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高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施 複合的な健康課題への支援と取組の質向上を検討

 厚生労働省は2026年9月10日、「第21回高齢者の保健事業のあり方検討ワーキンググループ」を開催。高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施(以下、一体的実施)の進捗状況や今後の取組などについて議論した。

 一体的実施は令和6(2024)年度までに全国の市町村での実施を目指して取り組まれ、ハイリスクアプローチ、ポピュレーションアプローチともに、各取組の実施市町村数は増加傾向にある。全国への普及が進むなか、今回の検討では、複数の健康課題を抱える高齢者への支援や、ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチをどうつなぐかなど、取組の質の向上に向けた具体的な課題が示された。

「疾病予防・重症化予防」と「介護予防」を一体的に

 令和2(2020)年4月、「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」の一体的実施に関する規定が施行され、「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」という新たな仕組みが始まった。

 一体的実施は、後期高齢者の医療保険者である後期高齢者医療広域連合と市区町村が連携し、健康診査や医療・介護のデータなどを活用しながら、高齢者の疾病予防・重症化予防と介護予防を一体的に進める取組である。

 高齢期には、生活習慣病などの疾病だけでなく、低栄養、口腔機能の低下、身体的フレイルなど、複数の健康課題が重なりやすい。このため、個別の高齢者に対して医療専門職が支援する「ハイリスクアプローチ」と、通いの場などを活用して地域の高齢者に働きかける「ポピュレーションアプローチ」を組み合わせて取り組む。

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一体的実施における主な取組及び実施市町村数

出典:厚生労働省「第20回高齢者の保健事業のあり方検討ワーキンググループ」資料1

一体的実施は全国に広がる一方、取組内容には差

 今回のワーキンググループの会議資料では、ハイリスクアプローチ、ポピュレーションアプローチともに、各取組の実施市町村数が全体として増加傾向にあることが示された。

 また、令和7(2025)年度の実施報告書(速報値)によると、日常生活圏域における一体的実施の実施率(カバー率)は94.7%に達し、22の後期高齢者医療広域連合では100%となった。

 一方、同年度の実施状況調査(市町村票、n=1,730)を取組区分別にみると、実施市町村数には違いがある。ハイリスクアプローチでは、生活習慣病等の重症化予防や身体的フレイルに関する相談・指導が1,154市町村、健康状態不明者の状態把握・必要なサービスへの接続が1,324市町村で行われている。ポピュレーションアプローチでは、フレイル予防の普及啓発や運動・栄養・口腔等の健康教育・健康相談が1,716市町村と最も多く実施されている。

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高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施

出典:厚生労働省「第21回高齢者の保健事業のあり方検討ワーキンググループ」資料1

複数の健康課題を組み合わせて支援

 令和8(2026)年度の実施計画書(速報値)から、一体的実施の各取組区分が他区分とどのように組み合わせて計画されているかをみると、低栄養と口腔は親和性が高く、組み合わせて計画されているケースが多かった。また、身体的フレイル(ロコモを含む)は、重症化予防を含むさまざまな取組と併せて計画されている。

 重症化予防では、糖尿病性腎症とその他の生活習慣病を組み合わせて計画しているケースも多い。一方、健康状態不明者対策は、健診・医療とも未受診で、介護サービスの利用もなく、データ上健康状態を把握できない高齢者を対象とすることから、複合的な取組として計画されているケースは少ない傾向にある。

 こうした複合的な支援のあり方をめぐっては、一体的実施と関連して開催されている「高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン第3版の充実に向けた有識者会議」(第1回会議は2026年8月開催)でも議論が進められている。同会議では、専門職が専門外の領域への対応に苦慮しているという実務上の課題や、ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチが別々に実施される傾向があるため両者の連動を具体的な事例で示す必要性などについて意見が示され、今回のワーキンググループにもその状況が報告された。

取組の「質」と「効果」の把握へ

 会議資料では、令和8(2026)年度の一体的実施実施状況調査について、10月配布・11月回収、令和9(2027)年3月末の報告書公開という予定が示された。取組の「量」に加え、「質」の向上に留意した実態把握を目指し、設問の見直し案も示されている。

 複合的なリスクへの対応に加え、ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチの接続・連動についても把握する方向が示された。例えば、個別支援の対象者を通いの場につなぐ、あるいは通いの場で把握した高齢者を個別支援につなぐなど、両者を連動させる取組である。

 さらに、庁内外の関係機関との連携、人材確保、専門職への研修や相談体制、事業評価なども調査項目として検討されている。

 全国への普及が進むなか、今後の調査では、どれだけの自治体が実施しているかという「量」の把握に加え、複合的な健康課題を持つ高齢者をどのように把握し、必要な支援につなげているのか、そして事業の評価や効果を捉えていく方針が示された。

参考資料

第21回高齢者の保健事業のあり方検討ワーキンググループ 資料|厚生労働省
高齢者の保健事業のあり方検討ワーキンググループ|厚生労働省
高齢者の保健事業について|厚生労働省

[保健指導リソースガイド編集部]