中年期の安定就労が後年の認知機能と関連
安定した就労状況にない場合、加齢に伴う認知機能の低下が大きい可能性を示唆する研究結果が報告された。職歴が不安定な男性は実年齢よりも約7年高齢の人に相当する認知機能を示し、早期退職した女性では、記憶力が実年齢より約6年高齢の人に相当したという。米コロンビア大学のErika Beidelman氏らの研究によるもので、詳細は「Alzheimer's & Dementia」に9月23日付で掲載された。
この研究では、米国で行われている「健康と退職に関する研究(HRS)」のデータが解析に用いられた。HRSは1992年に開始された、51歳以上の成人とその配偶者を対象とする、健康と加齢に関する縦断的コホート研究で、2年ごとのインタビューなどにより参加者の情報が収集されている。Beidelman氏らは、1998~2014年に実施されたインタビューに基づく就労状況と、2016年に行われた認知機能や障害の状態に関する調査結果との関連を検討した。
対象者2,418人(女性1,470人〔ベースライン年齢56.7±4.3歳〕、男性948人〔同57.2±3.8歳〕)について、就労状況を16年間追跡し、2016年の認知機能評価との関連を検討した結果、女性の約30%、男性の約31%が軽度認知障害または認知症の基準を満たしていた。就労状況と認知機能の関連の解析に際しては、結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、人種/民族、主観的健康観、抑うつレベル、日常生活動作〔ADL〕、婚姻状況、教育歴、世帯資産、同居家族など)を統計学的に調整した。
解析の結果、職歴が不安定な男性では、追跡終了時点の認知機能のスコアが低い傾向が示された。例えば、全般的認知機能のZスコアは、職歴が安定している男性に比べて、職歴が不安定な男性(-0.29〔95%信頼区間-0.49~-0.09〕)や、早期退職した男性(-0.25〔同-0.44~-0.06〕)は有意に低かった。職歴が不安定な男性の認知機能は、実年齢よりも約7年高齢の人に相当するという。
同様に女性では、職歴が安定している女性に比べ、自営業、早期退職、長期間労働市場から離れていた女性、定年退職まで安定的な雇用状況にあった女性で、記憶力や実行機能のスコアが低い傾向が認められた。これらの就労パターンに該当する女性では、記憶力が実年齢よりも約6年高齢の人に相当した。全般的認知機能のZスコアは、職歴が安定している女性に比べて、早期退職した女性(-0.18〔-0.32~-0.03〕)や、長期間無職だった女性(-0.23〔-0.39~-0.07〕)、自営業の女性(-0.19〔-0.36~-0.02〕)で有意に低かった。
研究者らは、「全体として、安定した就労を維持することが、認知機能の健康を守る上で重要であって、言い換えれば、たとえ『いつ仕事を失うかもしれない』という不安を抱えていたとしても、仕事を続けることは脳の健康に役立つということだ」と述べている。また、論文の筆頭著者であるBeidelman氏は、「今回の研究結果は、認知症の予防と公衆衛生政策にとって重要な意味を持つ。中年期における就労状況の安定性は、数十年後の認知機能低下に対する改善可能な因子となる可能性がある」としている。
[HealthDay News 2026年9月25日]
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