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「笑い」にストレス軽減の効果が お笑いライブ鑑賞をした後はストレスが減り楽観性が向上 がん改善効果も

 お笑いライブを鑑賞することが、心理的ストレス(悲観性、不安感)、生理的ストレス指標を短期的に軽減し、楽観性を高めるなどの効果があることが、弘前大学の研究で明らかになった。

 「笑い」は心理状態にポジティブな影響をもたらし、身体的にもがんの改善効果など、さまざまな作用があることも示されている。

 日常生活での「笑い」は重要であり、地域での文化活動を公衆衛生やメンタルヘルス向上やストレスマネジメントに役立てられる可能性がある。

「笑い」はストレス軽減に役立つ 心理状態を改善

 お笑いライブを鑑賞することが、一般市民の心理的ストレス(悲観性、不安感)、および生理的ストレス指標を短期的に軽減し、楽観性を高める効果があることが、弘前大学の研究で明らかになった。

 笑いが健康に与える影響についての研究は数多く行われているものの、笑いが楽観性、悲観性、不安に及ぼす影響を明らかにした研究は少ない。

 研究グループは、2023年に弘前市民会館で開催されたお笑いステージ「TAnGE OMOSHÉ」に来場した18~64歳の参加者を対象に、シソンヌ、とにかく明るい安村、もう中学生、パンサーら人気お笑い芸人4組による約2時間のライブパフォーマンスを鑑賞してもらい、その前後で、質問紙調査(楽観性・悲観性、不安感など)と唾液採取(ストレスマーカーである唾液α-アミラーゼ(sAA)活性測定)を行った。

 その結果、ライブ鑑賞後に、参加者の楽観性スコアは有意に上昇した一方で、悲観性スコアと不安スコアは有意に低下した。

 また、ストレスによって上昇する唾液α-アミラーゼ(sAA)活性も、ライブ鑑賞後に有意に低下した。とくに、参加者の63.7%で鑑賞後にsAA活性の低下がみられた。

 鑑賞後の楽観性の高さには、「他者によって笑わされる傾向が強いこと」や「愛想笑いの傾向が低いこと」などが関連していることも示された。

「笑い」がストレス軽減や気分改善の手段に

 研究は、弘前大学大学院保健学研究科の冨澤登志子教授を中心とする研究グループによるもの。研究成果は、「Health Psychology and Behavioral Medicine」に掲載された。

 研究は、日常生活における「笑い」の重要性を再認識させるとともに、地域における文化活動が公衆衛生やメンタルヘルス向上に貢献する可能性を示すものとしている。

 得られた知見は、今後のストレスマネジメントなどの取り組みに応用されることが期待されるとしている。

 「多くの人が経験的に感じている『笑いは心身に良い』効果をもたらすことを、心理指標と生理指標の両面から客観的に示すことができました」と、冨澤教授は述べている。

 「お笑いライブのような、みなで楽しさを共有できる文化的な体験が、ストレス軽減や気分の改善に有効な手段となりえることを示唆しています」としている。

「笑い」に多くの健康効果が
がんを改善する効果を検証

 「笑い」を医学的に解明しようとの研究が進められている。笑いは心理状態にポジティブな影響をもたらし、身体的にもがんの改善効果など、さまざまな作用があることが示されている。

 大阪府立病院機構「大阪国際がんセンター」は、吉本興業などと協力し、がん患者などを対象に、「笑い」が生活の質(QOL)や免疫機能などに与える影響を明らかにする「笑いとがん医療の実証研究」を行った。

 研究では、落語や漫才などのお笑いの舞台を開催し、研究に参加した40~64歳の患者をお笑いの舞台を楽しむ群と、楽しまない群に無作為に割り付けて、ランダム化比較試験を行った。

 がん細胞は、通常はウイルスなどと同様に異物として認識され、免疫細胞ががん細胞を攻撃し排除する働きをする。その代表が「NK(ナチュラルキラー)細胞」だ。

 研究では、漫才などを見たグループは2ヵ月で、NK細胞などに作用するタンパク質を作る能力が上昇したことなどが示された。

 また、患者の気分の変化などもアンケートし、緊張や抑うつ、疲労、活気などの項目で改善がみられ、がんの痛みについても改善があったという。

 研究グループは、さらに研究を重ねる必要があるとしながらも、「笑い療法は、臨床現場で有益かつ非侵襲的な補完的介入となる可能性があります」と述べている。

弘前大学大学院保健学研究科
Unlocking optimism in everyday life: a short-term study on the power of live comedy to reduce stress and anxiety in general public (Health Psychology and Behavioral Medicine 2025年4月24日)
大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター
Effects of laughter therapy on quality of life in patients with cancer: An open-label, randomized controlled trial (PLOS One 2019年6月27日)
笑いは、本当に心と体にいいのか? (大阪府)

[Terahata]
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