少しの運動でも精神疾患による長期休業リスクが低い 労働者約4万人を9年間追跡(横浜市立大学)
横浜市立大学医学部と国立健康危機管理研究機構らの研究グループはこのほど、日本の労働者約4万人を平均9年間追跡した結果、余暇に少しでも運動している人は、運動していない人に比べ、精神疾患による30日以上の長期疾病休業のリスクが低いことを明らかにした。
さらに、仕事中によく体を動かす人も、座り仕事が中心の人に比べてリスクが低いことが分かったという。
仕事中に体をよく動かす人は座位で働く人と比較してリスクが半減
運動を含む身体活動はうつ病の予防に役立つ可能性があることが、これまでの研究で示されている。しかし、精神疾患による長期休業の予防にもつながるのか、また、どの程度の運動が必要で、少量でも効果が期待できるのかについては、十分に明らかになっていなかった。
さらに近年、身体活動が健康に及ぼす影響は、余暇や仕事など活動を行う場面によって異なる可能性も指摘されている。余暇の運動には健康上の利点がある一方、仕事中の身体活動では長時間にわたる身体的負担や十分な休息を確保しにくく、むしろ健康に悪影響を及ぼす可能性があるためだ。
こうした考え方は「身体活動パラドックス」と呼ばれ、仮説として研究が進められている。しかし、この仮説が精神疾患による長期休業にも当てはまるのかについては、十分に検討されていなかった。
そこで研究グループは余暇の運動量に加えて仕事中の身体活動にも着目し、それぞれが精神疾患による長期疾病休業のリスクとどのように関連するのかを検討。日本の企業で働く人を対象とした大規模調査のデータを使用し、追跡調査を実施した。 対象は20~59歳の労働者3万8120人(うち男性3万2298人)。健康診断時に調べた余暇や仕事中の身体活動の状況と、その後の精神疾患による長期休業との関連を分析した。
身体活動については主に2011年の健康診断時に調査し、2012年から2024年まで追跡した。長期休業は「30日以上連続して仕事を休むこと」と定義し、主治医の診断書をもとに、精神疾患を理由とする休業の有無を確認した。
その結果、平均9.2年間の追跡期間中に、1032人(2.7%)が精神疾患によって30日以上の長期休業を経験していた。 余暇の運動と長期休業の関係を調べたところ、運動をしていない人に比べ、週3.75以上7.5メッツ時未満(週1~2時間程度)の運動をしていた人では、精神疾患による長期休業のリスクが28%低いことが分かった。この運動量はWHOなどが推奨する身体活動量を下回る水準。またこの傾向は運動強度別に分析しても、関連に大きな違いは見られなかった。
さらに、仕事中の身体活動についても、座り仕事が中心の人に比べて立ち仕事や歩き仕事など、体を動かす機会が多い人ほど長期休業のリスクが低い傾向も分かった。特に仕事でかなり体を動かす人では、長期休業のリスクが50%低かった。
今回の研究から、余暇に行う運動は推奨量に満たない少量の段階でも精神疾患による長期休業のリスクの低さと関連することが示された。また、仕事中の身体活動についても、今回の対象者では長期休業のリスクを高めるという結果は認められなかった。 研究グループは、働く人のメンタルヘルス対策として、運動施設の利用支援や柔軟な勤務時間の設定など、少量からでも運動を始めやすい職場環境づくりが重要だとしている。
ただし、今回の研究は身体活動と長期休業の関連を調べたものであり、仕事での身体的負担を増やすことが健康に良いと示したものではない。また、対象者は主に一つの大企業に勤務する男性労働者で、身体活動も自己申告に基づいて評価している。このため、今後は女性や中小企業、サービス業などで働く人を含め、より幅広い労働者を対象とした検証が必要だとしている。
少しの運動でも「心の病による長期休業」リスク低下--仕事でよく体を動かす人もリスク低下--(横浜市立大学/2026年9月4日)本サイトに掲載されている記事・写真・図表の無断転載を禁じます。


