Vol.2 本人が飲酒を否定したら?
「減酒外来」へのスムーズな誘導と情報共有のリアルPR
提供 大塚製薬株式会社
アルコール専門医療機関での対応は
倉持アルコール使用障害*に対する治療は、当院の場合、大きく5つの段階に分けて考えています。最初は勤務を続けながら「減酒外来」に通い、アプリを利用して「減酒日記」をつけてもらったり[1]、薬剤を服用したりしながらアルコール量を減らしていきます。減酒外来でうまくいかない場合は、「断酒」に切り替えます。ただし全員が「断酒治療=休職」というわけではなく、断酒しながら勤務を継続できる人もいます。
断酒の場合は、ミーティング(自助グループ等)が有効ですので、断酒外来に加えて土曜日のデイケアを組み合わせるケースもあります。一方、勤務の継続が難しい場合は「断酒+要休業」とし、さらに重いケースだと、精神科専門病院での依存症教育入院となります。入院までは至らない人でも、平日5日通うデイケア(通院での教育プログラム)で支えることもあります。
伊東アルコール使用障害の方は、休職中に在宅時間が増えると朝から飲んでしまうことがあるので、入院しないのであれば、デイケアのような通所の場が必要ということを産業医も理解していないといけません。普段からいざという時にお願いできるデイケアを探しておくことが重要です。
産業保健職と専門医療機関の医療連携モデル(提供:倉持 穣先生)[2]
* アルコール使用障害:米国精神医学会の診断基準「DSM-5-TR」に基づき、従来の「アルコール依存症」と「アルコール乱用(有害な使用)」を包含する概念。診断基準11項目のうち2項目以上に該当すればこの疾患と診断され、該当する項目数によって軽度、中等度、重度の3つに分類される。
「減酒外来」通院で治療が成功した事例
倉持産業保健職と専門医の連携が成功した事例を紹介しましょう。
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ある50代の男性会社員のケースです。オンライン会議で呂律が回らない、多弁、必要以上に陽気、同じことを繰り返す――といった様子から上司や同僚が異変を感じ、産業医との面談になりました。ところが本人は「仕事中の飲酒はない」と否定。しかしその後も同じような異変が見受けられたため、2回目の産業医面談を行ったところ、飲酒頻度は「2日に1回」、量にして純アルコール約44g(日本酒2合相当)ということがわかりました。
申告された飲酒量だけを見ると「明らかに大きな問題」と断定しにくい面もあったため、認知症など脳の異変も疑ってMRI検査を勧めたところ、軽度の脳萎縮が見つかりました。
その後、無断欠勤が出たり、泥酔しているように見える場面があったりしたものの、本人はやはり飲酒を否定し続けました。最終的に、産業医からの紹介で私のクリニックを受診しました。
(提供:倉持 穣先生)
減酒外来の当院でも、最初に飲酒量を聞くと「40〜80g」と言われましたが、γ-GTPが373だったので、実際は1日100g以上飲んでいるだろうと感じました。しかし、ここで「決めつける」と反発を招きやすく、産業医面談でも多量飲酒を否定していた経緯があったため、まずは「本当のことを言っても大丈夫」と安心してもらうことを優先しました。それであえてAUDITも行わず、「また来てくださいね」とだけ伝えたんです。職場の産業医とは連携しますが、いわゆる告げ口のようなことはしない、と明確にしました。
γ-GTPが300を超えているので本来は断酒が望ましいと説明しましたが、本人は減酒を希望したため、まずは減酒外来での治療を進めました。減酒アプリで記録をつけてもらい[2]、月1回の受診で振り返る。γ-GTPが高いので血液検査も毎回行いました。アプリへの「正直な記録」をお願いして、結果的に本人が飲酒量客観視できたのが大きかったですね。私生活の悩みも含めて外来で丁寧に話を聞き、本人の同意を得たうえで、産業医に今後の方針を詳しく報告しました。
報告では、これまでの経過からコントロール障害が疑われる点に加え、MRIで軽度の脳萎縮は認めるものの、認知症というよりは『時々の多量飲酒による酩酊の影響』と捉えるのが自然である、という見解を共有しました。方針としては、断酒が望ましいものの当面は減酒継続を目標に、1回あたりの上限を決めて記録を続けること、定期受診と血液検査、必要に応じてアルコール依存症治療薬の処方、といった方針を伝え、産業医側でも断酒への動機づけを適宜お願いしました。ほかにも次回の予約日、また企業の産業保健職にも知ってほしいので、純アルコール量の換算式も併記するようにしています。
(提供:倉持 穣先生)
伊東診療情報提供書で「同様の失敗が繰り返される場合には断酒の開始を検討する」と明記された点が、非常に有益であったと思います。これにより、職場で異変を察知した際、速やかに専門医へ報告すべきであるという意識が醸成されるためです。適時適切な情報共有が円滑な治療へと結びついた好事例と考えます。
倉持結果としてこの方は、月1回の減酒外来とアルコール依存症治療薬の服用、減酒日記を継続する中で、自分の飲酒を客観視できるようになっていきました。γ-GTPも徐々に改善し、減酒ができた達成感も得られたようです。飲まない日のほうが「頭がすっきりして体調が良い」と本人が実感し、ジム通いも始めました。私生活の悩みにも、以前より冷静に対応できるようになっています。
(提供:倉持 穣先生)
初診から3年たった現在も月1回の通院を続けていて、月の半分は休肝日をつくり、平均飲酒量は1日15gまで減りました。直近のγ-GTPは25です。職場での飲酒に伴う問題行動はなくなりました。
また減酒外来の翌週に産業医面談があり、その際は本人が血液検査の結果を産業医に見せています。頑張った成果を可視化して共有する形で、本人を介した“間接的な医療連携”ができた事例です。
参考文献
[1]大塚製薬:減酒にっきアプリの初期設定や操作について. 減酒.jp. https://gen-shu.jp/app/(2026年4月現在)
[2]木村充ほか:令和6年度 依存症に関する調査研究事業「飲酒と生活習慣に関する調査」報告書. 久里浜医療センター, 2026. https://www.ncasa-japan.jp/docs/research-report(2026年4月現在)
企画・制作:保健指導リソースガイド
提供:大塚製薬株式会社
SL2604007(2026年4月改訂)
アルコール対策サポートツール
減酒.jp [運営:大塚製薬株式会社]
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減酒にっき [提供:大塚製薬株式会社]
「減酒にっき」は、飲酒量を減らしたいと望む患者さんが治療のための目標、服薬状況、受診の予定を登録することで飲酒量低減の目標達成や受診継続をサポートするアプリです。
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