トピックス・レポート

エビデンスで紐解く生活習慣病予防 指導現場で使える最新データ
【糖尿病】2型糖尿病発症予防から寛解まで

日本生活習慣病予防協会 代表
東京慈恵会医科大学 客員教授
和田高士

エビデンスで紐解く生活習慣病予防・糖尿病編

 2型糖尿病の発症予防では、肥満や血糖値だけでなく、日々の食習慣にも目を向けることが重要である。近年、日本人を対象とした大規模研究によって食習慣と糖尿病発症の関係が検討される一方、前糖尿病から正常血糖への移行や、糖尿病発症後の「寛解」についても新たな研究結果が報告されている。

 また、日本人の糖尿病を考えるうえでは、肥満だけでなく、低体重や低栄養にも目を向ける必要がある。本稿では、発症予防から発症後の血糖管理まで、保健指導の現場で生かしたいエビデンスを紹介する。

食習慣と前糖尿病からの移行

糖尿病になりやすい食習慣―日本人約13万人を対象とした研究

 これまで食習慣と糖尿病発症の関係が検討され、朝食を抜く、早食いをするといった食習慣が2型糖尿病の発症と関連するという報告がされてきた。しかしこれらの研究にはサンプルサイズが小さい、もしくは追跡期間が短いといった限界があった。

 そこで、日本人約13万例を対象に、2008~2018年の健診データを用いたコホート研究が実施された[1]。対象は企業の従業員12万8,594人で、平均追跡期間は約6.4年だった。

 多変量解析の結果、朝食を抜くこと(HR:1.33)や早食い(HR:1.96)が、2型糖尿病の発症リスクと関連していることが示された。夕食後の間食や就寝前の食事にも関連が認められた。ただし、就寝前の食事については、解析に空腹時血糖値を加えると関連の方向が変わるなど、慎重な解釈が必要である。
 HR(ハザード比)は、比較する集団に対する発症の相対的な起こりやすさを示す指標である。早食いのHR:1.96とは、ゆっくり食べる人と比較した場合、早食いでは2型糖尿病の発症リスクが1.96倍という意味である。

 また、この研究では、BMIが25未満の人でも、朝食の欠食や早食いなどの食習慣と糖尿病発症との関連が認められた。糖尿病の発症予防を考えるうえでは、肥満の有無だけでなく、日々の食べ方にも目を向けることが重要である。
 ただし、この研究は観察研究であり、食習慣と発症リスクの関連を示したもので、因果関係を証明したものではない。また、対象は企業の従業員で男性が多く、結果の一般化には留意が必要である。

前糖尿病からの移行―国際比較

 前糖尿病から2型糖尿病や正常血糖への移行の実態は十分に検討されておらず、2型糖尿病を発症しやすいのはどんな特性を持つ人かについての議論が続いている。
 そこで、日本を含む8カ国で行われた19件の前向きコホート研究のデータを統合して、前糖尿病に該当する人の正常血糖への移行率と、糖尿病への進行率を推定した[2]。

 この研究では、約7万6,000人のデータを解析し、そのうち約1万9,000人が前糖尿病に該当した。
 前糖尿病の患者は、前糖尿病状態が続く人もいたが、正常血糖に戻った患者と2型糖尿病に進行した患者がいた。10年以内に2型糖尿病に進行する確率は12.5%だったのに対し、正常血糖に戻る確率は36.1%だった。

 つまり、前糖尿病と判定されても、必ずしも糖尿病に進行するわけではなく、正常血糖に戻る可能性もあることが示された。ただし、これらは8カ国のデータに基づく推定値であり、日本人だけの数値ではない。

 患者特性の中で、前糖尿病状態から2型糖尿病への進行リスクと有意に関係していたのは、2型糖尿病の家族歴、HDLコレステロール、中性脂肪、拡張期血圧、肥満の指標で、特に肥満は進行の強力な予測因子だった。
 前糖尿病から正常血糖値に戻る確率を有意に低下させた危険因子は、過体重や肥満、ウエスト・身長比やウエスト・ヒップ比の上昇、HDLコレステロールの低下などだった。
 研究全体では、前糖尿病に該当する人では、2型糖尿病への進行よりも血糖値が正常に戻る確率の方が高く、これらの変化は修正可能な因子の影響を受けていた。

 この研究は、前糖尿病の段階から生活習慣や肥満などの危険因子に目を向ける重要性を示している。ただし、生活習慣の改善によって個々の対象者がどの程度正常血糖に戻るかを直接検証した研究ではないことにも留意したい。

糖尿病=肥満者?

 日本肥満学会は2025年4月、18歳から閉経前の女性における低体重や低栄養の状態に対する新たな疾患概念として、「女性の低体重/低栄養症候群(Female Underweight/Undernutrition Syndrome:FUS)」を提唱した[3]。

 低体重や低栄養に伴う健康課題の一つとして、耐糖能異常も指摘されている。肥満に伴う糖尿病のリスクだけでなく、やせや低栄養と糖代謝との関係にも目を向けることが重要である。ただし、低体重であることだけで糖尿病の発症リスクが高いと判断できるわけではない。

研究結果から考えられること

 糖尿病の発症予防では、体重やBMIだけでなく、朝食の欠食、食べる速さ、夕食後の間食など、日々の食習慣を確認することが重要である。特に、働く世代では、勤務時間や交代勤務、通勤時間などが食事の取り方に影響する場合がある。食習慣だけを問題にするのではなく、その背景にある生活環境にも目を向けたい。

