No.3 女性の「やせ」とFUSへの支援を考える
―保健指導で何を確認し、どう伝えるか
支援については、まだ分からないことが多い
第1・2回では、女性の低体重・低栄養に伴う健康影響と、それらをFUSという枠組みで捉える意義を述べました。一方、FUSは提唱されて間もなく、診断基準だけでなく、誰に、どのような支援を、どの程度行うとよいかについても十分なエビデンスはありません[1,2]。
そのため、ここではFUSステートメント、国内の観察研究・介入報告、女性の健康支援などから考えられる、現時点での考え方を述べたいと思います。
背景と健康影響を一緒に確認する
BMI18.5未満はFUSの要因の一つですが、BMIだけでは低栄養の有無や背景が分かりません。面談では、体重の経時変化と減量の意図、食事状況、月経・身体症状、身体活動と休養、心理・食行動、生活環境の六つの領域を、可能な範囲で確認することが考えられます[1,2,3](表1)。
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田村好史作成
BMIが正常範囲でも、最近の体重減少、摂取不足、月経異常などがあれば、低栄養が背景にある可能性があります。一方、低体重であっても直ちに低栄養やFUSと決めつけるのではなく、体質性やせ、意図的な食事制限、運動過多、摂食障害、基礎疾患など、背景を分けて考えることが大切です[1,2]。
医療への接続を考えたい場合
短期間の著しい体重減少、無月経、失神、著しい徐脈や低血圧、反復する嘔吐・下剤使用、食べることへの強い恐怖、強い抑うつや希死念慮などがみられる場合は、一般的な保健指導だけで完結させず、医療につなぐ必要があります[1,2,3]。甲状腺機能亢進症、糖尿病、消化器疾患などが疑われる場合も同様です。FUSという名称を付けることより、緊急性や原疾患を見逃さないことが先になります。
紹介先は一つとは限りません。医師、管理栄養士、産婦人科、精神科・心療内科、学校・産業保健スタッフなどが、本人の同意を得ながら連携できるよう、日頃から相談先や紹介ルートを確認しておくことが重要と考えられます[1,2,3]。
体重より、本人の困りごとからのアプローチ
「もっと食べましょう」と健康リスクを説明するだけでは、行動変容につながらないこともあります。18~29歳女性984名の横断研究では、低体重に伴う健康リスクの知識は低体重群と標準体重群で大きく異ならず、知識だけでは体型の選択を変えにくい可能性が示唆されました[4]。まず「体重だけでなく、疲れや月経、食事について一緒に確認してよいですか」などと問いかけ、本人の困りごとや大切にしていることを聴くことが出発点になると考えられます。
説明するときも、「標準体重まで増やす」ことだけを目標にせず、疲れにくくなる、仕事や学業に集中しやすくなる、月経や筋力を保つなど、本人にとって意味のある体調や生活機能と結びつける方が受け止めやすいかもしれません。妊娠・出産のリスクだけを強調したり、本人の自己責任と捉えたりせず、体質、ボディイメージ、経済状況、勤務環境なども含めて考える姿勢が重要と考えられます[1,2,3](表2)。
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出来ることから始めてみる
食事については、最初から「三食を完璧に」と求めるより、朝食を少しでも食べてみる、新たに一品を加える、補食を取り入れる、避けていた主食や主菜を少量から戻すなど、実行できそうな一歩を一緒に選ぶ方法が考えられます。鉄、カルシウム、ビタミンD、葉酸なども重要ですが、まず総エネルギーとたんぱく質が確保できているかを確認します[5]。
第2回で述べたように、低体重若年女性には、摂取エネルギーと身体活動量の双方が少ない「エネルギー低回転型」がみられます[6]。ただし、摂取不足に運動過多が重なる人もいるため、運動を一律に増やすのではなく、まず食事と活動量の釣り合いを確かめる必要があると考えられます。栄養が確保できる場合には、筋・骨や体力を意識した無理のない身体活動を個別に考えると良いでしょう。
現時点では、体重だけでなく、欠食、月経、疲労、検査値、筋力、生活のしやすさなどから本人と評価項目を決め、経過をみながら支援を調整することが現実的です。再評価の時期にも確立した基準はありませんが、少数の経験からは1~2週間程度で本人が体調の変化を自覚することが多いようです。
個人を取り巻く環境も含めて考える
若年女性のやせ対策のロジックモデルでは、食事や身体活動だけでなく、朝食欠食、筋肉量・骨量、ボディイメージ、食環境、健診と保健指導を組み合わせた取り組みが提案されています[7]。学校や職域でも、体型の多様性やメディア情報の受け取り方を扱う教育、相談窓口、医療への紹介ルート、食事を取りやすい休憩や食環境などを整えることが考えられます。
FUSへの支援には、まだ完成した処方箋がありませんが、背景に応じて、本人と相談しながら小さな支援を試し、経過と結果を記録していくことが大切と考えられます。こうした実践の蓄積が、将来のスクリーニング法や介入プログラムをつくるためのエビデンスになるでしょう。
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参考文献
[1] 日本肥満学会 女性の低体重/低栄養症候群ワーキンググループ. 女性の低体重/低栄養症候群(FUS)ステートメント. 肥満研究. 2025;31(2):55-61.
[2] Tamura Y, Ogawa W, Ishii K, Ishigaki Y, Nagai N, Hirota Y, Morino K, Inokuchi M, Suzuki T, Tanaka S, Terauchi M, Nose-Ogura S. Female Underweight/Undernutrition Syndrome (FUS): An Emerging Health Concept in Premenopausal Women - Secondary Publication (English Translation of the Japanese Statement). J Obstet Gynaecol Res. 2026;52(2):e70201. doi:10.1111/jog.70201.
[3] 荒田 尚子(研究代表者). 女性の健康支援者のためのテキストブック. 令和2年度厚生労働科学研究費補助金(女性の健康の包括的支援政策研究事業). 2021(2022年3月31日一部改訂, 第2版). https://marutto-woman.jp/textbook/
[4] Ogawa M, Nakazato M, Yokota J, Koga K. Knowledge of the risks associated with being underweight and body shape differences among young Japanese women: a cross-sectional study. BioPsychoSocial Med. 2025;19:17. doi:10.1186/s13030-025-00338-8.
[5] 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版). 2024.
[6] Sato M, Tamura Y, Nakagata T, et al. Prevalence and Features of Impaired Glucose Tolerance in Young Underweight Japanese Women. J Clin Endocrinol Metab. 2021;106(5):e2053-e2062. doi:10.1210/clinem/dgab052.
[7] 荒田 尚子. 栄養・食生活分野のロジックモデルとアクションプランの例―若年女性のやせの減少―. 日本健康教育学会誌. 2024;32(Special issue):S28-S34. doi:10.11260/kenkokyoiku.32.S28.
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