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余命を縮める最大の原因は喫煙と糖尿病 健康的な食事と運動などの生活スタイルは人を幸せにする

 30歳の男性の平均余命が短くなる最大の原因は、喫煙と糖尿病であることが、4万人弱を調査した大規模調査で明らかになった。
 過度なストレスも、余命を縮める原因になる。ストレスをコントロールすることも必要だという。
 「食事や運動など健康的な生活スタイルを選択することで、余命を大幅に延ばせます」と、研究者はアドバイスしている。
 食事が健康的であったり、運動をしている人は、幸福感が高いという調査結果も発表された。
 とくにウォーキングなどの運動は、メンタルヘルスを改善するために効果的だとしている。
余命を縮める最大の原因は喫煙と糖尿病
 寿命を縮めているのは、不健康や食事や運動不足といったよく知られているリスク要因だけではない。過剰なストレスなどの、生活の質(QOL)に関わる要因の影響も大きい。

 平均余命とは「ある年齢の人が、あと何年生きることができるのか」をあらわす期待値。健康的な生活を続けていれば、平均余命は延ばすことができる。

 フィンランド国立保健福祉研究所の研究によると、30歳の男性の平均余命が短くなる最大の原因は、喫煙と2型糖尿病だ。喫煙は6.6年、糖尿病は6.5年、それぞれ平均余命を縮めている。さらに、過度なストレスにさらされ対策をしないでいると、平均余命は2.8年短くなるという。

 調査は、フィンランド国民FINRISKコホート調査の1987~2007年のデータを解析したもの。3万8,549人の25~74歳の男女のアンケート調査と健康診査のデータを解析し、対象者の死亡などの健康リスクを2014年末まで追跡して調査した。
健康的な生活スタイルによって余命は大幅に延ばせる
 研究では、30歳の男性の平均余命は、運動不足によっても2.4年短くなることも示された。一方、野菜や果物や積極的に食べると、平均余命を延ばせるという。平均余命は、野菜を食べることで0.9年、果物を食べることで1.4年、それぞれ延伸される。

 ここまでは男性に限った話だが、喫煙・糖尿病・過度のストレスは女性にとっても大敵だ。30歳の女性の場合、平均余命は喫煙により5.5年、糖尿病により5.3年、過度のストレスにより2.3年それぞれ短くなった。

 ストレスといっても、それが中庸で適度なものであれば、逆に生活や人生に刺激や活力をもたらすことになり、平均余命を延長できると考えられている。調査では、ストレスは多過ぎであったり、少な過ぎだと、平均余命が短縮する傾向がみられた。

 「肥満や2型糖尿病などの生活習慣病について男女を比較すると、発症の年齢はそれぞれ異なっても、どちらの性にとっても年齢を重ねると、平均余命を縮める危険因子となりうることが示されました。ただし、一般的に女性は男性に比べ、より健康的な生活スタイルをもっている傾向がみられます」と、ヘルシンキ大学中央病院長のセッポ コスキネン教授は言う。

 「喫煙、不健康な食事、運動不足、大量のアルコール摂取などを改善し、糖尿病にも対策し、健康的な生活スタイルを選択することで、余命を大幅に改善できると考えられます」としている。
健康的な生活スタイルにより幸福感を引き上げられる
 健康的な食事や運動を習慣として実践している人は、幸福感が高いという調査結果も報告された。健康的な生活スタイルは、幸福感を引き上げるのにも役立つ可能性がある。

 心理的幸福は、生活全体の幸福感の重要な部分を占める。これまでの研究で、持病のあり・なしに関わらず、心理的幸福は死亡率の低下と関連していることが示されている。

 研究は、川崎医科大学健康管理学教室の高尾俊弘教授らによるもので、研究成果は科学誌「Bio Psycho Social Medicine」に掲載された。

 研究は、2017年に同大学附属病院で特定健診を受診した2,295人(平均年齢49.3歳、女性が54.3%)を対象としたもの。

 研究グループは、対象者のメンタルの健康について世界保健機関(WHO)による指標「WHO-5」で評価し、食事・運動習慣については特定健診の問診データを用いて解析した。
食事が健康的であったり、運動をしている人は、幸福感が高い
 その結果、食事が健康的な人は、「幸福感が高い」と判定された割合が高かった。昼食の時間が20分超の人は、10分未満の人に比べ、幸福感が高い傾向がみられた(オッズ比 1.47)。

 同様に、夕食を就寝2時間前以前に食べる人は、それ以降に食べる人に比べ、幸福感が高かった(オッズ比 1.32)。夕食後の間食が週3回未満の人でも、週3回以上の人に比べ、幸福感が高かった(オッズ比 1.27)。

 運動習慣についても、30分以上の活発な運動を週に2回以上している人は、運動しない人に比べ、幸福感が高かった(オッズ比 1.58)。1日の歩行時間が1時間以上の人でも、1時間未満の人に比べ、幸福感が高かった(オッズ比 1.29)。
ウォーキングなどの運動でメンタルヘルスを改善できる
 これまでの研究でも、野菜や果物の摂取量が少なく、フライドポテト、ファストフード、高カロリーの清涼飲料などのジャンクフードをよく食べ、糖質の摂取量が多い人では、心理的なストレスが多い傾向があることが報告されている。

 座りがちな時間が長く、テレビの視聴に長時間を費やしている年配の女性では、抑うつ症状が多いという研究も報告されている。ウォーキングなどの運動や身体活動を増やすことで、とくに高齢者のメンタルヘルスを改善できる可能性がある。

 「現在、健康的な食事と運動の習慣を実践しており、そうした行動を長期にわたり維持している人では、幸福感も引き上げやすいことが示されました。とくに運動や身体活動については、良好な生活スタイル行動を維持することで、幸福感を改善できる可能性があります」と、研究者は述べている。

Heavy stress and lifestyle can predict how long we live(フィンランド国立保健福祉研究所 2020年3月11日)
Estimating expected life-years and risk factor associations with mortality in Finland: cohort study(BMJ Open 2020年3月11日)
Associations between lifestyle behaviour changes and the optimal well-being of middle-aged Japanese individuals(BioPsychoSocial Medicine 2021年4月1日)
[Terahata]
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