ニュース

薬局の調剤データを活用したインフルエンザ速報で流行抑制の可能性

 長崎大学の研究グループがこのほど、調剤情報共有システム「おくすりネット」の情報をもとに医療施設や学校などにインフルエンザ速報を配信している長崎県五島市で、配信システム導入前後の患者報告数を分析。

 その結果、システム導入後、五島市は長崎県内の他の市町村と比べて、インフルエンザ患者報告数の増加が有意に抑えられていたことが分かった。

インフルエンザの流行を抑制する可能性

 長崎大学は2014年、五島市、五島薬剤師会、メディカルアイ株式会社と共同で、五島市調剤情報共有システム「おくすりネット」を立ち上げた。これは市内すべての調剤薬局の情報をクラウド上で一元管理・共有することで服薬指導の充実を図るもの。

 全国の定点医療機関からの報告をもとに、インフルエンザの流行状況が週単位で公表されているが、実際の流行から発表までには、数日の時間差が生じている。そこで五島市では2015年から「おくすりネット」に蓄積されたインフルエンザ治療薬の調剤情報を活用し、調剤件数を医療・福祉施設や学校などへ速報として毎日自動配信する取り組みを開始した。

 研究では、2007~2008年シーズンから2018~2019年シーズンまでの、長崎県内の定点医療機関におけるインフルエンザ患者報告数を分析。速報システムを導入した五島市と導入していない県内の他の市町村を比較し、導入前後で患者報告数がどのように変化したかを調べた。

 その結果、2016-2017年と2017-2018年の各シーズンでは、五島市の定点当たり患者報告数のピーク値が、他の地域の平均ピーク値の半分未満だった。

 また、長崎県全体ではインフルエンザ患者報告数が増加傾向にあった一方、五島市では、他の地域と比べて増加が有意に抑えられていた。同様の傾向は、15歳未満と勤労世代である20~69歳の年代別の分析でも確認された。 研究グループは、リアルタイムの調剤データを用いた速報システムが、島しょ地域におけるインフルエンザの流行を抑制する可能性が示されたとしている。また、全国の定点医療機関による流行情報を補う、より即時性の高い情報源としての活用も期待されるという。

 一方、人口動態や医療機関の受診行動などシステム以外の要因が結果に影響した可能性もある。五島市ではシステムの導入前から他の市町村と比べて患者報告数が低下する傾向もみられたことから、研究グループは結果を慎重に解釈する必要があるとしている。

長崎県五島市で調剤情報共有システム「おくすりネット」を活用したインフルエンザ速報システムの効果を検証した論文が公開(長崎大学/2026年7月14日)

[yoshioka]