02 産業保健師の1日
キャリアステージ別 産業保健師の1日のスケジュール
産業保健師として働く毎日は、どのようなものなのでしょうか? このページでは、新人・中堅・ベテランという異なるキャリアステージにある産業保健師の「1日」を紹介します。 実際のスケジュールや業務内容を知ることで、産業保健師という仕事のリアルな一面が見えてきます。 それぞれにどんな違いがあり、どんな成長を描けるのか。 ご自身のこれからを思い描くヒントとして、ぜひ参考にしてください。

A保健師【新任期】
経験年数2年目 職場環境大規模製造業/保健師複数職場/非常勤産業医週2回来所
担当業務定期健診・特殊健診・健診事後フォロー、職場巡視、安全衛生委員会事務局
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8:00朝会(業務の予定を共有)
毎朝3名の保健師と一日の業務について共有。
気になる業務や対象者についてもこの場で話題に出し、アドバイスを受けたり必要に応じて打ち合わせや相談時間を決定する。 -
8:30職場巡回(担当現場の研究室)と報告記録
定期巡回に併せて、前回相談を受けた室内の温度管理について調査。
産業医の意見と共に職場に報告した。職場からも了解の返事をもらった。 -
9:30午後からの事後フォロー対象者との面談準備
定期健康診断結果の事後フォローとして、有所見者への保健指導のための資料を朝から準備。面談内容も整理した。
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11:00「安全衛生委員会」の資料作成の打ち合わせ
先輩と、定期健康診断結果の報告内容や報告方法、資料作成について打ち合わせ。
気付いていなかった点をアドバイスしてもらえた。 -
11:30昼食
いつものように食堂で社員と一緒に食事。今日はBランチ(お魚)にした。
一緒に働く仲間として、もっと身近に感じてもらえるといいな。 -
12:30社員面談場所の準備
電話対応1件 -
13:00社員面談(4名) 面談の記録
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15:30小休憩後、人事部門に個人的な書類を持参
社員面談が終わったので、気分転換をかねて少し離れた場所まで移動。 人事担当者との話も新鮮。
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15:50「安全衛生委員会」の資料作成
まずは必要なデータや資料を確認。先輩からのアドバイスを参考に、資料案の構想を練る。毎月1回(以上)開催するから、結構大変。
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16:50退社
業務終了。先輩には明日も資料作成を頑張ると報告した。
<経験年数2年目・・・【新任期】のポイント!>
- いまは自立の準備期間。
- 信頼関係がよりよい面談に繋がるので、「社員に覚えてもらうこと」「自分が社員を知ること」も大切。
- 分からないことをそのままにせず、先輩や周りを頼ることにも慣れていく。

B保健師【中堅期】
経験年数7年目 職場環境中規模サービス業/保健師一人職場/非常勤産業医月2回来所
担当業務産業保健業務全般。人事部所属で、メンタルヘルス対策(休復職者対応)を占める割合が高い。
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9:00メールチェック 産業医来社日のため準備
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9:30産業医来社 職場巡視に産業医と同行
産業医と本日の予定を共有したあと、社屋内巡視に同行。 指摘事項は忘れないようにメモで残しておく。
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10:00「安全衛生委員会」に産業医と同席
あらかじめ、空気環境測定結果や、労災(階段踏み外し)状況等の手持ち資料を産業医に共有しておいた。
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11:00産業医面談に同席 面談実施者は2名(ストレスチェックで高ストレス者)
産業医への組織図提示、組織の基本情報共有。 1名の所属組織は現在人員欠員があり、補充できていない。
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12:00産業医から面談実施者の意見書を受け、今後の対応について話し合い
人事の上司への報告内容の確認と、面談者の所属組織の職場環境について情報収集することを話し合った。
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12:30産業医退勤 昼食
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13:30巡視結果と面談結果について、上司への報告準備メールにて報告完了
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14:10メールチェック 面談希望者の日程調整等
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14:30組織上司より、部下についての相談対応・記録
復職後の部下の状況報告と今後の対応について相談対応を行った。
産業医による復職後面談の提案と、日程調整。 -
15:20予約のない社員が来所 面談対応
面談の予約はなかったが、社員が1人来所。 健診結果の精密検査受診先について相談があり、専門医を一緒に探した。
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16:00部内定例会
来年度のメンタルヘルス研修について話し合い。 全社員に対するセルフケアと、管理監督者研修の具体的な実施計画をすることとなった。
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17:00メールチェック
職場でのストレスケア研修会の案内メールが届いていた。 久々に受講しようかな。
以前、セミナーで知り合った保健師Tさんも誘ってみよう! -
17:30退社
<経験年数7年目・・・【中堅期】のポイント!>
- 自立した状態、会社全体を把握、長期的な目線で対策を考えることができる。
- 研修会やセミナーに参加することで、仲間を見つけることができる。
- 悩んだときに相談できる相手がいる環境づくりは大切。積極的に参加しよう!

