワクチン
2020年7月から米で第3相試験を実施。12月から米で接種開始。
日本でも臨床試験を開始。

ジョンソン&ジョンソン(ヤンセン)
ウイルスベクターワクチン
2020年9月から米などで第3相試験を実施。11月から英などで第3相試験を実施。
日本でも治験を2020年9月から実施中。

サノフィ
組換えタンパクワクチン、mRNAワクチン
組換えタンパクワクチンは、2020年9月から米で第1/2相試験を実施。mRNAワクチンは、2021年第1四半期に第1/2相試験開始を目指す。

ノババックス
組換えタンパクワクチン
2020年9月から英で第3相試験を実施。
日本でも第1/2相試験を2021年3月から実施中。

日本で開発されている新型コロナウイルスのワクチン

塩野義製薬、国立感染症研究所、UMNファーマ
組換えタンパクワクチン
2020年12月から第1/2相試験を実施。

第一三共、東京大学医科学研究所
mRNAワクチン
最短で2021年3月から臨床試験を開始。

アンジェス、大阪大学、タカラバイオ
DNAワクチン
第1/2相試験を開始、第2/3相試験を開始、大規模第3相試験を2021年内に開始。

KMバイオロジクス、東京大学医科学研究所、国立感染症研究所、医薬基盤研究所
不活化ワクチン
最短で2021年3月から臨床試験を開始。

IDファーマ、国立感染症研究所
ウイルスベクターワクチン
最短で2021年3月から臨床試験を開始。
出典:開発状況について(厚生労働省)

日本感染症学会

新型コロナワクチンについて(首相官邸)

新型コロナウイルス感染症について(厚生労働省)

PMDAにおける新型コロナウイルス感染症対策に係る活動について(医薬品医療機器総合機構(PMDA))
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