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【新型コロナ】コロナ禍で⾼齢者の身体能⼒が3倍以上も低下 ⾼齢者の体⼒向上が必要
2022年12月19日
新型コロナの流⾏により、⾼齢者の身体能⼒が低下しており、通常の1年間の加齢にともなう変化に比べ、とくに移動動作能⼒が3倍以上低下していることが、筑波⼤学の調査で明らかになった。
男⼥ともに、移動動作能⼒や柔軟性が低下していることに加えて、⼥性では、握⼒(上肢筋⼒)や、48本ペグ移動(⼿指巧緻性)も低下していることが分かった。
「コロナ禍で、高齢者の体⼒の維持・向上を意図した介護予防プログラムを優先的に⾏うことの必要性が⽰唆されました」と、研究グループでは述べている。
高齢者の体⼒の維持・向上を意図した介護予防プログラムが必要
新型コロナの流⾏により、とくに⾼齢者は、外出⾃粛による⾝体活動量の減少、下肢機能の低下、フレイル(虚弱)の進⾏など、健康に⼤きな影響を受けている。しかし、高齢者の具体的な機能低下の実態は、⼗分に分かっていない。 そこで筑波⼤学は、新型コロナ流⾏前から毎年実施している体⼒測定のデータを⽤いて、2016年から新型コロナ流⾏下の2020年にかけて、⾼齢者240人の各種体⼒の推移を調べた。 その結果、複合的な移動動作能⼒を評価する「Timed Up & Go」という体⼒テストの成績が、通常は1年間に平均して男性で0.05%、⼥性で0.12%遅くなる(つまり身体機能が低下する)のに対して、新型コロナ流⾏下の2019年~2020年の1年間では、男性で0.7%(+0.42秒)、⼥性で0.36%(+0.22秒)遅くなったことが分かった。 つまり、新型コロナの流⾏下では、通常の1年間の加齢変化よりも、移動動作能⼒が3倍以上低下したこととなる。他にも同様の顕著な体⼒低下は、男⼥ともに5m通常歩⾏時間(歩⾏能⼒)や、⻑座体前屈(柔軟性)でもみられ、さらに、⼥性では、握⼒(上肢筋⼒)や、48本ペグ移動(⼿指巧緻性)でも確認された。 研究は、筑波⼤学体育系の⼤藏倫博教授らによるもの。研究成果は、「⽇本⽼年医学会雑誌」に掲載された。 新型コロナのパンデミックがはじまってから2年以上が経過し、これからのウィズコロナ時代での⽇常⽣活の在り⽅について、さまざまな議論が交わされている。 「コロナ禍で、高齢者の体⼒の維持・向上を意図した介護予防プログラムを優先的に⾏うことの必要性が⽰唆されました」と、研究グループでは述べている。 関連情報コロナ禍で移動動作能⼒は3倍以上、柔軟性は5倍以上低下 ⼥性では握⼒と⼿指巧緻性も低下
研究グループは今回、体⼒テストによる客観的な評価と、新型コロナ流⾏前からの追跡を⾏うことで、流⾏下では通常の加齢変化よりも機能低下がどの程度⽣じているのか、また、機能低下の内容に男⼥で違いがあるのかを調べた。 研究は、茨城県笠間市で実施している「かさま⻑寿健診」(2009年に開始された、⾼齢者の健康、体⼒、⾝体活動に着⽬した中規模集団の追跡調査)に参加した地域在住⾼齢者(男性107⼈、⼥性133⼈、平均年齢73.2歳)を対象に、2016~2020年の4年間のデータを解析したもの。 これにより、新型コロナ流⾏下では、通常の1年間で⽣じる加齢変化と⽐較して、体⼒(⾝体機能)が顕著に低下していることが確認された。男⼥ともに顕著に悪化が確認された体⼒テストは、Timed Up & Go(複合的移動動作能⼒)、5 m通常歩⾏時間(歩⾏能⼒)、⻑座体前屈(柔軟性)だった。 Timed Up & Goは、歩⾏能⼒や動的バランス、敏捷性など、複合的な移動動作能⼒の総合的評価指標。椅⼦に腰かけた状態から合図とともに⽴ち上がり、3m前⽅のコーンを回って、再び椅⼦に腰かけるまでの動作を最⼤速度で⾏う。この評価は、⾼齢者の⽇常⽣活機能(下肢の筋⼒、バランス、歩⾏能⼒、易転倒性)との関連性が⾼いことが⽰されており、医療現場だけでなく、介護現場での評価としても利⽤されている。 5m通常歩⾏時間でも、通常の1年間では、男性で−0.04秒、⼥性で−0.01秒と、男⼥ともに通常の加齢変化では機能が維持されていたものの、流⾏下の1年間では、男性で+0.19秒、⼥性で+0.15秒遅くなった。 ⻑座体前屈でも、通常では、男性で+0.33cm、⼥性で+0.84cmと維持されていたが、流⾏下では、男性で−2.89cm、⼥性で−4.37cmと、柔軟性の低下がみられた。 つまり、新型コロナの流⾏下では、通常の1年間の加齢変化よりも、移動動作能⼒が3倍以上、柔軟性は5倍以上低下したことになる。さらに、⼥性でのみ、握⼒(上肢筋⼒)は3倍、48本ペグ移動(⼿指巧緻性)では4倍、通常の1年と⽐べて、流⾏下では顕著な悪化が確認された。 48本ペグ移動では、ペグを左右それぞれの⼿に1本ずつ持ち、⼿前の盤の⽳に最⼤努⼒で素早く移すように指⽰し、48本のペグをすべて移し終わるまでに要した時間を記録する。上肢機能の総合的評価ができ、リハビリテーション分野でも⽤いられている。
コロナ禍で高齢の男⼥で「Timed Up & Go」「5m通常歩⾏時間」「⻑座体前屈」が顕著に低下
⼥性では「握⼒(上肢筋⼒)」「48本ペグ移動(⼿指巧緻性)」も顕著に低下
出典:筑波大学、2022年
⾼齢者の体⼒向上への具体的なアプローチ法の⽴案を⽬指す
「男⼥ともに移動動作能⼒や柔軟性が低下していることに加えて、⼥性でのみ上肢筋⼒や⼿指巧緻動作が低下していることが明らかになりました」と、研究グループでは述べている。 「これらのことは、新型コロナ流⾏下のような⽇常活動が制約される環境では、男⼥ともに複合的移動動作能⼒、柔軟性の維持・向上を意図した介護予防プログラムを優先的に⾏うことの必要性を⽰唆しています。さらに、⼥性については、上肢筋⼒や⼿指巧緻動作への働きかけも必要と考えられます」としている。 なお、今回研究は、地域在住⾼齢者の⾝体機能を体⼒テストにより、客観的かつ縦断的に評価し、新型コロナ流⾏下での影響を明らかにしたものだが、集団の平均的な体⼒の推移を観察したにとどまり、個⼈ごとの影響の受けやすさなどは検証していないとしている。 「今後は、対象者の質問紙調査データを照らし合わせて、⾝体機能低下が顕著であった⼈の特徴や背景要因を把握し、⾼齢者の体⼒向上に向けた具体的なアプローチ法の⽴案を⽬指します」と、研究グループではコメントしている。 筑波大学大学院人間総合科学研究科体育科学専攻 大藏研究室新型コロナウイルス感染症流行下の高齢者の体力の変化~パフォーマンステストを用いた検討~ (⽇本⽼年医学会雑誌 2022年10⽉25⽇)
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