No.6 地域包括支援センターとの協働
厚生労働省は2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることが出来るよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。
保健室の活動は、地域包括支援センターとの連携が欠かせない
地域包括システムの構成要素は「自助・互助・共助・公助」ですが、これは時代と共に変化し、都市型の地域では互助や共助が成立しにくくなっています。お互い様の文化や一緒に行事に取り組むなどの機会が減少し、個人の責任で生活を継続させなければならないのです。地域の保健室はみんなのつながりの場として、顔見知りを増やし、周囲の人に繋がりを持ってもらう機会を提供しています。地域の人同士がお互いを思いやり、一緒に健康や予防に取り組むことで最期まで地域で安心して暮らせるまちづくりに貢献したいと願っています。
この地域包括ケアシステムにとって重要な鍵となる地域包括支援センターは、介護保険法で定められた地域住民の保健、福祉、医療の向上、虐待防止、介護予防マネジメントなどを総合的に行う機関で各市町村に設置されています。
私たち保健室の活動は地域包括支援センターとの連携が欠かせない関係にあると考えています。介護保険へのつなぎだけでなく地域の住民を対象として同じ目的を有しているからです。
認知症サポーター養成講座
そこで、しょうとく*まちかどステーションは最初の立ち上げから地域包括支援センターと連携し、様々な取り組みを協働して行いました。認知症サポーター養成講座や予防プログラムとしての体操教室の実施のため、保健室の場所を使っていただきました。
地域の方に保健室の場所を知っていただく機会にもなり、多くの方にご参加いただき、公的機関と連携することで安心して利用できる場所であることがアピール出来ました。
これまでに認知症サポーター養成講座を2回実施、延べ25名が参加しました。保健室のあるコリオ商店街に隣接した大型スーパーの店長と相談し、従業員を対象とした講座を実施しました。
地域の方が安心して買い物ができることや、従業員の方に「ちょっとおかしいかな」と気づいてもらい早期に対応できることを目的としました。店舗のすぐ側で開催することで、今後の相談にもつながることが期待できます。
よろず相談からの早期対応
保健室に駆け込む人の中には、まだ介護保険の利用について理解されていない方、拒否的な方がおられます。日々のよろず相談や気軽な来所の中で、独居高齢者や介護中の方、日常生活に不安のある方など気になる方がいらっしゃれば地域包括支援センターと情報共有し、早期に対応できる準備をしています。保健室で少しずつ介護保険の説明をし、支援の必要が起これば速やかに地域包括支援センターにつなげることができています。
例えば認知症の夫の介護をされている方が、「何とかなっているのですが、これでいいのでしょうか?」と悩まれて相談に来られます。自宅での生活は「何とかなっている」かもしれませんが、夫の認知症を進行させないためにもデイサービスを使った方が良いと考えられる場合は、地域包括支援センターに介護保険の申請をするように案内していきます。
また、一人暮らしの方が自分の物忘れが心配になり相談に来られます。専門医の受診が必要ですが、予約や予約した日を忘れずにその日に受診するには誰かの手助けが必要となります。地域包括支援センターと協力してどちらかが付き添うなどの方法で支援していきます。
健康運動プログラム(居場所づくり)
地域包括支援センターが主催する健康運動プログラムは、介護予防を目的とした枚方市の委託事業で、10回シリーズで行われます。10回の運動プログラムで「参加者がどうなりたいか?(例えばタクシーを使わず買い物が行けるようになりたいなど)」を考えてもらう事と10回中の前半と後半で体力測定を実施し、成果を実感して頂く内容です。
保健室には看護師や保健師が常駐しているため運動後の相談や話し相手にもなり、最期までプログラムを続けられるよう支援しています。しかし、この健康運動プログラムが終了しても日常生活の中に運動することが継続されなければ元に戻ってしまいます。
そこで皆さんが自主グループとして運動を継続する活動ができる場として保健室の利用を勧めており、現在2つのグループが自主的に集まりクラブとして活動を継続しています。地域包括支援センターは自治会を通しての関わりが多く、出前講座や予防プログラムの実施など自治会長等の要望に応える機会が多いのが現状です。
保健室に集う高齢者は、自治会という枠にとらわれず、買い物や散歩、通院など生活活動の範囲内で気軽に立ち寄る場としての利用となるため、ちょっとした相談や不安や悩みを打ちあける場所としてつながっています。
保健室スタッフから「○○さんが来て、こんな話をしていましたよ」などの情報を日ごろから地域包括支援センターと共有しておくことで、早期の対応ができているのが強みと言えます。
次回は、2つのグループの自主活動と保健室の関わりについて詳しく説明します。
「住み慣れた地域で最期まで暮らすことを目指した「暮らしの保健室」~医療・看護・介護を通じた住みよいまちづくりの試み~」もくじ
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