「玄米」で糖尿病を予防 食事では血糖値を上げにくい「低GI食品」を活用 新しい低GI米を開発

糖尿病や肥満を予防するための食事指導では、食物繊維を積極的にとることが推奨されている。
食物繊維が豊富に含まれる玄米などの全粒穀物を利用すると、糖尿病の発症リスクが減少することが、大規模な調査で確かめられている。
玄米には、細胞をストレスから保護する作用のある栄養も含まれる。血糖値を上げにくい、新しい米の品種の開発も進められている。
玄米などの全粒穀物は血糖値を上げにくい
「グリセミック・インデックス(GI)」は、食後血糖値の上昇度を示す指数のこと。GI値の高い食品を食べると、血糖値が短時間で上昇しやすい。
食事のGI値を低くし、血糖値が上がりにくくするために、食物繊維が豊富に含まれる「全粒穀物」を利用する方法がある。
精製されていない全粒穀物は、玄米・七分つき米・麦ごはん・雑穀・ライ麦パン・全粒粉パン・そばなどがある。
全粒穀物は、精製されていない穀物で、胚芽・胚乳・外皮などが取り除かれていないぶん、食物繊維、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質などが多く含まれる。
一般的に、血糖値が上がりやすいのは、ごはんやパン、麺などの主食や、ジャガイモ、お菓子、高カロリーの清涼飲料など、糖質の多い食品だ。
一方で、全粒穀物は、白米などの精製穀物に比べて、GI値が低く、ゆっくりと消化され、血糖値を上げにくいことが知られている。
白米を玄米に変えると糖尿病の発症リスクが減少

白米を玄米などの全粒穀物に変えると、糖尿病の発症リスクが減少するという研究を、米国のハーバード公衆衛生大学院が発表している。
研究グループによると、1日の摂取量の3分の1(50g)の白米を玄米に変えると、2型糖尿病の発症リスクが16%減少するという。精製穀物をすべて全粒穀物に変えると、リスクは36%低下する。
週に白米を5回以上食べている人が、うち2回を玄米に変えるだけでも、2型糖尿病のリスクを下げられる可能性があるという。
研究グループは、米国の3万9,765人の男性と15万7,463人の女性が参加した大規模調査のデータを解析し、玄米を食べる習慣と2型糖尿病の発症リスクとの関連を調べた。
「白米などの精製された穀物を、玄米などの全粒穀物に置き換えることは、2型糖尿病のリスクを下げるのに役立つと考えられます」と、同大学院栄養疫学部のチー サン氏は言う。
「米はアジア地域でよく食べられていますが、米国でも米の消費量はこの数十年で増えています。玄米を食べることは民族性とは関係がなく、より健康志向の高い食事スタイルになりえます」としている。
玄米は体に良いポリフェノールも含まれる
玄米にはほかにも、抗肥満作用や、コレステロールを低下する作用、抗炎症作用といった、健康に役立つ幅広い生理学的特性があり、注目されている。
ポリフェノールは、野菜などの植物性食品に含まれる、苦味や渋味、色素などの成分。玄米には、フェルラ酸やγ-オリザノール類といったポリフェノールも豊富に含まれている。
岡山大学の最新の研究によると、玄米に含まれるポリフェノールと植物ステロールのハイブリッド化合物が、玄米の健康機能をになう主要成分である可能性がある。
この化合物には、細胞をストレスから保護する強い作用があり、その健康効果は、玄米に含まれる別の栄養成分で抗酸化作用の高いビタミンEよりもさらに大きいという。
アジア人の糖尿病危機を解決できると期待
低GIの米の開発は、とくにアジアで増加している2型糖尿病と戦うために有効な手段となるという最新の研究を、国際稲研究所(IRRI)とドイツのマックスプランク研究所が発表した。
2型糖尿病や肥満はアジアでも増えており、高カロリーの甘い飲みもの、超加工食品、主食である白米などの精製穀物の食べすぎが関与しているという。
「アジアには、1人あたりの米消費量が多い国が多く、食べられているのはほとんどが白米です。糖尿病を予防するために、低GIの米を取り入れる方法が効果的である可能性があります」と同研究所の穀物品質・栄養センターのネセ スリーニヴァスル氏は言う。
米に含まれる難消化性のデンプンとアミロースの量を増やすことで、ゆっくりと消化され、血糖値を上げにくい米の品種の開発に取り組んでいる。
ゲノム編集技術の進歩などにより、味や食感も良く、生産栽培や収穫にも優れた品種の開発が可能になっているという。
多く食べられている白米のGI値は70~94と高いが、低GIの米は55未満に抑えることを目指している。バングラデシュやフィリピンなどでは、すでに低GI米の品種の導入がはじまっているという。
「低GI米の導入率が25%に達すると、アジアでの2型糖尿病の罹患率が大幅に減少するという予測もあります。やせなどの低栄養と、肥満や2型糖尿病などの過栄養がもたらす、栄養不良の二重負荷の解決策にもなると期待しています」と、スリーニヴァスル氏は述べている。
Can brown rice slow the spread of type 2 diabetes? (ハーバード公衆衛生大学院 2012年1月3日)
Brown Rice or White Rice: Glucose Control (スタンフォード大学)
Replacing white rice with brown rice or other whole grains may reduce diabetes risk (ハーバード公衆衛生大学院 2010年6月14日)
White Rice, Brown Rice, and Risk of Type 2 Diabetes in US Men and Women (JAMA Internal Medicine 2010年6月14日)
What Makes Brown Rice Healthy? Decoding the Chemistry of its Nutritional Wealth (岡山大学 2023年1月20日)
Cycloartenyl Ferulate Is the Predominant Compound in Brown Rice Conferring Cytoprotective Potential against Oxidative Stress-Induced Cytotoxicity (International Journal of Molecular Sciences 2023年1月3日)
Low GI rice seen as promising solution to mitigate Asia's diabetes crisis (国際稲研究所 2024年12月18日)
Low glycemic index rice: a healthier diet for countering diabetes epidemic in Asia (Trends in Plant Science 2024年11月29日)
The Japan Diet 食生活を見直しましょう (日本動脈硬化学会)


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年06月10日
- 【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
- 2025年06月09日
- 【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
- 2025年06月09日
- 健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
- 2025年06月09日
- ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
- 2025年06月05日
- 【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)
- 2025年06月02日
- 【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
- 2025年06月02日
- 【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
- 2025年06月02日
- 女性の月経不順リスクに職場の心身ストレスが影響 ストレスチェック活用により女性の健康を支援
- 2025年06月02日
- 自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
- 2025年05月30日
- 都民の健康意識は高まるも特定健診の受診率は66% 「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査