C保健師【ベテラン期】
経験年数16年目 職場環境大企業運輸業/保健師複数職場/常勤産業医複数
担当業務産業保健全般。部内保健師のサブリーダー・育成担当。会社からは対外活動も許可されている
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9:00上司に「リモート業務開始」の報告メールチェック
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9:30後輩から昨日実施した面談結果について相談(オンライン)
産業保健師3年目の後輩から、健康増進企画への参加者との面談の中で質問にうまく答えられなかったと相談があった。解決に役立つ参考文献と支援の具体策をアドバイスする。
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10:10健康診断事後のフォロー面談・記録(オンライン)
担当職場の管理職との面談を行った。 業務の進捗が難航しているらしいので、残業の様子なども併せて情報収集する予定。
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11:20健診結果のデータを確認 ニュースレターの執筆準備
所属している学会からニュースレターへの寄稿を依頼され、執筆準備に取り掛かる。
まずは関連データを確認。 -
12:10昼食
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13:30データ探しに難航・・・同僚に電話
午前中からデータを整理しているが、欲しいデータが見つからず同僚に相談。 ついでにまとめ方のアドバイスも得られた!
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13:50産業医から連絡
産業医から、担当職場のXさんについて情報提供の依頼があった。 そのまま健康管理システム内の記録を確認しながら対応。
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14:05再び健診結果のデータを確認、執筆準備
原稿の締め切り期日が迫っているのでちょっと焦り気味。
でも、今週末には執筆にとりかかれそう。 -
15:30教育実習生の受け入れについて上司と打ち合わせ(オンライン)
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16:10教育実習の計画作成
今回はN保健師の出身大学の学生なので、N保健師に活躍してもらえるよう内容を工夫してみた。明日これをN保健師に話してみよう。
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18:05業務終了を上司に報告
計画作成中に電話が3回来た。気が付いたらこんな時間になっていた。
<経験年数16年目・・・【ベテラン期】のポイント!>
- 産業保健師としてできること・求められることが大きく広がる。
- 蓄えた経験値とスキルを使って、会社への貢献だけでなく、業界の発展につなげることができる!
まとめ
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ここでご紹介した「1日」のスケジュールは、あくまで一例にすぎません。実際には事業場の規模や業種、健康課題によって、産業保健師の仕事内容や役割は大きく異なります。
しかし、どの現場においても共通しているのは、産業保健師としての日々の業務が、事業場全体の健康支援に密接に関わっているということです。
入職から間もない時期は、目の前の業務をこなすことで精一杯かもしれません。しかし、徐々に経験を積み、知識を深めていくことで、個別対応だけでなく組織全体を俯瞰する視点も持てるようになります。日々の業務の中で自分のできることを増やしながら、専門性を高めていくことが産業保健師としての理想的な成長の姿ではないでしょうか。
あなたの産業保健師としてのキャリアが、充実したものになることを願っています。
制作:「産業保健師のコンパス」編集チーム