スマホ上での仲間同士の励まし合いが高齢者の歩数増加を促す(千葉大学)
千葉大学予防医学センターの研究チームがこのほど、高齢者向けスマートフォン講座の受講後、仲間同士で励まし合うアプリを使ってもらうことで、日常の歩行量が増加するかを検証。
12週後、アプリを入れた高齢者の1日平均歩数は、アプリを入れなかった高齢者に比べて約580歩増加することが明らかになった。この結果から、今後の介護予防施策や自治体のデジタル施策への応用が期待されるという。
歩数増加につながる結果に
高齢期における身体活動の低下を防ぐため、ウォーキングは有効な手段の一つで、歩数を増やす動機づけなどにはICTやアプリの活用も重要だと考えられている。特に行動科学や社会疫学部の分野では、年齢や立場が近い人同士で励まし合ったり、情報共有をしたりする「ピアサポート」の仕組みが、行動の継続を促進することが知られる。
そこで、千葉大学予防医学センターの中込敦士准教授らの研究チームは、スマートフォンアプリ上で歩数目標や日常の活動を共有し、互いに声を掛け合う「デジタルピアサポート」をスマホ講座に組み込み、2023年9月から2024年9月にかけて、アプリの利用者と非利用者を比較した。
研究対象は東京都墨田区と千葉県千葉市在住の60歳以上の高齢者156人で、無作為化比較試験を実施。これは無作為に介入群と対照群に割り付けて比較する研究手法で、今回は個人ではなく、3〜5人のグループ(クラスター)単位で割り付けを行い、仲間同士の影響が結果に及ぼす効果を適切に評価したという。
デジタルピアサポートアプリを利用してもらったのは20グループの80人。仲間同士で歩数目標を共有したり、写真やメッセージで励ましあったり、グループ内で進捗状況を可視化したりするなどした。
一方、それ以外の20グループの76人は、基本的なスマホ操作を講習で学習し、各自でメールやLINEの送受信、インターネット閲覧、自治体公式アプリの利用などができるような状態だったが、ピアサポートアプリの利用はない。
全ての参加者に歩数計測アプリで歩数を計測してもらった結果、デジタルピアサポートアプリを用いた群では、アプリ非利用者の群に比べて、1日平均歩数は1週後に433歩、12週後に579歩増加。特に80歳以上の高齢者で歩数増加の効果が大きい傾向が見られた。またスマホを「ほぼ毎日利用する」高齢者の割合も優位に増加した。
自治体の介護予防や地域づくりにも重要なポイント
中込准教授は、ICT機器の利用状況によって社会的・経済的格差が生じる、いわゆる「デジタルデバイド」が高齢者には大きな問題となっている、と指摘したうえで、「高齢者の身体活動促進とデジタル活用支援を同時に進めることが、自治体の介護予防や地域づくりにおいて重要」と解説。
今後は、介入効果の長期的な持続性を検証するとともに、エビデンスに基づいたデジタル活用支援を、自治体の介護予防や地域施策の中で実装・普及していくことを目指していくという。
スマートフォンの「仲間同士の励まし合い」が高齢者の歩行量を増やす―ピアサポートアプリを組み込んだスマホ講座で、12週後の歩数が有意に増加―(千葉大学/2026年3月25日)本サイトに掲載されている記事・写真・図表の無断転載を禁じます。