 また、前糖尿病の段階では、糖尿病への進行だけでなく、正常血糖に戻る可能性もある。こうした研究結果は、生活習慣の改善を考えるうえで参考になると考えられる。

日本人2型糖尿病患者の寛解と再発

糖尿病は寛解するのか

 糖尿病は「ひとたび発症したら治らない」と言われてきた。生活習慣改善、薬物療法、肥満外科手術などによる減量により血糖値が改善し、薬物療法が不要となることがある。
 そこで米国糖尿病学会(ADA)を中心とする国際的な専門家グループが「糖尿病の寛解」について報告した。血糖降下薬を使用していない状態で、薬剤中止から少なくとも3カ月後に測定したHbA1c値が6.5%未満であることを、寛解の判定基準とした[4]。

 寛解とは、糖尿病が完全に治ったことを意味するものではない。血糖値が改善した状態を指し、その後も定期的な検査や管理が必要となる。この定義を踏まえ、日本人2型糖尿病患者における寛解の割合や、寛解に関連する因子を調べた研究が報告されている。

 全国の糖尿病専門施設が参加する糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)のデータベースから、HbA1c値が6.5%以上および/または血糖降下薬を処方されている18歳以上の日本人2型糖尿病患者4万8,320例を対象とした研究報告がなされた[5]。

 検討の結果、中央値で5.3年の追跡期間中に3,677例が寛解に至った。寛解の関連因子を観察開始時の背景やBMIの変化から検討したところ、糖尿病診断からの期間が短い人、HbA1c値が低い人、観察開始時のBMIが高い人、1年間のBMI低下幅が大きい人、薬物療法未施行の人では寛解に至る割合が高かった。
 中でも、1年間にBMIが10%以上低下した人では、寛解の発生率が高かった。こうした結果から、適切な体重管理が寛解に関連する重要な要因の一つであることが示唆された。

 なお寛解者のうち約3分の2(2,490人)が1年以内に再発した。観察開始時のBMIが低いことや、1年間のBMI低下幅が小さいことが再発と関連していた。
 この結果は、2型糖尿病が寛解に至る可能性を示す一方で、寛解後に再発する例も少なくないことを示している。

研究結果から考えられること

 2型糖尿病では、生活習慣の改善などによって血糖値が改善し、寛解に至る例が報告されている。一方で、寛解後も再発する可能性があり、継続的な管理が重要である。

 また、減量が寛解と関連するという研究結果は、すべての糖尿病患者に一律の減量を求める根拠にはならない。患者の年齢、BMI、栄養状態、治療状況などを考慮する必要がある。

今後の糖尿病対策と保健指導の視点

 令和8年度の厚生労働科学研究費補助金の公募課題には、NDBや各種調査などを活用した糖尿病対策の実態把握と、医療提供体制の整備、発症予防・重症化予防に向けた研究が掲げられている[6]。今後は、科学的根拠に基づき、患者の病態や社会環境を考慮した個別化された食事療法・運動療法について、さらに研究を進める必要がある。

 また、近年、GLP-1受容体作動薬などの糖尿病治療薬・肥満症治療薬が、美容・痩身目的で適応外使用されることが問題となっている[7]。特定健康診査の標準的な質問票には、「血糖を下げる薬又はインスリン注射」の使用有無を確認する項目がある。こうした回答だけで不適切使用を判断することはできないが、薬剤の使用状況を適切に把握し、必要に応じて医療機関と連携することが重要である。

参考文献・資料

[1]Toyokuni E, et al. Eating behaviors and incidence of type 2 diabetes in Japanese people: The population-based Panasonic cohort study 15. Journal of Diabetes Investigation. 2024;15(8):1017-1025. https://doi.org/10.1111/jdi.14207
[2]Davoodian N, et al. Prediabetes transitions to normoglycaemia or type 2 diabetes and associated risk factors in the Obesity, Diabetes and Cardiovascular Disease Collaboration: an individual-level pooled analysis of 19 prospective cohort studies. The Lancet Global Health. 2025;13(9):e1533-e1542. https://doi.org/10.1016/S2214-109X(25)00237-2
[3]日本肥満学会「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)ステートメント」(2025年4月17日公開)
[4]Riddle MC, et al. Consensus Report: Definition and Interpretation of Remission in Type 2 Diabetes. Diabetes Care. 2021;44:2438-2444. https://doi.org/10.2337/dci21-0034
[5]Fujihara K, et al. Incidence and predictors of remission and relapse of type 2 diabetes mellitus in Japan: Analysis of a nationwide patient registry (JDDM73). Diabetes, Obesity and Metabolism. 2023;25(8):2227-2235. https://doi.org/10.1111/dom.15100
[6]厚生労働省「令和8年度 厚生労働科学研究費補助金公募要項(1次)」
[7]厚生労働省「GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用について」(2026年6月16日)

日本生活習慣病予防協会のご案内

日本生活習慣病予防協会

「一無、二少、三多(※)」の健康標語を掲げ、生活習慣病の予防、啓発を目的に、情報発信、企業との連携活動などを行っております。(※一無:禁煙 二少:少食、少酒 三多:多動、多休、多接)

毎年2月には、「全国生活習慣病予防月間」を開催しています。テーマに沿った講演会や、関連団体・企業との協力関係のもと、全国的な啓発活動を行っています。HPでは保健指導の現場でも役立つポスター・リーフレット等の啓発資材配布を行っていますので、ご活用ください。

詳細はこちら

[保健指導リソースガイド編集部]