オピニオン/保健指導あれこれ
住み慣れた地域で最期まで暮らすことを目指した「暮らしの保健室」~医療・看護・介護を通じた住みよいまちづくりの試み~

No.7 高齢者の新たな居場所づくりへの支援

看護師、社会福祉士、介護支援専門員、MBA(経営学修士)
神山 欣子
 地域包括ケアシステムの構築は、高齢者が住み慣れた地域で最期まで暮らせることを目標とし、それぞれの住まいを中心に医療や介護を適切に使いながら最期まで安心して暮らせるまちづくりが必要となっています。

 医療や介護以外で重要な役割となっているのが自治会や老人クラブなどの集いで、ご近所様とのお付き合いや居場所、お互いを思いやり、助け合う役割づくりです。

 しかし、核家族化や都市型の生活様式が浸透した現代社会では、個人のライフスタイルも多様化し、そう言ったコミュニティの場が非常に少なくなっています。暮らしの保健室では体操を行う自主グループの活動を支援し、新たな居場づくりの可能性にチャレンジしています。

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まちかど*ステーションで行う体操教室(2018年10月)

きっかけづくり

 地域包括支援センターが実施する高齢者の一次予防事業として体操教室の開催があります。これは地域包括支援センターが市の委託事業として各地域で開催するもので、体力測定や体操を週1回実施し、10回を通して介護予防につなげる目的を有しています。

 しかし、約2か月余り一緒に体操教室に通った仲間が解散してしまうのがとても残念であり、継続した介護予防の関りが重要と考えました。

 一次予防事業で集まった人たちが継続的に集える「場」を提供することで、自治会や老人会とは違う場所での自主的な運営による居場所づくりとなるよう支援する事にしました。

 体操教室では、初めに会長や会計を決め、簡単な会則を定め、内容を検討します。参加者の要望から体操の指導者を選定し、30分は健康運動指導士が行う体操、次の30分はDVDを使った昔ながらのラジオ体操とひらかた体操、最後の30分はしりとりやゲームなど何でもありのメニューを皆さんが考えます。

 自主的にメニューを企画することに慣れていない方が大半でしたが、参加者同士の関係が築きあげられることで、楽しみながら企画していくことができるようになりました。

 最初に立ち上げたAグループ(まちかど元気クラブ)は男性が1名おり、会長を引き受けてくださり、会計も少し年齢の若い活動的な方が引き受け、ご主人の協力で会則や名簿づくりがスムーズにできました。

 リーダー的な役割を担える参加者が数名おられたため順調に進むことを期待しましたが、「勝手に決まっている」、「もっと話し合って決めたい」など他の参加者からの声が聞こえてきましたので、保健室のスタッフが双方の言い分を聞きながら調整していきました。

 もう一方のBグループ(けやき元気クラブ)は、Aグループよりやや年齢が高い参加者が多く、物事を決める過程に時間を要しました。なかなか会長が決まらず、最後はくじ引きしかないかと思っているときに、一人の方が「副会長や会計を手伝ってくれるのならやります」と手を挙げてくださり、やっとのことで決まりました。

 この経緯からかBグループは参加者全員が会長や副会長を助ける雰囲気があり、誰かが「こんなことしたらどうかな?」といえば「いいね、やろうやろう。」と賛成の声が上がり、すぐにまとまることが出来ています。2つのグループはそれぞれ雰囲気が少し違うのでグループの特徴に合わせた支援をしています。

活動の継続

 介護予防の活動を支援する中で参加者の方にどのような変化があり、どのような思いで活動を継続できているかを知るために、2019年3月に質問紙を用いてアンケートを実施しました。アンケート結果と半年に1回の体力測定の結果を開始前と開始後で比較しました。

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図1.握力測定、片足立ち測定、2歩幅測定、仮名ひろい測定の結果を
A(青線)B(赤線)両グループの平均値を開始時と半年後で比較したグラフです。

 身体機能の項目ではグループにより変化が異なりましたが、2歩幅測定は2グループとも改善がみらました。仮名ひろい測定は2グループとも若干の改善が見られました。

 継続の意識では、すべての方が活動を続けたいと望んでいました。始めは自分自身の健康のための介護予防が目的の大部分を占めていましたが、徐々に仲間との交流や会話が楽しみの一つとして認識されるようになってきていました。

 また、何回か続けて休まれる方がいると心配して保健室スタッフに相談したり、年齢が高いため帰宅までの道のりが心配な方をそれとなく送っていったりするなど、参加メンバー間で助け合うことが増えました。このようなメンバー間のつながりが継続意識につながっていると考えられます。

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図2.生活面の変化を主観的に答えていただいた結果

 体操教室に通い始めてからの生活面の変化としては「笑顔や笑う機会が増えた」「人と話す機会が増えた」「人との付き合いが増えた」「外出の頻度が増えた」「身体が動かしやすくなった」と感じている人が多く、クラブ活動の効果が実感できていることがわかります。

2グループと異世代の交流を促進する保健室からのしかけ

 2つのグループはそれぞれ月曜日と金曜日の午前10時から11時30分まで活動しており、一部の方は同じマンションで顔なじみだったり、老人会で一緒になるなど情報の交流がありますが、他のメンバーは全く知らない状況でした。

 そこで2つのグループが一緒に集まり何かできないかと考えました。また、併せて子育て世代との交流を促進したいと考えました。

 1つ目に、秋のお彼岸におはぎ作りの会を開催しました。両グループの人と小さい子どものいるママさんと一緒におはぎをつくることで、世代間の交流と伝統的な食文化を継承してもらえる機会としました。

 高齢の方も今はおはぎを手作りすることは少なくなったけれど、米のつきかた、丸め方、あんこのつけ方などコツを話しながらあっという間におはぎが出来上がりました。

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 2つ目は、両グループを対象に室内で運動会を開催しました。いくつかのグループに分かれ玉入れや伝言ゲームなど競い合っているうちに各グループの仲間意識がさらに高まり、時間を忘れて取り組むことが出来ました。

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 3つ目は、やはり子ども世代との交流のため、マイケーキづくりとストレスに負けないアンガーマネジメント講習会を実施しました。どの世代であっても何かしらストレスを感じることは誰にでもあり、誰かが聞いてくれたり、理解してもらえると乗り越えられるからです。

 高齢者が若い世代のママたちのストレスをどんなふうに受け止めるのかを興味深く見ていましたが、それぞれ顔見知り同士の話で盛り上がり、交流とまではいきませんでした。

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地域づくりと居場所

 これまでは自治会や老人クラブ、一人暮らしの高齢者の会などが中心であった居場所は、今も継続して行われていますが「老人」のイメージが大きく変わり、まだそこには行きたくない高齢者もいます。年をとってもできるだけ元気に過ごしたいと、健康の維持、介護予防に関心が高い方が多いのが現状です。

 しかし、一方で一人暮らしの高齢者は増加しており、何らかの不安や寂しさを抱えている方も多いのです。そこに行けば自分のことを気にかけてくれる仲間がおり、楽しく話しをする相手がいる居場所が重要です。

 そして自分だけでなく、家族の健康や隣近所の人たちのことも気にしながら地域とつながる場としての機能が必要だと感じます。時にはグループ以外の高齢者や異世代とつながり、お互いを同じ地域に暮す人ととらえることが出来る関係性の構築を願っています。

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