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男性の老化リスクを評価 テストステロン・炎症・腎機能の3指標 5800人のデータをAI解析

 順天堂大学大学院医学研究科の研究グループがこのほど、日本人男性5854人の17年間にわたる臨床データをAIで解析し、男性の老化や健康リスクに関わる新たな評価法を検討した。

 その結果、テストステロン、炎症を示すCRP、腎機能を示すクレアチニンの3つを組み合わせてみることで、単独の検査値だけでは捉えにくい「高リスクな老化パターン」を抽出できることが分かったという。

「老化の分岐点」は50代前半

 研究を行ったのは、順天堂大学大学院医学研究科の奥井伸雄客員教授と堀江重郎特任教授の研究グループ。

 代表的な男性ホルモンであるテストステロンは、筋肉や骨格、代謝、血管機能など、全身の健康維持に関わることが知られている。加齢に伴うテストステロン値の低下は、さまざまな臓器機能の変化とも関連することが報告されてきた。一方で、ホルモン値だけを見ても、体内で進む複雑な老化の過程を十分に捉えることは難しい。

 そこで研究グループは、テストステロンを単独のホルモン指標としてではなく、炎症や腎機能、代謝など複数の生体システムと連動するものとして再評価した。解析には、2008年から17年間に順天堂大学医学部附属順天堂医院を受診した日本人男性5854人の匿名化臨床データを用いた。

 研究ではまず、機械学習の手法である「k-means法」により、テストステロン、CRP、クレアチニンなどのデータをもとに、対象者を統計的に特徴の近い集団に分類。

 その結果、個々の数値が一般的な基準値内にあっても、「低テストステロン」「微小な慢性炎症」「腎機能低下」の3要素が重なることで老化が加速し、健康リスクが高くなるグループが見いだされた。

 さらに、「折れ線回帰」を用いて3つの要素の関係が大きく変化する年齢層を調べたところ、老化の質が変わる「分岐点」が50代前半にあると推定されたという。

 また研究グループは、この日本人データから得られた知見を、米国の国民健康栄養調査(NHANES)のデータでも検証した。その結果、同様の特徴を持つ人たちでは、前立腺がん、肺がん、膀胱がんなどの既往率が高い傾向が確認された。

 研究グループは、今回の研究について「これまで個別に評価されていたホルモン値を、炎症や臓器機能と連動する生体システムの一部として統合的に捉える新しい診断視点を提示した点に意義がある」と説明。

 この「3指標の組み合わせ」によるリスク判定は、今後、AIを活用した個別化医療において「特定の病気になる前の段階でシステムレベルの加齢プロファイルを把握し、一人ひとりに最適な予防介入や長寿サポートを提供する上で重大な役割を果たす」としている。

AIが導き出した「長寿のキーワード」:5,800人のデータから老化の分岐点を特定(順天堂大学/2026年4月15日)

[yoshioka]