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【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開

 地球温暖化の進行にともない、日本でも熱中症患者の増加が懸念されている。2025年の夏の気温も平年より高いことが見込まれており、熱中症対策は急ぎの対応を要する課題になっている。

 近年の気温の上昇を受け、今後の熱中症対策の強化を課題としている企業は増えている。熱中症対策を行っている、または検討している企業は95%超に上るという調査結果が発表された。

 子供や高齢者も、熱中症の高リスク群とされており、対策の強化が求められている。

 熱中症搬送者数の予測値を提供するサイトが、対象地域を全国47都道府県に拡大し、公開されている。

今年の夏も猛暑に 職場での熱中症対策を義務化

 地球温暖化の進行にともない、日本でも熱中症患者の増加が懸念されている。2025年の夏の気温も平年より高いことが見込まれており、熱中症対策は急ぎの対応を要する課題になっている。

 企業では、職場で適切な熱中症対策をとることが6月1日から義務づけられた。職場での熱中症による死者が増えており、厚生労働省は4月に、熱中症対策を罰則付きで、事業者の義務とする労働安全衛生規則改正省令を公布し、職場での初期症状の早期発見や重症化を防ぐ対応を企業に促すことを決めていた。

 厚労省によると義務化の内容は、(1) 熱中症の自覚症状がある人や疑いのある人が出た場合の緊急連絡先や担当者を決めるなどの体制整備を事業所ごとに定める、(2) 作業からの離脱、身体の冷却、医療機関への搬送など重症化防止のための手順を事業所ごとに定める、(3) 職場での対策の内容を作業者に周知することなど。

熱中症対策を行っている・検討している企業は95%超

 帝国データバンクが5月に、全国1,568社を対象に行った調査によると、近年の気温の上昇を受け、今後の熱中症対策の強化を課題としている企業は増えている。

 調査では、「熱中症対策の義務化」を認知している企業の割合は55.2%に上り、なかでも「建設」は約8割と高いことが示された。

 何らかの熱中症対策を行っている、または検討している企業は95.5%に上り、行っている対策は「クールビズの実践」「扇風機やサーキュレーターの活用」「水分・塩分補給品の支給」が多い。

 「熱中症警戒アラート」という言葉を認知している企業の割合は79.9%、「WBGT(暑さ指数)」については54.8%が認知している。

高齢者は水分補給量が足りていないことを自覚しにくい

 また子供や高齢者は、とくに熱中症の高リスク群とされており、対策の強化が求められている。大正製薬が20代~80代の700人を対象に行った調査では、高齢者は他年代に比べて熱中症対策の意識が高く、8割近くは室内でも熱中症対策を意識しており、夏場の水分補給についても9割近くは意識していることが分かった。

 一方で、熱中症による救急搬送人員は他年代に比べて高齢者がもっとも多く、高齢者は熱中症対策意識が高いにも関わらず、熱中症が頻発していることも示された。

 「十分な水分量を補給できていると答えた高齢者のうち、実際には水分補給量が不足していた人は40.7%いることが分かりました。この割合は高齢者が全年代のなかでもっとも高く、高齢者は水分補給量が足りていないことを自覚しにくいと考えられます」と、同社では述べている。

熱中症搬送者数を予測するサイトの対象地域を全国に拡大
名古屋工業大学

熱中症搬送者数を予測するサイトを公開

 名古屋工業大学は、気象データを用いた熱中症搬送者数の予測技術を開発しており、このほど熱中症搬送者数の予測値を提供するWebコンテンツの対象地域を全国47都道府県に拡大した。

 開発した予測技術は、対象都道府県での熱中症による救急搬送者数の予測値を、1週間先まで日ごとにリアルタイムで提供するもの。熱中症リスクの低減に向けた啓発活動や、救急搬送需要の事前把握などでの利用を期待している。

 研究グループは2024年度に、都道府県で試行運用を開始。「今後も、気象条件や地域特性に応じた予測精度のさらなる向上に向けて、各地域との連携を深めながら技術開発を継続します」と述べている。

 研究は、名古屋工業大学の平田晃正教授(電気・機械工学類、先端医用物理・情報工学研究センター長)、小寺紗千子准教授(電気・機械工学類)、三輪将大氏(物理工学科)、村川卓也氏(情報工学科)、浅野いぶき氏(工学専攻電気電子プログラム)らの研究グループによるもの。

対象地域を全国47都道府県に拡大
熱中症予防の啓発活動などで実用化

 研究グループは、これまでに数値人体モデルを用いた体内温度上昇および発汗量を推定可能な解析手法を開発してきた。さらに、熱中症による救急搬送者に関するビッグデータと組み合わせることで、気象データを入力値とした大規模シミュレーションにより1日の発汗量を推定し、それを用いた熱中症搬送者数を推定する予測式を提案してきた。

 また、同様のモデル式を改良し、入手が容易な「1日平均気温」を用いた場合でも、一定の精度で熱中症搬送者数を予測できることを発表している。

 これらの技術は、名古屋市消防局との共同研究で、病院や小中学校などへの情報提供、救急隊の効率的な運用支援、さらに熱中症予防の啓発活動などで実用化されているという。

 用いられている熱中症搬送者数予測式は、2013年~2019年および2024年の6月~9月での気象データと、約14万件の熱中症搬送者データを分析して開発した非線形回帰モデル式。同モデルでは、熱中症の発症機序の違いに着目し、熱中症搬送者を屋内(居住地)での発症と屋外(居住地外)での発症に区分して予測を行っている。

 また、これまでの研究で得られた、高齢者では連続する3日間の気象条件によって熱中症リスクが増大すること、および暑熱順化の影響により初夏と晩夏での熱中症リスクが異なることも考慮している。さらに、コロナ禍の影響が少ない2024年のデータを追加することで、より正確なリスク評価を実現した。

 さらに、週間天気予報を利用することで、各都道府県での1週間先までの熱中症搬送者数の予測提供ができるという。

 一方で、この推定は県庁所在地の気象条件を用いて概算しているため、都市部に位置する県では精度が高い一方で、地方部との間に推定精度の差がみられた。東京および大阪での人口100万人あたりの推計誤差は、それぞれ関東地方および関西地方の他の県と比べて約半分となっているという。

働く人の今すぐ使える熱中症ガイド (厚生労働省)
職場における熱中症予防情報 (厚生労働省)

熱中症対策に関する企業の実態アンケート (帝国データバンク 2025年5月21日)
なぜ高齢者の熱中症は減らないのか? 熱中症対策への意識の高さと裏腹な実態 (大正製薬 2025年5月27日)

[Terahata]
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