抹茶がアレルギー性鼻炎モデルマウスのくしゃみ反応を抑制 神経活動への作用を示唆
東京大学大学院農学生命科学研究科の関澤信一准教授らの共同研究グループが、抹茶がアレルギー性鼻炎におけるくしゃみ応答を抑制する可能性を明らかにした。
マウスを用いたアレルギー性鼻炎モデルに抹茶を投与した結果、IgE抗体などの免疫応答や腸内細菌叢には大きな変化を与えず、くしゃみ反射に関与する神経活動を抑制する可能性が示された。花粉症を含むアレルギー性鼻炎患者が増加する中、身近な食品である抹茶の新たな作用機序が注目される。
アレルギー性鼻炎対策として注目される食品成分研究
アレルギー性鼻炎は日本で極めて有病率の高い疾患であり、近年では国民の約半数が何らかの症状を有すると報告されている。
「出勤はしているものの体調が優れず、生産性が低下している状態」であるプレゼンティーイズムの要因として、慢性疲労、メンタル不調、腰痛・頭痛、花粉症を含むアレルギー症状、生活習慣病などが挙げられる。
経済産業省による「健康経営度調査」の分析報告書等においても、花粉症による鼻閉、くしゃみ、鼻汁といった症状は、睡眠障害や集中力低下を招き、アレルギー症状がない時期と比較して、仕事の効率が平均で通常時の63.3%にまで低下するというデータが示されている。経済的損失も極めて大きい。
一般的な対処法としては、抗アレルギー薬の服用やアレルゲン免疫療法、花粉の持ち込みを減らしたり空気清浄機を活用するなどの生活環境整備が挙げられる。その中で、緑茶(カテキン等)による鼻炎症状の改善についてはヒト試験でも報告されてきたが、その詳細なメカニズム、特に免疫系以外への影響については十分解明されていなかった。
免疫応答への大きな変化なく、くしゃみ関連神経活動が減弱
本研究は、東京大学大学院農学生命科学研究科獣医衛生学研究室の関澤信一准教授らの研究グループと、広島大学原爆放射線医科学研究所(疾患モデル解析研究分野)の神沼 修教授、福島県立医科大学癌集学的治療地域支援講座の中嶋正太郎准教授、カトリカ・デ・ラ・サンティシマ・コンセプシオン大学のマリベト・ガンボア助教、日本医科大学大学院頭頸部・感覚器科学の後藤 穣大学院教授らによる共同研究である。
研究チームは、茶葉を丸ごと摂取できる「抹茶」に着目し、アレルギー性鼻炎モデルマウスに対し、抹茶を2.0%含有させた飼料を1週間自由摂取させ、病態の変化を解析した。
通常、アレルギー性鼻炎の発症にはIgE抗体※1、マスト細胞※2、T細胞※3などの免疫応答が深く関与する。しかし、本解析において抹茶の摂取は以下の項目に有意な変化を与えなかった。
- IgE抗体産生
- マスト細胞を介した反応
- T細胞応答
- 腸内細菌叢の分布
そこで研究チームは、くしゃみ反射に関与する神経活動に着目した。くしゃみ誘発物質であるヒスタミン※4を鼻腔内に投与すると通常は神経活動が活性化するが、抹茶を摂取したマウスでは、この神経活動が明確に減弱していた。
この結果は、抹茶がアレルギー体質そのものに作用するのではなく、鼻粘膜への刺激によって生じるくしゃみ反射に関連する神経活動へ影響している可能性を示唆している。
出典:「抹茶で花粉症も一服!?─抹茶を飲むことでくしゃみを抑えられる可能性─」(東京大学)
※2 マスト細胞:IgE抗体からの信号を受け、ヒスタミンなどを放出してアレルギー症状を引き起こす細胞。
※3 T細胞:免疫応答を統括し、IgE産生を促すなどの役割を持つリンパ球。
※4 ヒスタミン:マスト細胞から放出され、神経刺激や血管拡張を介してくしゃみ・鼻水などを引き起こす化学物質。
ヒトでの効果検証が今後の課題
今回の知見は、国内で約6,000万人とされるアレルギー性鼻炎患者の症状改善に向けた、新たな支援策に繋がる可能性がある。薬物療法以外のセルフケアに関心を持つ層にとって、身近な「抹茶」という選択肢が提示できるかもしれない。
しかし、プレスリリースにおいても強調されている通り、本研究はあくまでマウスモデルを用いた基礎研究段階である。ヒトが通常の飲用で摂取する量によって、同様のくしゃみ抑制効果が得られるかは未検証であり、現時点で直ちに予防や治療の推奨ができるわけではない。
研究グループは、今後ヒトでのデータ集積を進め、通常摂取量で十分な効果が得られるかを検証したいとしている。アレルギー性鼻炎の症状に悩む多くの人々にとって、抹茶の摂取が症状緩和に寄与する可能性があるか、今後のさらなる研究成果が注視される。
参 考
抹茶で花粉症も一服!?―抹茶を飲むことでくしゃみを抑えられる可能性―| 東京大学(2026年3月23日)
Matcha alleviates sneezing response in a murine model of allergic rhinitis| npj Science of Food(2026年3月5日)
花粉症と健康経営| ACTION!健康経営(経済産業省)
「もっと知ろう!花粉症対策のこと」イベント開催レポート| ACTION!健康経営(経済産業省)
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