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ウォーキングなどの運動で肥満や高血圧など19種類の慢性疾患のリスクを減少 わずか5分の運動で認知症も予防

 ウォーキングなどの運動に取り組んでいる人は、高血圧、糖尿病、肥満、心臓病、がん、呼吸器疾患、うつ病など、19種類の慢性疾患のリスクが低いことが明らかになった。

 年1回の健康診断を実施するときに、運動習慣などについて、簡単なアンケートに答えるだけでも、自身の健康と生活について振り返りができる可能性が示された。

 中強度以上の運動をわずか週に35分行うだけでも、認知症を発症するリスクは大幅に減少することも分かった。

 「とくに運動不足の人々に対して、毎日の生活で身体活動を増やして、より体を活発に動かしてもらうために、支援が必要です」と、研究者は述べている。

運動が肥満や高血圧など19種類の慢性疾患のリスクを減少

 ウォーキングや筋トレなどの運動に取り組んでいる人は、高血圧、糖尿病、肥満、心臓病、がん、呼吸器疾患、うつ病など、19種類の慢性疾患のリスクが低いことが、米国のアイオワ大学の調査で明らかになった。

 「とくに運動不足の人々に対して、毎日の生活で身体活動を増やして、より体を活発に動かしてもらうために、医師が運動処方を行ったり、地域の保健専門家による支援を受けやすくするなどの環境整備が必要です」と、同大学健康・人間生理学部のルーカス カー氏は言う。

 研究グループは、同大学ヘルスケア医療センターで健康診断を受けた、年齢の中央値が40歳の7,261人の成人を対象に、「エクササイズ バイタルサイン調査」と名付けたアンケート調査を行った。

 その結果、活発なウォーキングなどの中強度以上の運動を習慣として行っている人は、運動不足の人に比べ、血圧値が低く、1~2ヵ月の血糖値の平均が反映されるHbA1cも良好で、肥満が少ない傾向があることが分かった。

 運動をしている人は、悪玉のLDLコレステロールや中性脂肪の値が低く、善玉のHDLコレステロールは高い傾向も示された。

 なお、参加者の60%が運動をする習慣があり、運動不足の人は36%、まったく運動をしない人は4%に上った。

運動習慣についてのアンケートは効果がある 保健指導を行うとより効果的

 参加者はタブレットを使い、「早歩きなどの中強度から高強度の運動を週に何日行っていますか?」「1回の運動にどれくらいの時間をかけていますか?」といった質問に答えた。多くの人は、これらの質問に答えるのに30秒もかからなかったとしている。

 「30秒もかからない簡単なアンケートにより、全体的な健康状態について多くのことが分かります。しかし、現状では米国のほとんどの医療機関で、患者の身体活動レベルについての調査は行われていません」と、カー氏は言う。

 研究グループはまた、アンケートに回答した群と、アンケートを勧められなかった3万3,445人の群を比較した。すべての患者の電子医療記録を分析した結果、アンケートに回答した人は、回答しなかった人によりも健康状態が良好である傾向が示された。

 この結果は、年1回の健康診断を実施するときに、簡単なアンケートに答えるだけでも、自身の健康と生活について振り返りができる可能性を示している。

 「運動などの健康的なライフスタイルについての保健指導も行うと、より効果的と考えられます」と、カー氏は指摘している。

運動を少し行うだけでも認知症リスクは大幅に減少
運動習慣は認知症の予防にもつながる
 活発なウォーキングなどの中強度以上の運動を、わずか週に35分行うだけでも、まったく運動をしていない人に比べて、4年間で認知症を発症するリスクが41%も減少することが、米国のジョンズ ホプキンズ大学の新しい研究で明らかになった。

 運動や身体活動の量が増えると、認知症リスクはさらに減少することも分かった。認知症の発症リスクは、週35分~70分の運動をしている人では60%減少し、週70分~140分の運動している人では63%低下し、週140分以上の運動をしている人では69%低下した。

 「たとえ1日5分であっても、運動や身体活動を行うことを習慣にすると、認知症のリスクを軽減できることが示されました」と、同大学公衆衛生大学院加齢・健康センターのアマル ワニガトゥンガ氏は言う。

 「認知症などの、脳の老化が関わる疾患のリスクは加齢とともに高まりますが、血圧、血糖、コレステロールなどの値をより適切に管理し、体を動かしてより活動的になるなど、ライフスタイルを改善することで、認知症をある程度予防できることが、近年の研究で分かってきました」としている。

 フレイルは、病気ではないが、年齢を重ねるとともに筋力や心身の活力が低下しており、介護が必要になりやすい、健康と要介護のあいだにある虚弱な状態のこと。

 調査では、健康に悪影響を与えるフレイルのリスクが高い高齢者でも、運動量が多いほど認知症のリスクは低下することも示された。

 研究グループは今回、50万人の成人を対象に実施されている大規模研究「UKバイオバンク」に参加している、50代以上の成人8万9,667人を対象に、平均4.4年間にわたり、健康状態を追跡して調査した。

 参加者は、2013年2月~2015年12月のうち1週間、手首に活動量計を装着し、身体活動を記録した。追跡調査の期間中に、735人が認知症と診断された。

 米国保健福祉省(HHS)や英国国民保健システム(NHS)などは、活発なウォーキング、サイクリング、階段の昇降、テニス、水泳、動きのあるヨガなどの中強度以上の運動を、成人は週に少なくとも150分、1日に30分程度行うことを推奨している。

Get moving! UI study finds physical activity reduces chronic disease risk (アイオワ大学 2025年1月2日)
Identifying Patients at Risk for Cardiometabolic and Chronic Diseases by Using the Exercise Vital Sign to Screen for Physical Inactivity (Preventing Chronic Disease 2025年1月2日)
Small Amounts of Moderate to Vigorous Physical Activity Are Associated with Big Reductions in Dementia Risk (ジョンズ ホプキンズ大学 公衆衛生大学院 2025年2月20日)
Moderate-to-Vigorous Physical Activity at any Dose Reduces All-Cause Dementia Risk Regardless of Frailty Status (Journal of the American Medical Directors Association 2025年3月)

[Terahata]
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