農林水産省、第5次食育推進基本計画を公表 「大人の食育」を重点事項に、職場や学校での取組を推進
農林水産省は6月24日、「第5次食育推進基本計画」を公表した。同日開催された第9回食育推進会議において決定されたもので、2026年度からおおむね5年間を計画期間とする。同計画は、5月27日に公布・施行された改正食育基本法の基本理念や基本的施策等を具体化し、食育に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために作成された。第5次計画では、「農林漁業教育」や「大人の食育」等が重点事項に位置付けられている。
第5次計画で「大人の食育」を重点事項に
第4次食育推進基本計画では、①生涯を通じた心身の健康を支える食育、②持続可能な食を支える食育、③「新たな日常」やデジタル化に対応した食育――の3つを重点事項とし、食育を国民運動として推進してきた。
これに対し、第5次計画では、①学校等での食や農に関する学びの充実、②健全な食生活の実現に向けた「大人の食育」の推進、③国民の食卓と生産現場の距離を縮める取組の拡大――の3つを重点事項に定めた。
主な変更点の一つが、「大人の食育」を独立した重点事項として明示したことである。近年、単身世帯や共働き世帯の増加、働き方の多様化、中食市場の拡大、デジタル化の進展等に伴い、食に関する国民の価値観やライフスタイルの多様化が進んでいる。特に第4次計画の計画期間においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や食料品等の価格上昇等により、食に関する経済性志向や簡便化志向が上昇し、家庭や地域で健全な食生活を実践することが困難な場面が増えている。
特に若い世代(20歳代および30歳代)では、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の回数や、野菜類・果物類の摂取量が少ない等の課題がある。こうした状況を踏まえ、第5次計画では、若い世代を中心に、食や農林漁業への理解を深め、行動変容を促す「大人の食育」を推進する方針を示した。
職場や企業を通じて「大人の食育」を推進
「大人の食育」を進めるため、第5次計画では、官民連携食育プラットフォームにおいて、会員企業を中心とした事業者間および官民の連携を推進する。朝食の欠食や栄養バランスを欠いた食生活、生産現場を知らない人の増加等の課題に対し、各種プロジェクト活動の実施や、大学・地域への働きかけを進める方針である。
また、官民連携食育プラットフォームの下で、「食育実践優良法人顕彰制度」を実施する。朝食や栄養バランスに配慮した食事の提供、アプリ等を活用した食事管理等、従業員の食生活改善に向けた取組とその評価を行う企業を顕彰し、企業内の活力向上と優良な取組の横展開を図る。さらに、食事支給を通じた従業員の食環境の充実にも取り組むとしている。
食品関連事業者等は、さまざまな体験活動の機会や健康に配慮した商品・メニューを提供するとともに、地域の飲食店や食品関連事業者等との連携を通じて、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事や、地域の食文化を反映させた食事を入手しやすい食環境づくりに取り組むよう努める。また、官民連携食育プラットフォーム等とも連携し、食生活改善につながる表示や商品・サービスの提供・見える化等の取組を推進する。
食生活や減塩・野菜・果物摂取の目標を再設定
第5次計画では、食育の目標を、国民一人一人が自ら実践する「個人目標」と、地域等が主体となって取り組む「地域目標」に分類した。目標値は、第4次計画の目標値や現状値、推移の傾向等を考慮して設定されている。
(1)国民一人一人が自ら実践する目標(個人目標)
| 目標 | 指標 | 目標値 (R12年度) |
|---|---|---|
| 食育に関心を持つ | ・食育に関心を持っている国民の割合 | 79.1%(R7年度) →90%以上 |
| 家族と一緒に食べる「共食」の回数を増やす | ・朝食又は夕食を家族と一緒に食べる「共食」の回数 | 週8.6回(R7年度) →週10回以上 |
| 朝食の欠食を減らす | ・朝食を欠食する子供の割合 | 6.4%(R7年度) →5%以下 |
| ・朝食を欠食する若い世代の割合 | 28.2%(R7年度) →25%以下 |
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| 栄養バランスに配慮した食生活等を実践する | ・主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上ほぼ毎日食べている国民の割合 | 36.1%(R7年度) →45%以上 |
| ・主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上ほぼ毎日食べている若い世代の割合 | 23.8%(R7年度) →30%以上 |
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| ・食塩摂取量の平均値 | 9.6g(R6年度) →7g(R14年度) |
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| ・野菜摂取量の平均値 | 258.7g(R6年度) →350g(R14年度) |
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| ・果物摂取量の平均値 | 78.1g(R6年度) →200g(R14年度) |
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| ・生活習慣病の予防や改善のために、ふだんから適正体重の維持や減塩等に気をつけた食生活を実践する国民の割合 | 63.2%(R7年度) →70%以上 |
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| ゆっくりよく噛んで食べる | ・ゆっくりよく噛んで食べる国民の割合 | 46.2%(R7年度) →55%以上 |
| 農林漁業体験を経験する | ・農林漁業体験を経験した国民(世帯)の割合 | 57.1%(R7年度) →60%以上 |
| ・農林漁業体験を経験した国民(本人)の割合 | 45.5%(R7年度) →50%以上 |
