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肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】


 国立がん研究センターは4月25日、肺がん検診に関する新たなガイドライン『有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン2025年度版』を発表した。

 19年ぶりの改訂となる今回は、喫煙歴の長い「重喫煙者」に対して、死亡率減少効果が確認された低線量CT検査を年1回実施することを新たに推奨した。

肺がん死亡率はがんの中で最多 重喫煙者に高リスク

 日本で肺がんと診断されるのは1年間に約12万人で、大腸がんに次いで2番目に多い。死亡者数をみると、年間約7万5,000人以上が亡くなっており、がんのなかでも最多だ。
 肺がんは40歳代から増加し始め、年齢が高くなるほど罹患率が高くなる。また、たばこを吸う量が多い・吸っている期間が長い人ほど、発症リスクが高いこともわかっている。

 肺がんに限らず、がんは早期発見して治療することが重要で、日本ではがん検診の指針を定めて科学的根拠に基づく「対策型がん検診」が行われている。
 現行の肺がん検診は、2006年度版のガイドラインに基づき実施されており、喫煙歴を問わず40歳以上を対象に年1回の胸部X線検査が推奨されている。
 さらに、喫煙指数600以上(例:1日20本を30年以上喫煙)の重喫煙者で50歳以上の場合は、X線検査に加えて喀痰細胞診の併用も推奨されている。

重喫煙者に対して低線量CT検査を新たに推奨(50~74歳)

 新たなガイドラインでは、これまで対策型検診では非推奨だった低線量CT検診が、50歳から74歳の重喫煙者を対象に、任意型検診を含めて推奨になったのが主な変更点だ。
 そのほかのポイントは以下のとおり。

  • 非重喫煙者に対する低線量CT検査は対策型検診では推奨されない
  • 従来推奨されていた50歳以上の重喫煙者を対象とする年1回の胸部X線検査と喀痰細胞診の併用は任意型検診を含めて非推奨
  • 胸部X線検査は引き続き推奨される

出典:国立がん研究センター「科学的根拠に基づくわが国の肺がん検診を提言
「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン」2025年度版公開」P.1, 2025年 4月25日

 ガイドライン見直しの主な背景には、低線量CT検診のランダム化比較対照試験(RCT)の結果が報告され、一部の国では検診として導入され始めていること、国内の喫煙率が低下し、低線量CTの有効性評価と課題整理が求められてきたことがある。
 さらに、一部の市区町村で独自に低線量CT検診が行われており、過剰診断などの不利益が懸念されていることが要因である。

低線量CTで肺がん死亡リスクが16%減 RCTに基づき推奨へ

 低線量CT検診は、2006年度版では「死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診として実施することは勧められない」としていた。
 2025年度版では、重喫煙者が対象の低線量CT検診に関する9件のRCTを統合したメタ解析で肺がん死亡率減少効果が認められたことなどを根拠に、推奨グレードA(任意型検診も含めて実施を推奨)とした。

 なかでも米国で行われた大規模RCTでは、胸部X線検査と比較して死亡リスクが16%減少しており、有意な死亡率減少効果が認められた。重喫煙者に対しては低線量CTの方が、過剰診断や被ばく線量による不利益よりも利益が大きいと判断した。
 各RCTを参照し、対象年齢は50~74歳、検診間隔は1年に1回としている。

非重喫煙者へのCT検診は引き続き推奨されず

 一方、重喫煙者以外に対する低線量CT検診では、国内コホート研究が1件存在するのみで検診による明確な利益を確認できなかった。
 そのため、推奨グレードI(対策型検診は実施しないことを推奨、任意型検診では利益と不利益に関する適切な情報を提供し、個人の判断に委ねる)に設定された。

喀痰細胞診の有用性低下 併用は非推奨へ

 従来、50歳以上の重喫煙者には年1回の胸部X線検査と喀痰細胞診の併用が推奨されていたが、国内では喫煙率の低下により喀痰細胞診が標的としている肺門部扁平上皮がんの罹患率が大幅に低下しているとの報告がある。
 メタ解析を含む複数の研究でも、胸部X線検査の死亡率減少効果に対する喀痰細胞診の効果が確認できなかったことから、胸部X線検査と喀痰細胞診の併用は推奨グレードD(対策型検診、任意型検診の両方で推奨しない)とした。

 胸部X線検査については、40~79歳の非喫煙者、および40~49歳、75~79歳の重喫煙者を対象に、対策型検診で行うよう推奨された(推奨グレードA)。年齢上限が設けられた以外は基本的に2006年版と同様となった。

CT検診導入には人材・体制の整備が課題

 低線量CT検診の導入には、検査体制の整備や読影医の育成、検査機器の確保など、多くの課題がある。また、実施マニュアルの整備も不可欠だ。
 今後は、このガイドラインを基に、厚生労働省の検討会で新たな肺がん検診の実施方法が決定される見通しだ。今後の動向を継続して注視する必要がある。

参考資料

科学的根拠に基づくわが国の肺がん検診を提言「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン」2025年度版公開|国立がん研究センター
【プレスリリース】科学的根拠に基づくわが国の肺がん検診を提言 「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン」2025年度版公開 |国立がん研究センター
有効性評価に基づく 肺がん検診ガイドライン2025年度版 |国立がん研究センター がん対策研究所

[保健指導リソースガイド編集部]
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