働き盛り世代の歯科健診を後押し 簡易な口腔スクリーニング活用を提案 厚労省検討会が中間とりまとめ(案)
歯科健診を受けた人の割合は6割程度にとどまり、特に働き盛り世代で低い水準が続いている。厚生労働省の「歯科健診等のあり方等に関する検討会」は6月22日に開いた第2回会合で、簡易な口腔スクリーニングを活用した歯科健診等のあり方を整理した「中間とりまとめ(案)」を示した。
歯科医師による口腔内診査を伴う従来型の健診が難しい場合にも、歯科受診や継続的な口腔健康管理につなげる仕組みを提案している。
歯科健診の受診割合は63.8% 働き盛り世代で低水準
口腔の健康は、食べる、話すといった日常生活を支えるだけでなく、糖尿病や循環器疾患など全身の健康とも深く関係することが知られている。このため国は「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項(第二次)」で、令和17年度までに「過去1年間に歯科検診を受診した者の割合」を95%まで引き上げる目標を掲げている。
しかし、令和6年歯科疾患実態調査では受診率は63.8%にとどまる。学校歯科健診が実施される年代では高いものの、10代後半以降に低下し、20~39歳で低水準となるほか、男性では60代後半まで低い状態が続く。厚生労働省によると、第3次産業の就労者を対象にした研究では、健診を受けない理由として「時間がない」が半数を超えたとの報告もあるという。
こうした現状を踏まえ、中間とりまとめ(案)は、現役世代が受診しやすく、事業主や医療保険者、自治体も導入しやすい新たな仕組みを提示した。
「簡易な口腔スクリーニング」という選択肢
歯科医師が口腔内を直接診る従来型の健診が難しい場合の選択肢として示されたのが、唾液中のヘモグロビンを検出し、歯周病の疑いを調べる体外診断用医薬品を使った「簡易な口腔スクリーニング」だ。ただし、この検査だけで歯周病を診断できるものではなく、う蝕などの口腔疾患を評価するには質問紙等を併用する必要がある。
現時点では、この歯周病スクリーニングに加え、質問票を用いてう蝕や口腔機能、自覚症状などを確認し、その結果をもとに歯科医師が歯科医療機関での精密検査の必要性を判断する「簡易歯科健診(仮称)」が示された。
一方、体外診断用医薬品による歯周病スクリーニングの結果に基づき、歯科医師等が歯周病の疑いを評価し、歯科医師等以外の者が質問紙等による口腔チェックを行う「歯周病スクリーニング健診(仮称)」も整理されている。
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出典:「歯科健診等のあり方等に関する検討会(第2回) 資料2」(厚生労働省)
歯科受診への「入口」として位置付け
従来の歯科健診は、歯科医師による口腔内診査を基本としてきた。一方、今回示された仕組みは、歯科医師による診査が難しい場合でも、既存の健診を活用しながら歯科受診へのきっかけを作ろうとする点に特徴がある。
具体的には、特定健診や事業主健診、自治体健診などと同時に実施することを想定し、健診会場でその日のうちに結果を通知する方法のほか、自宅で採取した唾液を郵送して後日結果を知らせる方法も例示された。受診勧奨や歯科保健指導については、対面だけでなくオンライン、パンフレットや動画の活用なども想定している。
こうした仕組みは、健診を受ける機会が少ない現役世代に対し、既存の健康診査と組み合わせることで受診しやすい環境を整える狙いがある。モデル事業では、自治体の既存事業や事業所の健康診断と組み合わせて実施され、事業所の健康診断と同時実施した例では高い実施率が得られた。また、これまで歯科医療機関を受診していなかった人の一部に、受診行動や意識の変化も確認されている。
制度化に向け、運用方法などをさらに検証
中間とりまとめ(案)では、「簡易な口腔スクリーニングを用いた歯科健診」は、あくまで歯科医療機関での専門的な診療や口腔健康管理につなげるための「入口」と位置付けている。歯科受診を確実に促すための運用方法や、判定基準、歯周病以外の口腔疾患への対応、適切な歯科保健指導の方法などについては、今後さらに検証が必要であるとしている。
今回示された案は、生涯を通じた歯科健診の実現に向け、従来の歯科健診を実施することが難しい場合の新たな選択肢を提示したものだ。歯科健診を「受けること」をゴールとするのではなく、歯科受診や継続的な口腔健康管理へつなげることを目指した点が注目される。
こうした生涯を通じた歯科健診の実現に向けた検討が進むなか、7月23日、厚生労働省は「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~」を公表した。同プランでは「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)」の実現に向け、令和9年度から自治体・医療保険者の双方で、簡易検査ツールを活用した方法を「簡易歯科健診」と位置付け、制度化を進める方針を示した。
スクリーニング検査の判定基準や運用条件、適切な歯科保健指導・受診勧奨の方法などについては、さらなる検証が必要とされている。現役世代の受診率向上につながる実効性ある仕組みとなるか、今後の動向が注目される。
参 考
歯科健診等のあり方等に関する検討会|厚生労働省
第2回歯科健診等のあり方等に関する検討会|厚生労働省
「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~ : Understand, Exercise, Nourish and Optimize for Better Health」 を公表します|厚生労働省(2026年7月23日)
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