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聴力が低下した高齢者が孤独・要介護に 高齢者の孤独・孤立対策では難聴ケアも必要

 聴力が低下している高齢者は、そうでない高齢者に比べ、孤独になりやすく、要介護状態になる割合が高いことが、国立長寿医療研究センターの調査で明らかになった。

 難聴の重症度が高いことに加えて、▼男性、▼教育年数が少ない、▼現在は仕事をしていない、▼1人暮らし、▼運動習慣がない、▼うつ傾向がある、といった特徴のある人は、孤独を感じやすいことも示された。

 聴力低下は、老年症候群の症状のひとつ。他者とのコミュニケーションを制限し、うつ病や孤独感などを引き起こす危険因子であることが知られている。

 聴力低下のある人は、耳鼻科などの関連診療科を通じて、診断を受けた後に、補聴器の装着など適切な対応を早期にする必要があるとしている。

聴力低下は老年症候群のもっとも一般的な症状

 聴力低下は、老年症候群のもっとも一般的な症状のひとつで、他者とのコミュニケーションを制限し、うつ病や孤独感など、さまざまな精神心理症状を引き起こす危険因子であることが報告されている。難聴は、身体的・社会的フレイルとも関連する。

 そこで国立長寿医療研究センターは、加齢にともなう聴力低下が、孤独感と要介護状態の新規発生に与える影響について検討した。

 同センターが実施している、老年症候群のリスク把握や効果的な対処方法を明らかにするために実施している大規模コホート研究「NCGG-SGS」に参加した、愛知県東海市に在住している65歳以上の高齢者5,563人を対象に、聴力低下の有無により層別化し、孤独感と要介護状態の新規発生との関連を縦断的に分析した。

 その結果、聴力低下のある高齢者では、孤独感がある場合、要介護状態の新規発生が1.7倍に上昇した(95%信頼区間1.05~2.81)。その一方で、聴力低下がない高齢者では、要介護状態の新規発生者数に有意な差はみられなかった。

 「今回の研究では、聴力低下のある高齢者は、聴力低下のない高齢者に比べ、要介護状態の新規発生の割合が高いことが示されました。とくに、聴力低下のある高齢者では、孤独感が要介護状態の新規発生と関連することを見出した点が特徴となります」と、研究者は述べている。

 「聴力低下は、老年症候群のもっとも一般的な症状です。地域在住高齢者の介護予防戦略では、とくに聴力低下のある高齢者に対して、さまざまな危険因子のなかでも孤独感に、特別な注意をする必要があると考えられます」としている。

高齢者の孤独感と潜在的な交絡因子との関連
▼男性、▼教育年数が少ない、▼現在は仕事をしていない、▼1人暮らし、▼運動習慣がない、▼難聴の重症度が高い、▼うつ傾向がある、といった特徴のある高齢者は孤独を感じやすい


対象者全体(4,739人)を二項ロジスティック回帰で分析

聴力低下のある高齢者では、孤独感がある場合、要介護状態の新規発生が高い
聴力低下の有無で層別化した孤独感と要介護状態発生のカプランマイヤー生存曲線

出典:国立長寿医療研究センター、2023年

高齢者の20%に聴力低下 要介護状態の新規発生は8.3%

 研究は、国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センターの冨田浩輝研究員、島田裕之センター長らの研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Otolaryngology-Head & Neck Surgery」に掲載された。

 近年、社会的孤立や孤独は、身体的・精神的疾患などの健康問題と関連し、医療・介護コストを増大させることが指摘され、喫緊の課題として世界的に注目されている。

 日本でも、2021年に「孤独・孤立対策担当大臣」が設置され、政府一体となって孤独・孤立対策に取り組んでいる。

 研究グループは今回、孤独感を「UCLA孤独感尺度: 第3版」という質問項目で尋ね、聴力低下は、難聴高齢者のハンディキャップスクリーニング検査(HHIE-S)で評価した。

 対象者のうち、20%に聴力低下がみられ、要介護状態の新規発生は、聴力低下のない高齢者では4.5%だったのに対し、聴力低下の高齢者では8.3%と高かった。

加齢性難聴を有する高齢者の7割は病院受診を希望していない

 加齢性難聴を有している高齢者の7割は、耳の聞こえの不調について病院を受診することを希望していないことが、東京都健康長寿医療センター研究所による別の研究で明らかになっている。

 これまで加齢性難聴は、転倒発生や認知機能の低下など、高齢者の健康に悪影響を及ぼすことが報告されている。

 加齢性難聴には根本的な治療はないため、耳鼻科などの関連診療科を通じて、診断を受けた後に、補聴器の装着など適切な対応を早期にする必要がある。

 研究グループは、2022年に群馬県草津町で行った健康調査に参加した75歳以上の385人の高齢者のデータを解析した。

 調査では、オージオメータを用いて聴力を測定し、1kHzと4kHzでの平均聴力レベルから中等度以上の難聴者の把握を行った。

 加えて、難聴の自覚(主観的難聴)についても調査するとともに、「耳の聞こえに関して、病院に行こうと思ったことはありますか?」といった、耳の聞こえの不調に関して診察を希望しているかも調査した。

 その結果、高齢者の37.4%に中等度以上の難聴が認められた。この中等度以上の難聴者のうち、耳の聞こえの不調に関して診察を希望している人、もしくはすでに受診したことがある人は、29.9%にとどまった。

 大多数の加齢性難聴とみられる高齢者は、受診の希望を抱いていないことが明らかになった。この傾向は、難聴の自覚の有無に強く影響を受け、難聴の自覚がない高齢者ほど受診の意向が低いことも分かった。

[右]各群での受診希望者およびすでに受診を経験した高齢者の割合は29.9%にとどまった
大多数の加齢性難聴とみられる高齢者は、受診の希望を抱いていない
難聴の自覚のある高齢者は比較的、受診の意向が高い

出典:東京都健康長寿医療センター研究所、2023年

加齢性難聴を抱える高齢者の問題意識は低い

 「研究では、加齢性難聴を抱える高齢者の問題意識は、それほど高くないことが示されました。難聴の自覚がない方ほど受診の意向が低いことも分かりました。難聴の自覚をもってもらうことが必要性です」と、研究者は述べている。

 「早期の補聴器装着が、認知症の危険性を下げるといった研究結果もあり、定期的な耳の聞こえのチェック(耳の聞こえの不具合の顕在化)を通じた、耳鼻科などの医療機関への受診勧奨のシステムが必要と考えられます」としている。

 研究は、東京都健康長寿医療センター研究所の桜井良太研究員などによるもの。研究成果は、「JAMDA (The Journal of Post-Acute and Long-term Care Medicine)」にオンライン掲載された。

国立長寿医療研究センター 予防老年学研究部
SOLVE for SDGs (社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築)
Association of Loneliness With the Incidence of Disability in Older Adults With Hearing Impairment in Japan (JAMA Otolaryngology-Head & Neck Surgery 2023年4月6日)
東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チーム
Low Intention to Visit a Hospital for Hearing Loss Among Older Adults (Journal of Post-Acute and Long-term Care Medicine 2023年5月5日)
[Terahata]
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