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| 生産現場等を意識して食品等を選ぶ | ・産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ国民の割合 | 66.0%(R7年度) →70%以上 |
| ・環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶ国民の割合 | 57.1%(R7年度) →60%以上 |
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| 食品ロス削減のための行動をする | ・食品ロス問題を認知して削減に取り組む消費者の割合 | 77.2%(R7年度) →80%以上 |
| 食品の安全性について基礎的な知識を持ち、自ら判断する | ・食品の安全性について基礎的な知識を持ち、自ら判断する国民の割合 | 68.6%(R7年度) →75%以上 |
出典:農林水産省「第5次食育推進基本計画」P.10
(2)地域等が主体となって取り組む目標(地域目標)
| 目標 | 指標 | 目標値 (R12年度) |
|---|---|---|
| 学校給食における地場産物等を活用した食育に関する取組等を増やす | ・栄養教諭による地場産物等に係る食に関する指導の平均取組回数 | 月14.1回(R7年度) →月15回以上 |
| ・学校給食における地場産物を使用する割合(金額ベース)を現状値(令和7年度)から維持・向上した都道府県の割合 | - →90%以上 |
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| ・学校給食における国産食材を使用する割合(金額ベース)を現状値(令和7年度)から維持・向上した都道府県の割合 | - →90%以上 |
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| 地域等での共食の機会を増やす | ・地域等で共食したいと思う人が共食する割合 | 70.1%(R7年度) →75%以上 |
| 地域等で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承する取組を増やす | ・地域や家庭で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承し、伝えている国民の割合 | 48.8%(R7年度) →55%以上 |
| ・郷土料理や伝統料理を月1回以上食べている国民の割合 | 54.7%(R7年度) →60%以上 |
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| 食育の推進に関わるボランティア等の人材の数を増やす | ・食育の推進に関わるボランティア団体等において活動している国民の数 | 30.3万人(R6年度) →31万人以上 |
| 推進計画を作成・実施している市町村を増やす | ・推進計画を作成・実施している市町村の割合 | 92.9%(R7年度) →100% |
出典:農林水産省「第5次食育推進基本計画」P.15
主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上ほぼ毎日食べている割合について、第4次計画では、2020年度の36.4%(国民全体)と27.4%(若い世代)を、2025年度までにそれぞれ50%以上、40%以上とする目標を掲げていた。しかし、2025年度の実績は36.1%、23.8%で、いずれも目標を達成しなかった。
第5次計画では、2030年度の目標がそれぞれ45%以上、30%以上に再設定された。
食塩・野菜・果物の摂取量については、「健康日本21(第三次)」との整合を図り、次の目標が設定された。
| 指標 | 現状値(2024年度) | 目標値(2032年度) |
|---|---|---|
| 1日当たりの食塩摂取量の平均値 | 9.6g | 7g |
| 1日当たりの野菜摂取量の平均値 | 258.7g | 350g |
| 1日当たりの果物摂取量の平均値 | 78.1g | 200g |
出典:農林水産省「第5次食育推進基本計画」P.10
第4次計画と比べると、食塩摂取量の平均値の目標は1日8g以下から7gへ引き下げられた。野菜摂取量の平均値は、1日350gの目標水準が維持された。果物については、指標が「1日当たりの果物摂取量100g未満の者の割合」から「1日当たりの果物摂取量の平均値」に変更され、1日200gが目標となった。
目標の達成状況については、少なくとも年1回、調査・公表するとともに、その背景や要因等の分析・評価を行う。必要に応じて施策を見直し、改善するなど、PDCAサイクルに基づく取組を適切に実施するとしている。
学校等では「農林漁業教育」を推進
「学校等での食や農に関する学びの充実」も、第5次計画における重点事項の一つである。学校では、食に関する指導の全体計画を作成し、給食の時間や各教科等における指導に加え、農林漁業体験の機会を提供する「農林漁業教育」を推進する。
学校給食については、子どもたちが各栄養素をバランスよく摂りつつ、関心を持ちながらさまざまな食に触れられる「生きた教材」として活用する。地場産物や有機農産物の活用を進めるとともに、学校給食関係者と農林漁業関係者等との連携を深める方針である。
第5次計画は、若い世代を中心とする大人の行動変容を促すとともに、企業や職場による食環境の整備、数値に基づいた健康づくり、学校等における食と農の学びを一体的に進める内容となっている。
管理栄養士や保健師、養護教諭等の専門職には、地域、学校、職場の実情に応じて食育の取組を企画・実践し、その成果を評価する役割が期待される。第5次計画で示された目標や施策を、それぞれの活動の場に即して具体化していくことが重要となる。
参考資料
「第5次食育推進基本計画」の決定について|農林水産省(令和8年6月24日)
第5次食育推進基本計画 概要|農林水産省
第5次食育推進基本計画|農林水産省
官民連携食育プラットフォーム|農林水産省
食育実践優良法人顕彰制度|農林水産省
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