ニュース

自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める

 自然とのふれあいをベースにした活動は、不安症やうつ病の効果的な治療法になりえるという新しい研究が発表された。

 森林は人間の健康とウェルビーイングの促進において、重要な役割を果たしており、森の密度や多様性といった特性が影響しているという研究も発表された。

 「自然と積極的につながることは、メンタルヘルスを改善するのに効果的であることを示した研究は増えています」と、研究者は述べている。

自然をベースにした活動がメンタルヘルスを改善

 自然とのふれあいをベースにした活動は、不安症やうつ病の効果的な治療法になりえるという新しい研究を、英国のヨーク大学が発表した。研究成果は、「Health & Social Care in the Community」に掲載された。

 研究グループは、自然の豊かな環境で、野外レクリエーション、ガーデニング、ケアファーミング、スポーツや運動、屋外でのマインドフルネス、創作や芸術などの活動に取り組む、集団プログラムを作成した。

 18~85歳の幅広い年齢層の220人超に参加してもらったところ、軽度から中程度のうつやメンタルヘルス不調を抱えている人は、わずか12週間で気分や不安のレベルが改善した。

 研究グループは、地域密着型の自然活動への参加を通じて、医療行為を超えて健康とウェルビーイングの改善を支援する、「緑を活用した社会的処方(グリーン ソーシャル プリスクリプション)」を提唱している。

自然は人間の健康とウェルビーイングに良い影響をもたらす

 英国政府のメンタルヘルス改善政策の一環として、英国の全土でグリーン ソーシャル プリスクリプションの7ヵ所の拠点が設けられた。

 参加者に、1~4週間、5~8週間、9~12週間のプログラムに毎週参加してもらい、自然の豊かな環境で活動してもらった結果、全員が幸福感と精神状態が改善した。とくに、より長期のプログラムに参加した人や、ガーデニングやケアファーミングなどの活動に参加した人で効果が高かった。

 「自然が健康とウェルビーイングに良い影響をもたらすことは以前から知られていました。近年、自然と積極的につながることは、メンタルヘルスを改善するのに効果的であることを示した研究は増えています」と、同大学健康科学部のピーター コベントリー教授は述べている。

 「不安やうつは、孤独感や孤立感から生まれることが多いため、グループにつながり、とくに自宅近くにある自然の豊かな環境を保護したり改善する活動に参加すると、気分を高められ、不安を軽減できる可能性があります」。

 「今回の研究では、参加者の65%が社会経済的に恵まれないグループに属していました。とくにそうした人々は、自然の豊かな環境でガーデニングなどの活動に参加することで、メンタルヘルスの改善を期待でき、地域社会の環境にも好ましい影響があらわれると期待されます」としている。

自然は不安やストレスを減らしポジティブな感情を高める
森が人間の健康とウェルビーイングを改善

 森林は人間の健康とウェルビーイングの促進において、重要な役割を果たしており、森の密度や多様性といった特性が影響しているという別の研究を、英国のサリー大学やベルギーのゲント大学も発表した。研究成果は、「Nature Sustainability」に掲載された。

 木が密集すると、より多くの日陰を確保でき、より安定した気候がつくられるため、熱中症によるストレスも軽減される。また、葉の面積が大きくなり、有害な粒子状汚染物質が付着することで、空気の質が向上し、大気汚染による健康被害の改善につながる。これらは、とくに熱波や大気汚染物質が発生しやすい都市部では重要な要素になる。

 さらに、メンタルヘルスの観点からも、生物多様性にとんだ森林は、不安やストレスを軽減し、ポジティブな感情を高めるなど、有益な効果をもたらすとしている。

 研究グループは、欧州5ヵ国の164の森林を調査し、森林管理と都市計画の関連などを分析。森林のもつ7つの生態学的特性が、人間の健康に及ぼすさまざまな影響についても調査した。

 「森林が不安やストレスを軽減し、メンタルヘルスに良い影響を与えることは、とくに重要と考えられます。単に森のなかにいるだけでも改善を期待できます」と、同大学環境心理学部のメリッサ マルセル氏は指摘する。

 「英国では6人に1人が不安やうつを経験しています。とくに都市部に住む英国人にとって、森林を保護し、アクセスしやすくして、生活や仕事、遊びの場として活用し、メンタルヘルスの改善に役立てることは効果的と考えられます」。

 「英国の国民保健サービス(NHS)が支援した自然療法に関する研究で、メンタルヘルスを改善する効果があることが示されており、NHSは今後、森林を活用した社会的処方を促進する可能性もあります」としている。

Nature-based activity is effective therapy for anxiety and depression, study shows (ヨーク大学 2025年4月16日)
Green Social Prescribing: A Before and After Evaluation of a Novel Community-Based Intervention for Adults Experiencing Mental Health Problems (Health & Social Care in the Community 2025年4月1日)
Forest management can influence health benefits (サリー大学 2025年5月19日)
Forest biodiversity and structure modulate human health benefits and risks (Nature Sustainability 2025年5月19日)

[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年07月28日
日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
2025年07月28日
肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
2025年07月28日
1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
2025年07月28日
【妊産婦を支援】妊娠時に頼れる人の数が産後うつを軽減 妊婦を支える社会環境とメンタルヘルスを調査
2025年07月22日
【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
2025年07月22日
高齢者の社会参加を促すには「得より損」 ナッジを活用し関心を2倍に引き上げ 低コストで広く展開でき効果も高い 健康長寿医療センター
2025年07月18日
日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
2025年07月18日
「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
2025年07月14日
適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
2025年07月14日
暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