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街並みの「囲まれ感」は不眠の少なさ・睡眠時間の長さと関連 AI画像認識で住環境と睡眠健康を分析

 睡眠不足や不眠症状は、多くの人が抱える健康課題である。関連要因としてストレスや生活習慣の乱れが挙げられることが多いが、自宅周辺の「街並み」の見え方や印象も、睡眠健康と関連する可能性が示された。

歩く人の目線から見える街並みをAIで評価

 心身の健康において、質の良い睡眠が不可欠であることは周知の事実である。近年、緑の多さや騒音の少なさといった住環境が睡眠に影響することは知られていた。しかし、これまでは「緑の量」など単一の要素に注目した研究が多く、実際に人が街を歩く目線(アイレベル景観)からの総合的な見え方や、「安全そう」「美しい」といった主観的な印象が睡眠にどう影響するかは、ほとんど明らかになっていなかった。

 大阪公立大学大学院生活科学研究科の松下大輔教授らの研究グループは、AI画像認識技術を用いて、自宅周辺の景観とその印象が睡眠に与える影響を調査した。その結果、街並みの「囲まれ感」や、そこから推定される「安全感」が、不眠症状の少なさや睡眠時間の長さと関連することが示された。本研究成果は、2026年5月7日に国際学術誌「Building and Environment」にオンライン掲載された。

 本研究では、東京都心に通勤する40~59歳の勤労者1,089人を対象に調査を実施した。まず、対象者の自宅周辺のGoogleストリートビュー画像約21万枚をAIに読み込ませ、「囲まれ感(建物や樹木など垂直方向の要素が視界に占める割合)」「緑視率」「視覚的な歩きやすさ(歩道や防護柵などの充実度)」といった客観的な特徴を数値化した。

 さらに、世界規模の街並み印象評価データを機械学習モデルに学習させ、日本の街並み画像からも「安全感」「活気」「美しさ」という主観的印象を自動推定できるようにした。これらと、アテネ不眠尺度などを用いた睡眠状態との関係を統計的に分析した。

「囲まれ感」「安全感」は不眠症状や睡眠時間と関連

 分析の結果、建物や樹木によって視覚的に「囲まれ感」のある街並みに住む人ほど、不眠症状が少なく、睡眠時間が長いことが示された。また、印象評価データから推定された「安全感」のある街並みに住む人ほど、睡眠時間が長いことも分かった。

 さらに本研究では、緑が睡眠時間と直接関連するというよりも、「安全感を高めること」を経由して睡眠時間を延ばす可能性が示唆された。一方で、歩道や防護柵、標識などから推定される「視覚的な歩きやすさ」は、印象評価データによる推定では「安全感」の低さと関連し、結果として睡眠時間を短くする可能性が示された。

健康的な都市づくりや住環境評価への示唆

 本研究結果は、健康的な都市づくりと住まい選びに対して、重要な示唆を与えている。

 都市計画の観点からは、適度な囲まれ感を生み出す建物の配置や街路樹の植栽、安全感を高める景観デザインが、住民の睡眠健康に寄与する可能性がある。特に、緑を増やすだけでなく、安全に感じられるように緑を配置することが大切である。また、視覚的な歩きやすさを追求する際には、地域の安全感を損なわないよう、防犯照明や見通しの確保などの総合的なデザインが求められる。

 住まい選びにおいては、緑の量や駅までの距離だけでなく、街並み全体の見え方や、受ける印象も、睡眠の質という観点から考慮する必要があることが示された。

 さらに本研究は、AI画像認識と世界規模のクラウドソーシングデータを組み合わせることで、広範な地域の街並みを低コストで評価できる可能性を示した。今後は、縦断的な調査により因果関係を検証することや、日本独自の印象評価データを用いてモデルを精緻化することなどが課題とされている。

参 考

街並みの「囲まれ感」が睡眠を守る ~AI画像認識で自宅周辺環境と睡眠の関係を調査~|大阪公立大学(2026年6月23日)
Urban eye-level landscapes and sleep health: Cross-sectional evidence from a megacity using machine learning for objective and perceptual assessment|Building and Environment(2026年5月7日)

[保健指導リソースガイド編集部]