アルコール・減酒指導基本リファレンス
保健指導の現場でお役立ていただける、アルコールに関する基本情報や政策、減酒支援で役立つ情報・ツールを掲載しています。
用語・ツール
AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test:アルコール使用障害同定テスト)
1990年代初めに、世界保健機関(WHO)がスポンサーになり作成されたスクリーニングテスト。このテストは、簡易介入の対象者をスクリーニングする目的で作成されました。その対象者とは、アルコール依存症までには至っていない「危険な飲酒」や「有害な使用」レベルにある人です。
AUDITは多くの国で使用されていますが、地域・年齢・性の違いを超えて高い妥当性が報告されています。
[参考:厚生労働省e-ヘルスネット「AUDIT」]
減酒支援(Brief Intervention:ブリーフインターベンション)
対象者の特定の行動(この場合は飲酒行動)に変化をもたらすことを目的とした短時間のカウンセリング。「危険な飲酒や有害な飲酒に対するスクリーニング(AUDIT)およびブリーフインターベンション」は、WHOが2011年に採択した「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」において推奨されています。
[参考:厚生労働省「保健指導におけるアルコール使用障害スクリーニング(AUDIT)とその評価結果に基づく減酒支援(ブリーフインターベンション)の手引き」]
基準飲酒量(ドリンク)
飲酒量を純アルコールに換算してわかりやすく表示する方法が多くの国で行われています。その基準となるのが、「standard drink(基準飲酒量またはドリンク)」で、各国で定められています。 わが国では、従来、基準飲酒量として「単位」を使用してきました。1単位はおよそ日本酒1合に相当し、約20gのアルコール量です。しかし、基準飲酒量は飲酒の最小単位と捉えられることが多く、この量は関連問題の予防の観点から多すぎると考えられます。また、国際的にも、わが国の「単位」は突出して高いため、近年、1ドリンク = 10gという基準量が提案され、使用されています。
5%のビールの中ビンまたはロング缶1本(500mL)に含まれている純アルコール量は、アルコールの比重も考慮して、以下のように計算します。
500(mL) × 0.05 × 0.8 = 20(g) ※「2ドリンク」となります。
酒の量(mL) × 度数または% / 100 × 比重 = 純アルコール量(g)
ABCDプログラム(Alcohol Brief Counseling for Drinkers program)
お酒の飲み過ぎによって生じるさまざまな健康被害に対しては、飲酒量を減らすことを目的とした短時間の面接(減酒支援)が有効な手法とされており、国内外の諸研究によってその効果が立証されています。
ABCDプログラムは、日本での標準的な減酒支援プログラムとして開発されたものです。
[参考:依存症対策全国センター「すぐに使える減酒支援の手引き:ABCDプログラム」]
減酒治療
近年、いきなり飲酒をやめることはできなくても減酒をする、もしくは、断酒の前の中間目標として飲酒量を減らす減酒治療が注目されています。
減酒治療は、病気の理解を深める「導入期」、治療の継続を目指す「治療開始時」、現状を維持して再発を防ぐ「維持管理期」の3つのステージがあります。
[参考:減酒.jp「減酒治療について」]
奈良宣言
近年、ウイルス性肝疾患による死亡者が年々、減少傾向にある一方で、生活習慣病を基盤とするいわゆる脂肪肝を基礎疾患とする肝疾患が増加しています。
日本肝臓学会による「奈良宣言2023」は、健康診断等でALT>30であった場合、まずかかりつけ医等を受診し、かかりつけ医と専門医の診療連携による肝疾患の早期発見・早期治療に繋げることを目的としたものです。
[参考:日本肝臓学会「奈良宣言特設サイト」]
基本情報と調査・統計
アルコールについて
厚生労働省e-ヘルスネット「飲酒」アルコール健康障害対策(厚生労働省)
※参考:アルコール健康障害対策基本法(e-GOV法令検索)アルコール関連問題啓発週間(厚生労働省)
健康日本21(第三次)(厚生労働省)
※参考:健康日本21におけるアルコール対策健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(厚生労働省)
アルコール健康障害の発生を防止するため、国民一人ひとりがアルコールに関連する問題への関心と理解を深め、自らの予防に必要な注意を払って不適切な飲酒を減らすために活用されることを目的として、2024年2月に公表されたガイドラインです。
国民健康・栄養調査(厚生労働省)
酒のしおり(国税庁)
「酒税収入の累年比較」「酒類課税数量の推移」などが閲覧できます。
アルコール健康障害に係る地域医療連携等の効果検証および関係者連携会議の実態調査に関する研究(筑波大学健幸ライフスタイル開発研究センター)
事業成果として「健康診断および保健指導におけるアルコール健康障害への早期介入に関するガイドライン」「医療機関でのアルコール健康障害への早期介入と専門医療機関との円滑な連携に関するガイドライン」「地域におけるアルコール関連問題への対応と医療との円滑な連携に関するガイドライン」や、好事例集などが掲載されています。
アルコール対策関連団体
独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター
アルコール依存症の治療を行っている医療機関。うつ病や統合失調症などの精神疾患にも対応しています。アルコール症全体にわたる研究、教育、予防、情報を提供しています。
依存症対策全国センター
アルコール健康障害、薬物依存症、ギャンブル等依存症など、さまざまな「依存症」に関する情報と、相談窓口などを紹介しています。
公益社団法人 アルコール健康医学協会
昭和55年に設立されて以来、40年にわたり、「適正飲酒の普及・啓発」と「20歳未満の者の飲酒防止」を二つの柱として活動している団体です。
特定非営利活動法人 アスク
アルコールをはじめとする依存性薬物の問題の予防に取り組んでいる団体です。アルコール・薬物問題の電話相談や各種調査、キャンペーンなどを行っています。
NPO法人 ソーバーねっと
依存症からの回復を支援するウェブサイトです。全国の断酒支援グループや各地で開催されるミーティング情報が掲載されており、どなたでも検索することが可能です。[サイト紹介:運営・海野 順先生のコメント入り]
日本生活習慣病予防協会
「一無、二少、三多(※)」のスローガンを掲げ、わかりやすい生活習慣改善法を提示し、その普及、実行に努めている団体です。ポスター・リーフレット等の啓発資材配布などを行っています。
※一無:禁煙 二少:少食、少酒 三多:多動、多休、多接
企画・制作:保健指導リソースガイド
提供:大塚製薬株式会社
SL2411005(2024年11月改訂)