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違法な時間外労働、監督指導を実施した事業場の38.5%で確認 健康障害防止措置の未実施も20.3%【厚生労働省】

 厚生労働省は2026年9月15日、「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果」を公表した。監督指導を実施した2万9,150事業場のうち、違法な時間外労働が確認されたのは1万1,228事業場(38.5%)、過重労働による健康障害防止措置の未実施は5,919事業場(20.3%)だった。
 主な違反の割合は前年度より低下したものの、長時間労働が疑われる事業場では、健康確保に向けた課題が残る結果となった。

監督指導の対象は「長時間労働が疑われる事業場」

 今回の監督指導は、すべての事業場を調査したものではなく、各種情報から時間外・休日労働が月80時間を超えると考えられる事業場や、過重労働による過労死等の労災請求があった事業場など、長時間労働が疑われる事業場が対象となっている。

 令和7年度に監督指導を実施した2万9,150事業場のうち、労働基準関係法令違反が認められたのは2万2,882事業場(78.5%)。違法な時間外労働があったのは1万1,228事業場(38.5%)、賃金不払残業は1,901事業場(6.5%)、過重労働による健康障害防止措置の未実施は5,919事業場(20.3%)だった。

監督指導は増加、違反割合はおおむね低下

 監督指導を実施した事業場数をみると、前年度の2万6,512から2万9,150へ増加した一方、主な違反の割合はおおむね低下していた。

 違法な時間外労働は前年度の42.4%から38.5%へ3.9ポイント低下。賃金不払残業は8.0%から6.5%、健康障害防止措置の未実施は21.5%から20.3%へ低下した。また、健康障害防止措置が不十分として改善を指導した事業場も48.6%から43.9%へ4.7ポイント低下している。

 ただし、今回の監督指導は長時間労働が疑われる事業場を対象としているため、これらの数字だけから、すべての事業場で長時間労働が改善したと判断することはできない。また、健康障害防止措置の未実施が認められた事業場数は、前年度の5,691事業場から5,919事業場へ増加している。

前年度の監督指導結果との比較(事業場数・割合)
項目 令和6年度 令和7年度
違法な時間外労働があったもの 11,230事業場
(42.4%)
11,228事業場
(38.5%)
過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの 5,691事業場
(21.5%)
5,919事業場
(20.3%)
過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの 12,890事業場
(48.6%)
12,811事業場
(43.9%)

厚生労働省「令和7年度の監督指導結果」をもとに編集部にて作成

違法な時間外労働があった事業場の44.5%で月80時間超

 違法な時間外労働が認められた1万1,228事業場について、最も長い労働者の時間外・休日労働時間をみると、月80時間を超えていたのは4,991事業場(44.5%)だった。さらに月100時間超は2,842事業場(25.3%)、月150時間超は554事業場(4.9%)、月200時間超は111事業場(1.0%)だった。

 月80時間という水準は、過重労働による健康障害を防ぐうえで重要な目安となる。脳・心臓疾患の労災認定基準では、発症前2~6か月の月平均でおおむね80時間を超える時間外労働があった場合などに、業務と発症の関連性が強いと評価される。また、時間外労働の上限規制でも、時間外・休日労働の複数月平均を80時間以内とする基準が設けられている。

健康障害防止措置の未実施は20.3% 労働時間の把握にも課題

 健康障害防止措置については、法令違反として未実施が認められた事業場が20.3%あったほか、措置が不十分として改善を指導した事業場は43.9%に上った。後者は法令違反とは別の区分で行われた指導であり、両者の割合は単純に合算できない。さらに、労働時間の把握が不適正として指導した事業場も4,045事業場(13.9%)あった。

 長時間労働対策では、時間外労働を削減するだけでなく、労働時間を適切に把握し、必要に応じて長時間労働者に対する医師による面接指導など、健康確保措置につなげることが重要になる。産業保健スタッフにとっても、労務管理部門と連携し、自事業場における労働時間の把握方法や長時間労働者への対応が適切に機能しているか、改めて確認したいところだ。
 勤怠記録と実際の勤務状況に乖離が疑われる場合の確認方法や、医師による面接指導の対象となる労働者の把握、実施後の医師の意見を踏まえた対応なども点検のポイントとなる。

勤怠記録の過少申告と残業削減の好事例

 今回の指導結果報告には、労働基準監督署が指導した事例3件と、長時間労働削減のための自主的な取組事例2件が添付されている。

 指導事例の一つであるソフトウェア業(約400人)では、プロジェクトリーダーとして働いていた労働者について、長時間労働を原因とする脳出血で死亡したとして労災請求が行われ、立入調査が実施された。調査では、最長125時間の違法な時間外・休日労働に加え、休日出勤の過少申告も確認された。

 勤怠システムは自動反映された入退室時間を後から修正できる仕様で、事業場はシステム改修や業務の見直しを行い、違反を解消した。勤怠記録の修正そのものではなく、修正履歴や理由を確認し、実際の労働時間と記録との乖離を防ぐ仕組みが重要になる。

 一方、自主的な取組事例として紹介された化粧品等の製造販売業者では、ICT環境の整備やRPA(Robotic Process Automation)を活用した200以上の業務(例:受注の自動化、労務管理上の形式チェック・従業員への通知など)の自動化、業務内容に応じた働き方の選択などを進めた。こうした取組により、月平均残業を35時間(平成23年)から5時間48分(令和6年)に減らしたという好事例なども紹介されている。

 こうした指導事例や好事例なども自社の取組点検の参考になるだろう。

関連動向:2026年9月から監督指導の運用を見直し

 2026年9月1日から、長時間労働に関する監督指導の運用が見直された。時間外労働の上限規制そのものは変更されておらず、一般的な業種では、原則として月45時間・年360時間、特別条項付き36協定の場合も年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内などの上限は引き続き適用される。なお、一部の業務には特例がある。

 一方、監督指導では、時間外・休日労働時間数のみに着目して一律に月45時間以内への削減を求める指導が見直され、36協定で定める健康・福祉確保措置の実施状況を重点的に確認し、事業場の状況に応じた指導を行うことになった。重大・悪質な法令違反への厳正な対応や、健康障害のおそれが高い場合に必要な指導は継続される。時間外労働の削減だけでなく、長時間労働による健康障害を防ぐための措置が適切に講じられているかという視点が、これまで以上に重要になっている。

 なお、今回公表された令和7年度の監督指導結果は、2025年4月から2026年3月までの実績であり、9月の運用見直し前のものである。

 厚生労働省では、今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行うとともに、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を実施するとしている。

参考資料

長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果を公表します|厚生労働省
時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します|厚生労働省
長時間労働削減に向けた取組|厚生労働省
過重労働による健康障害を防ぐために|厚生労働省
脳・心臓疾患の労災補償について|厚生労働省
過重労働解消キャンペーン|厚生労働省

[保健指導リソースガイド編集部]