オピニオン

Vol.4 「自信がない」を「やりがい」に変える 
専門職に求められる伴走のスキル
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特別対談
倉持 穣、伊東明雅

 提供  大塚製薬株式会社

どのように企業内で啓発を進めていくか

伊東お酒の知識は「知っているつもり」でも誤解が多く、たとえば「健康リスクは一杯からある」といった最新の知見は、まだ十分に浸透していません。2024年に公表された「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では性別・体質・年齢で影響に差があることが示されていますが、このようなことについてもまだ十分に啓発できていないと感じています。

倉持新入社員にアルコールの遺伝子検査を実施する会社もあります。入社して間もない段階で、早めに「自分は依存症のリスクが高いかもしれない」と自覚できるのは画期的ですね。飲み方を考えるきっかけになりますし、依存症予防にもつながります。

伊東「鉄は熱いうちに打て」の言葉通り、早い段階での教育が大事です。健康管理の一環として、新入社員研修にお酒についての学びも組み込んでいけるといいでしょう。同様に、メンタルヘルス研修や管理職研修にアルコール問題を組み込むのも有効です。

一方、「専門医をどう探すか」は産業保健職にとって大きな課題です。倉持先生のクリニックのように治療の選択肢が豊富で、一人ひとりに合わせた対応ができる受け皿があるといいのですが、地域差が大きく、日本のどこにでも適切な紹介先があるわけではありません。

もちろん精神科の専門病院ならしっかり治療できますが、働いている人からはもう少し「ライトに受診できる場」が求められています。何より本人が自分で決めるプロセスが治療においては大切ですから、産業医や産業保健師が複数の選択肢を示せるのが理想です。そのためにも、地域の医療機関とはお互いの顔が見える関係をつくれるよう、施設見学や訪問をおすすめしたいです。

産業保健師に期待すること

倉持産業保健師のもとにはいろいろな情報が集まりますから、早期発見という意味では誰よりも介入しやすい立場にいます。健康相談に乗る形で、たとえば純アルコール量の換算の仕方を伝えることも十分に意味があります。またSNAPPY*1やAUDIT*2のようなセルフチェックのツールを紹介し、客観的に自分の状況を把握できるようになれば、それだけでも行動が変わるきっかけになります。

伊東保健師は産業医よりも、従業員にとって身近な存在で、職場との接点も多いと思います。健康相談や保健指導の場では、一緒に純アルコール量や分解時間を確認し、翌日の運転や業務への支障度を示すことができるツール(アルコールウォッチ*3やSNAPPY-PANDA)が役立ちます。

倉持アルコールの問題を抱える人は、「人に頼れない」ケースが少なくありません。弱音を吐けず、助けを求められないまま、お酒に依存するようになっているのです。「困っている」と周囲に言えず、嘘を重ねてしまうこともありますが、その背景には孤独や不安、恐れがあると感じます。

だからこそ、当事者の表面的な嘘や言動だけで判断するのではなく、アルコールの問題の「背景」にまで目を向けられると関わり方もより丁寧になります。その意味でも、産業保健師は関係者の中でも比較的ニュートラルな立場で関われるため、本人が「この人になら悩みを言えた」と感じられる場をつくりやすいはずです。信頼できる相手に話せるようになることが、回復の第一歩になっていきます。

*1 SNAPPY(スナッピー):アルコール依存症のチェックツールおよび飲酒量計算ツール(SNAPPY-CAT、SNAPPY-PANDA)です。ウェブ上で無料で利用できるチェックツールも提供されています。SNAPPY飲酒チェックツール

*2 AUDIT:WHOが作成した、アルコール依存症や危険な飲酒習慣を早期発見するための10項の質問からなるスクリーニングテストです。無料でテストを実施できるウェブサイトなどがあります。減酒.jp「お酒の依存度チェック」

*3 アルコールウォッチ:厚生労働省が、依存症の理解を深めるための普及啓発事業にてリリースした、純アルコール量とアルコール分解時間を把握するためのWebツールです。飲んだお酒の種類と量を選択することで純アルコール量と分解時間を簡単に把握できます。アルコールウォッチ

アルコール問題に取り組むやりがいとは

伊東アルコール関連の問題に関わることは、医学的にとても奥深い領域です。精神医学のみならず、消化器内科学や薬理学、心理学そして法医学といった広範な知見が交差しており、飲酒の影響が及ぶ多面性には改めて驚かされます。

一方、当事者との信頼関係構築は容易ではありません。適切な距離感の維持が難しいからこそ、次の一手を戦略的に検討する必要があり、必然的に多職種チームでの対応が不可欠となります。保健師や人事担当者と連携し、組織を挙げた総力戦で課題解決に当たるプロセスには、産業保健活動としての大きな醍醐味や意義があると感じています。さらに、個別の事例が起点となり、組織全体の施策を再構築する契機となる点も、この領域の重要性を示しています。

倉持アルコールの問題は、放っておくとどんどん進行します。仕事を失い、家族関係が崩れ、健康状態も悪化していく。そこに産業保健師がうまく関わって減酒や断酒につながると、状態が持ち直すこともあります。結果として「立て直せてよかった」「定年まで仕事を全うできた」というケースも出てくるのです。

当事者とその家族の人生に深く関わり、希望を見出していくことに、何よりのやりがいを感じる仕事です。

伊東産業保健師の中には、アルコール問題を取り扱うことに「自信がない」という声も少なくありません。過去に対応に苦慮して行き詰まった経験があったり、回復していくプロセス(回復モデル)を実感する機会がなかったりするのだと思います。

そのため、典型的な事例を共有する機会があるといいと思っています。例えば「うまくいった事例」と「うまくいかなかった事例」を持ち寄り、それぞれどこが分岐点だったのか、職場側はいつ何をすべきだったのかを具体的に検討する勉強会が役立つでしょう。医療職だけでなく、人事担当者なども参加して一緒に学べる形にすると、より実務に生きると思います。アルコール関連の学会*4に参加することは、ネットワーク拡大に有効です。ぜひ知見を深め、その意義を感じながらアルコール対策に取り組んでいただきたいです。

企画・制作:保健指導リソースガイド 
提供:大塚製薬株式会社 
SL2604007(2026年4月改訂)


アルコール対策サポートツール

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