Vol.7 高血圧の既往歴と長時間労働時の血圧上昇
長時間労働
法律上、「長時間労働」という言葉の明確な一律の定義はありません。一般的には、原則である「1日8時間、1週間40時間」の法定労働時間を超えて働く時間外労働を指します。世界各地の疫学研究により、週55時間以上の長時間労働が、脳卒中や冠動脈心疾患などの心血管疾患のリスクを高めることが報告されています[1]。
日本では300万人以上の労働者が週60時間以上働いており、その中には高血圧患者など、心血管疾患のリスクが高い人々も含まれていると考えられます[2]。
長時間労働時の血圧上昇
私たちは実験室において模擬長時間労働を実施し、高血圧者と正常血圧者の作業中の血圧変化を検討しました[3]。実験は9時から22時まで行い、安静時および簡単なパソコン作業時(T1-T12)の血圧反応を測定し、作業時と安静時の差分値を分析に用いました。高血圧群13名(安静時の収縮期血圧140~160mmHgかつ・または拡張期血圧90~100mmHg、51。9±1.5歳)と正常血圧群21名(安静時の収縮期血圧140 mmHg以下かつ拡張期血圧90mmHg以下、49.0±1.0歳)の男性が実験に参加しました。
結果は図が示すように、両群ともに長時間労働前半に比べて後半で血圧が有意に高くなり、さらに作業後半は正常血圧群より高血圧群の収縮期血圧上昇量が有意に高いでした。これは、長時間労働下にある労働者、特に高血圧者により大きい心血管系負担が生じますが、その負担は夕方以降(特に残業に当たる時間帯)により大きかったことが示されました。
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長時間労働が避けられない場合
長時間労働は心血管系負担を増大し、特に高血圧者の負担がより大きいことが我々の実験で実証されました。これらの労働者はなるべく長時間労働を避けることが推奨されますが、やむを得ない場合は一定の配慮が必要と考えられます。例えば、我々の先行研究は勤務中の1時間程度の休憩が過剰な心血管系反応を緩和する効果を認められました[4]。
長時間労働が避けられない場合、十分な休憩を確保することや、特に高血圧者のような高リスク者に対して勤務中の血圧をモニタリングするなどが必要と考えられます。
参考文献
[1] Kivimäki M, Jokela M, Nyberg S, Singh-Manoux A. Fransson E. et al. Long Working Hours and Risk of Coronary Heart Disease and Stroke: a Systematic Review and Meta-analysis of Published and Unpublished Data for 603838 Individuals. Lancet, 2015; 386: 1739-46.
[2] 労働力調査(基本集計) 2025年(令和7年)平均結果. 総務省.
[3] Ikeda H, Liu X, Oyama F, Wakisaka K, Takahashi M. Comparison of Hemodynamic Responses between Normotensive and Untreated Hypertensive Men under Simulated Long Working Hours. Scand J Work Environ Health, 2018; 44(6): 622-30.
[4] Liu X, Ikeda H, Oyama F, Wakisaka K, Takahashi M. Hemodynamic Responses to Simulated Long Working Hours with Short and Long Breaks in Healthy Men. Sci Rep, 2018; 8: 14556.
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関連リンク
保健指導リソースガイド・オピニオン「労働者の疲労リスク管理・効果的な休み方―過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の成果と職域での取り入れ方」(著・久保智英)
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