働く世代で見つかる「心房細動」は腎機能低下のサイン? 広島大学らの研究グループが分析
広島大学大学院医系科学研究科の福間真悟教授ら広島大学、京都大学、宮崎大学の研究チームはこのほど、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入する就労世代の健康診断および医療データを分析し、不整脈の一つである「心房細動」が新たに見つかった人では、その後の腎機能の低下スピードが速まることを明らかにした。
心房細動は脳梗塞や心不全の原因として知られるが、今回の研究では心臓だけでなく腎臓の機能低下とも関連する可能性が示された。
研究チームは、健診で心房細動を指摘された場合は単なる心電図の異常と捉えず、全身の健康を見直すきっかけにすることが重要だとしている。
心臓と腎臓の「悪循環」を防ぐ早期発見の重要性
不整脈の一つである心房細動は脳梗塞や心不全の重大な原因となることが知られ、健康診断で偶然見つかることもある。研究チームは先行研究で、働く世代で見つかった心房細動が、将来の脳梗塞リスクが5倍、心不全リスクが18倍高まる徴候であることを報告した。
医療の現場では近年、心臓病、腎臓病、肥満や糖尿病などの代謝疾患が互いに悪影響を及ぼし合い、全身の臓器障害を進行させる「CKM(心血管・腎・代謝)症候群」という考え方が重視されている。しかし、働く世代で新たに見つかった心房細動が、心臓そのものだけでなく「腎臓」にどのような悪影響を及ぼすのかは、これまで大規模なデータで検証されていなかった。
そこで研究チームは今回、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入する就労世代の健診記録(2015〜2023年)を用い、過去に心血管疾患や末期腎不全のない35〜59歳の男女約770万人を対象に分析した。
このうち、健診で新たに心房細動が見つかった2万3510人と、年齢や性別などの条件を揃えた心房細動のない11万7550人を比較。心房細動が見つかった後、腎機能を示す指標であるeGFR(推算糸球体濾過量)がどのように変化するかを調べた。
分析の結果、心房細動が見つかった人は、見つからなかった人に比べて、その後の腎機能の低下スピードが速いことがわかった。心房細動が見つかる前の低下スピードには両群で差がなかったことから、研究チームは、心房細動の発症が腎機能低下の引き金になった可能性があるとしている。
また腎機能が基準時から30%以上低下するリスクも、心房細動が見つかった人は高かった。心房細動が見つからなかった人と比べると、そのリスクは約3倍に達する。
さらに心房細動が初めて確認された後、1年後の健診などで正常な脈である洞調律に戻っていた人は、心房細動が続いていた人に比べて、腎機能の低下スピードが緩やかだったこともわかった。
今回の研究により、働く世代で見つかる心房細動は、腎機能の低下とも関連することが示された。研究グループは「心房細動がCKM(心血管・腎・代謝)症候群の進行を早めるシグナルであることを示唆している」と指摘。若い世代で心房細動が見つかった場合、心臓だけでなく全身の健康を見渡した早期介入の効果を検証していくことが重要だとしている。
また、心房細動に限らず、心臓に生じる軽微な異常を、CKM症候群の初期症状として捉える視点も必要だと言及。「健康診断で心房細動を指摘された場合は、医療機関を受診することが重要です。直接不整脈を治す薬や手術だけでなく、血圧や血糖のコントロールなど生活習慣の見直しが、将来の心臓の健康や慢性腎臓病の予防につながります」と述べている。
【研究成果】働く世代で見つかる「心房細動」は腎機能低下のサイン ―心臓と腎臓の「悪循環」を防ぐため、早期発見が重要― (広島大学/2026年5月19日)本サイトに掲載されている記事・写真・図表の無断転載を禁じます。


