ニュース

【子宮頸がん】HPVワクチンの接種意思はSNSでの情報提供により向上 女性のヘルスリテラシーを高める

 秋田大学は、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種の啓発活動について、秋田県内の4大学の学生を対象に、SNS(LINE)などによる介入効果を検討した結果を発表した。

 LINE、郵送ともに効果があり、積極的に情報を提供することで、女性の知識やヘルスリテラシーを高められることが示された。とくにSNSを利用した頻回の介入と、コミュニケーションの場の提供は、有効な活用方法になるとしている。
HPVワクチン接種を逃した女性にSNSを活用し積極的に情報を提供
 日本では、2013年~2021年に、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの積極的勧奨が差し控えられていたが、2022年4月に積極的勧奨が再開された。積極的勧奨差し控えの期間にHPVワクチン接種を逃した人を対象に、2025年までの3年間という期限を設け、キャッチアップ接種も行われている。

 HPVワクチンの接種率の向上に向け、啓発活動が必要となる。とくにLINEやTwitterといったSNS(ソーシャル ネットワーキング サービス)は女性でも普及しており、これらのSNSを活用した積極的な情報提供は効果がある可能性がある。

 そこで秋田大学の研究グループは、ランダム化比較試験により、(1) HPV関連情報を提供する際の媒体(LINE群 vs 郵送群)による効果、(2) SNSのより有効な情報提供の方法として、LINEを用いた頻回な介入と会話の場の提供(LINE-assisted intervention群 vs 無介入群)による効果を検討した。

 秋田県内の4大学の学生を対象に、HPVワクチン接種未完了の18~35歳の男女学生を募集した。357人(女性53%)をLINE群(178人)と対照群(179人)に、性別で層別化し無作為に割り付けた。

 1回目の介入では、LINE群と対照群(郵送群)にそれぞれLINE、郵送を用いて、HPVおよび子宮頸がんに関する情報を提供した。2回目の介入では、LINE-assisted intervention群に週5日、7週間にわたり情報を提供し、参加者が自由に発言できるコミュニケーションの場を提供し、対照群(無介入群)では無介入とした。それぞれの介入後の約1ヵ月後に自記式質問票を配布した。

 合計357人の未接種男女(女性53%、平均年齢20歳)がベースライン調査に回答し、3年以内の接種意思ありは、LINE群40%、対照群42%だった。

関連情報
SNSを利用した頻回の介入と、コミュニケーションの場の提供は効果がある
 1回目介入後調査では、LINE群と郵送群では、接種意思(51% vs 40%)、および知識、ヘルスリテラシー、HBM(罹患性・重大性)にについて、有意差はみられなかったものの、両者で情報提供の効果がみられた。

 群内比較では、LINE群で接種意思および知識・ヘルスリテラシー・HBMのレベルが向上し、郵送群では知識およびヘルスリテラシー・HBM(罹患性・重大性)が向上していた。

 さらに2回目介入後調査では、LINE-assisted intervention群で接種意思(66% 対 44%)が向上していた。とくにSNSを利用した頻回の介入と、コミュニケーションの場の提供は、有効な活用方法になる可能性が示された。

 研究は、秋田大学大学院医学系研究科衛生学公衆衛生学講座の野村恭子教授、太田友氏と、医学科の学生によるもの。研究成果は、「Vaccines」に掲載された。

 「LINEと郵送という媒体の違いによらず、両者とも知識・ヘルスリテラシー・HBM(罹患性・重大性)の向上を促すことが示されましたが、LINE群では、知識およびヘルスリテラシー・HBM(罹患性・重大性)に加えて、接種意思も向上していました」と、研究グループは述べている。

 「積極的勧奨差し控えの期間にHPVワクチン接種を逃した女性を対象に、接種率向上に向けた啓発活動を行ううえで、SNSを用いた情報の提供は効果的である可能性があります」としている。

 なお、調査項目は、基本的特性(性別、年齢、学部、喫煙歴、飲酒歴)、HPVワクチン接種意思(ただちに、半年以内に、1年以内に、3年以内に、受けようと思わない、わからない)、知識、ヘルスリテラシー、ヘルスビリーフモデル(罹患性、重大性、利益、障壁)とされた。

 接種意思は、「直ちに」から「3年以内に」を「接種意思あり」とした。知識は、HPVワクチンに関する20個の質問を行い、正解数を算出、中央値以上未満で2値化した。接種意思および知識・ヘルスリテラシー・ヘルスビリーフモデル(HBM)をアウトカムとし、性別で層別化した層別化ロジスティック回帰分析を用いた。

秋田大学大学院医学系研究科 衛生学・公衆衛生学講座
Influence of LINE-Assisted Provision of Information about Human Papillomavirus and Cervical Cancer Prevention on HPV Vaccine Intention: A Randomized Controlled Trial (Vaccines 2022年11月24日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2023年08月28日
極端な「糖質制限」や「脂質制限」は危険? 日本人に適した食事スタイルは? 8万人超を調査
2023年08月28日
カラフルな野菜を食べている人は認知症の発症が少ない ホウレンソウやブロッコリーを食べて認知症を予防
2023年08月28日
わずか5分の運動でも「がんリスク」を32%減少 無理なく続けられる「新しい運動法」を開発
2023年08月28日
週末の「寝だめ」では平日の睡眠不足のダメージを回復できない 寝不足が心臓の健康に悪影響
2023年08月28日
高齢者の「フレイル」の発生リスクを40%低減 「要支援」の高齢者が通所系サービスを利用すると効果
2023年08月21日
肥満やメタボが「腰痛」を引き起こす コロナ禍でさらに増加 「腰痛」を改善する運動は?
2023年08月21日
朝食欠食が肥満やメタボのリスクを上昇 朝食を食べない人に共通する生活スタイルは?
2023年08月21日
アルコールが高血圧の原因に 飲酒量が少ない人も血圧が上昇 2万人弱を調査
2023年08月21日
ストレスを解消する簡単で効果的な方法 「みんなと楽しく食べる」「睡眠を改善する」
2023年08月21日
「運動アプリ」がメンタルヘルスも改善 スマホアプリの導入は運動指導で障壁の低い介入に
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