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日本人高齢者の認知機能は向上している 認知機能障害が減少 国立長寿医療研究センター

 国立長寿医療研究センターは、地域在住高齢者を対象に老化・老年病を研究しているコホート研究のデータを統合し、近年の日本人高齢者の認知機能が向上している可能性を示した。

認知機能障害の高齢者の割合は男女ともに減少

 研究は、国立長寿医療研究センターの鈴木隆雄理事長特任補佐をはじめとする「長寿コホートの総合的研究(ILSA-J)」グループによるもの。

 ILSA-Jは、地域在住高齢者を対象に老化・老年病を研究しているコホート研究のデータを統合し、日本人高齢者の健康水準とその推移を明らかにすることを目的とした多施設共同研究。2022年5月現在、全国の16のコホート研究が参加している。

 研究グループは、各コホートが2010年と2017年に調査した認知機能検査(Mini-Mental State Examination 2)の代表値(30点満点中、認知機能障害が疑われる23点以下および、認知機能が良好な28点以上の性・年代別の割合)を収集し、統合解析を行った。2010年には8,575人、2017年には6,089人の高齢者のデータが含まれている。

 その結果、2010年から2017年にかけて、認知機能障害が疑われる高齢者(MMSE得点23点以下)の割合は、男女ともに減少した(75~79歳の女性を除く)。一方、認知機能が良好な高齢者(MMSE得点28点以上)の割合は、男女ともにどの年代でも増加した。

認知機能障害が疑われる高齢者の割合は男女ともに減少している

2010年、2017年の認知機能障害が疑われる者(MMSE23点以下)の割合の推定値

2010年、2017年の認知機能が良好な者(MMSE28点以上)の割合の推定値

出典:国立長寿医療研究センター、2022年

 急速な高齢化にともない、世界的に認知症の患者数が増大すると推計されている。一方、欧米を中心に、最近20年ほどの間に認知症発症率が減少しているという報告もあり、日本でも認知症や高齢期の認知機能の時代的推移に関する研究が求められている。

 ILSA-Jではこれまでに、日本人高齢者の歩行速度や握力などの健康指標の向上、身体的フレイルの頻度の減少を報告してきたが、今回の多施設共同研究では、日本人高齢者で、寿命の延伸にともない、身体機能だけでなく、認知機能も向上している可能性が示唆された。

 ILSA-J参加コホートは、2022年5月現在で、以下の通り――。
NCGG-SGS(国立長寿医療研究センター)、NILS-LSA(国立長寿医療研究センター)、JAGES(国立長寿医療研究センター)、草津町縦断研究(東京都健康長寿医療センター)、鳩山コホート研究(東京都健康長寿医療センター)、板橋お達者健診(東京都健康長寿医療センター)、東京MoCA-J(東京都健康長寿医療センター)、お達者健診(東京都健康長寿医療センター)、高島平スタディ(東京都健康長寿医療センター)、ROADスタディ(東京大学)、柏スタディ(東京大学)、嬬恋村スタディ(桜美林大学)、米原コホート研究(筑波大学)、垂水研究(鹿児島大学)、CIRCS(大阪大学)、FESTA Study(兵庫医科大学)。

国立長寿医療研究センター 研究所 老年学・社会科学研究センター 老化疫学研究部
Temporal trends in cognitive function among community-dwelling older adults in Japan: Findings from the ILSA-J integrated cohort study (Archives of Gerontology and Geriatrics 2022年5月)
[Terahata]
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