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母親の「妊娠前と妊娠中」の運動習慣、子どもの発達との関連を検証―東北大の研究グループ

 妊娠中の適度な運動は、妊娠経過に異常がない場合、体重管理など健康の維持・増進の観点から推奨されている。しかし、母親の運動習慣と子どもの発達との関連は、これまで十分にわかっていなかった。

 そこで、東北大学の研究グループがこのほど、エコチル調査に参加する3万8219組の母子ペアを解析。その結果、妊娠前や妊娠中期に運動習慣のある母親ほど、子どもの神経発達が良好な傾向がみられ、特に生後6カ月から1歳の運動機能の発達と強い関連があることなどがわかった。

母体の運動習慣が高いほど子どもの神経発達が良い傾向に

 研究にあたったのは、東北大学大学院医学系研究科発達環境医学分野の大学院生・熊坂衣織医師と、大田千晴教授らの研究グループ。

 妊娠経過に異常がない妊婦では、医師の管理のもとで行う適度な運動が、体重管理やストレス軽減など健康維持のために推奨されている。一方で、妊婦の運動習慣が子どもの発達にどう影響するかについては報告が少なく、大規模かつ長期間にわたって調べた研究もほとんどなかった。

 そこで同グループはエコチル調査のデータを用い、妊娠前と妊娠中期(16〜27週)の母親の運動習慣が、生まれた子どもの3歳までの神経発達にどう関わるかを検証した。 研究の対象は、エコチル調査に参加する約10万組の親子のうち、必要な回答がそろった3万8219組の母子。

 母親の運動習慣は国際標準化身体活動質問票(IPAQ:International Physical Activity Questionnaire)に準じて、「なし」「軽度」「中等度〜強度」の3段階に分類した。子どもの発達は生後1カ月から5歳6カ月までの乳幼児の発達の遅れを早期に発見するためのスクリーニングツール「ASQ-3(Ages and Stages Questionnaires, Third Edition)」を用いて評価した。評価領域は「コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人・社会」の5つで、使用したのは生後6カ月から3歳までの6時点におけるデータ。

 研究の結果、生後6カ月時点では、妊娠前や妊娠中期に母親の運動習慣が高いほど、子どもの神経発達が良好な傾向がみられた。特に粗大運動、微細運動、問題解決の領域で有意な関連が確認されたという。ただし、妊娠中期の運動習慣と子どもの運動機能との関連は、年齢が上がるにつれて弱まり、有意差はみられなくなった。

 また、母親の運動習慣は早産や妊娠合併症とは関連しておらず、妊娠経過に異常がない場合には、適切な運動が母子双方にメリットをもたらす可能性が示された。

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出典:妊娠前および妊娠中の母体の運動習慣と子どもの神経発達との関連―全国規模のエコチル調査データで正の相関が明らかに―

 研究グループは今回の研究について「母体の運動習慣が生まれてくる子どもの神経発達、特に幼児期早期までの運動機能と関連することが分かりました。

 母体の運動習慣と子どもの神経発達の関連は1歳頃までに強く、以降は保育施設利用などの環境因子との関連が強くなることも明らかになりました」「妊娠中だけではなく、妊娠する前の母親の運動習慣も子どもの発達に関連することから、昨今の健康志向が周産期および子どもの発達領域において好転することが期待されます」と説明している。

 一方、今回の研究結果は、母体の運動習慣と子どもの神経発達の関連を示しているものの、因果関係を示すものではないこと、また、妊娠中の運動は、母体合併症がなく妊娠経過に異常がない場合に限り、医師の指示に基づいて行うことが必要、としている。

妊娠前および妊娠中の母体の運動習慣と子どもの神経発達との関連―全国規模のエコチル調査データで正の相関が明らかに―(東北大学/2026年3月5日)

[yoshioka]