オピニオン/保健指導あれこれ
LGBTについて、学校保健分野・地域保健分野・産業保健分野で考える

No.2-1 LGBTと自殺、社会的養護、家族形成:はじめに

岡山大学大学院保健学研究科 研究科長
中塚 幹也

LGBTと地域保健:はじめに

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 LGBT当事者の自殺は高率であり、自殺総合対策大綱の改正では性的マイノリティ等への対応が盛り込まれました。このため、地域においても相談窓口の設置などの対応が求められています。

 また、学校でのLGBTの子どもたちへの対応が進む中、今後は児童養護施設の子どもにおける性の多様性への対応にも目を向ける必要があります。スタッフの無理解から、このような子どもたちが支援を受けられないままになっていないかどうかという視点で点検が必要です。

 日本においては、LGBT当事者やカップルが結婚したり子どもを持ったりすることに関してまだ本格的な議論が始まっていません。里親制度や特別養子縁組、また、第3者の関わる生殖医療などにより家族を形成できるかどうか、LGBTカップルにとって重要な課題です。

 また、LGBTの子どもたちにとってもライフプランを考えることができ、将来が見えることで「死にたい」という気持ちを和らげる一助になる可能性があります。

 今回は、地域保健スタッフが知っておくべきLGBTに関する種々の課題についてお話します。

地域保健スタッフが知っておくべき知識としての「LGBT」

 「性」あるいは「性別」はどのように決まるのでしょうか。

 「性」と言っても、身体の性、性の自己認識(性自認、心の性)、性的指向(好きになる性)、性別表現(服装や髪形などの表現)、割り当てられた性(戸籍や保険証などの性別)、性役割などいくつもの視点があります。

 性的指向の視点から少数派であるレズビアン(Lesbian: L)、ゲイ(Gay: G)、バイセクシュアル(Bisexual: B)の人々、性自認の視点から少数派であるトランスジェンダー(Transgender: T)の人々のことを合わせて「LGBT」という言葉も広く使用されています。

 「LGBT」を性的マイノリティの人々の総称として用いている場合もあります。また、性自認や性的指向などが揺れている、あるいは、定めない人々であるクエスチョニング(Questioning:Q)を加えた「LGBTQ」、さらに、それ以外の性的マイノリティの人々も含めて「LGBTQ+(プラス)」いう言葉もあります。

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 電通ダイバーシティ・ラボは、インターネット調査ではありますが、2018年10月に、全国20~59歳の6万名を対象とした調査を実施し、LGBTを含む性的マイノリティ(LGBT層)に該当する人は8.9%としています。このため、地域で接する人々の中にも約11人に1人の割合でLGBT当事者が存在している可能があります。

 今まではそのようなことを意識していなかったかもしれませんが、LGBTに関する知識を持ち、種々の情報に触れることで、性的指向や性自認のことで困っている人々が見えてくるのではないかと思います。

【参考】
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