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【厚労省】職域がん検診も市町村が一体管理へ
対策型検診の新項目はモデル事業で導入判断


 厚生労働省は、4月に「第43回がん検診のあり方に関する検討会」を開催し、職域検診を含むがん検診の受診状況を、市町村が一体的に管理する方針を提示した。

 あわせて、対策型検診に新たな検診項目を導入する際の手順案も示され、構成員の意見を踏まえ、今後この方向性に沿って検討を進めることになった。

職域のがん検診情報も市町村が一体管理する方向へ

 『第4期がん対策推進基本計画』(2023~2028年度)では、がん検診について、自治体や職域などの実施主体によらず一体的に進めることができるよう課題を整理することや、対策型検診の項目導入に関するプロセスの明確化を検討するとしている。
 この計画を踏まえ、昨年7月以来、約9か月ぶりに検討会が開かれた。

 がん検診は現在、市町村が実施する「住民検診」、企業等が行う「職域検診」、任意の人間ドックなどがある。住民検診は国民の2~4割が受けるにとどまり、残りの6~8割は職域検診等を受診している。
 このため、市町村は自地域の住民が適切に検診を受診しているか、要精検となった場合に精密検査を受けているかどうかを把握できていないのが実情だ。

 この課題の対応策として、厚生労働省が下記を提案した。

  • 受診率向上及び適切な精度管理の実施の観点から、職域検診を含めた住民のがん検診の受診状況等を集約化し、市町村が一体的に管理することを目指してはどうか。
  • 具体的な集約方法としては、市町村が受診者に対して受診勧奨を行うに当たり、まず受診者本人からがん検診の受診状況等を市町村に報告することとしてはどうか。
  • 報告に当たっては、自治体検診DXを見据えつつ、電子的な方法の活用を検討してはどうか。

厚生労働省「第43回がん検診のあり方に関する検討会 資料2」より作成

 がん検診の受診状況について、市町村が一体的に管理し、住民から職域での検診も含めて受診状況を市町村に報告してもらう形だ。自治体検診DX(デジタルトランスフォーメーション)を見据え、電子的方法の活用した報告の検討も示されている。

 胃がんを例にとると、下記のイメージとなる。

出典:厚生労働省「第43回がん検診のあり方に関する検討会 資料2」P.14, 2025年 4月22日

一体管理に向けた課題と今後の進め方

 市区町村が一体的に管理することは、がん対策推進基本計画に沿った考え方であり、検討会構成員の了承を得たが、実現には複数の課題がある。

 まず、DX整備が不十分な現状では、しばらくは受診者の自己申告に頼らざるを得ない状況だ。さらに自治体ごとの実情に応じた対応、情報回収率向上の工夫、住民が自身の受診状況を正確に把握できる環境整備などが求められる。
 加えて、職域検診そのものの質や精度管理の確保、精密検査への適切につなげるための道筋や医療機関との情報連携など、受診率向上だけでは解決しない包括的な課題もある。

 このテーマは今後、次回以降の検討会においても引き続き議論される見通しとなった。

新たな検診項目導入のプロセスとは

 今回の検討会ではもう一つの柱として、「対策型検診の項目の導入に係るプロセスについて」も取り上げられた。

 対策型のがん検診項目の導入は、国立がん研究センターで有効性評価を行い、ガイドライン及びエビデンスレポートを公表。
 それを受け、検討会において導入に向けた検討を行い、自治体が使用する運用マニュアルなどの整備を行ったうえで、指針改正を行い対策型検診として位置づけている。

 最近の例をあげると、2016年に胃がん検診に内視鏡検査が加わり、2023年には子宮頸がん検診でHPV検査単独法の推奨が行われるなどの改善が図られた。

出典:厚生労働省「第43回がん検診のあり方に関する検討会 資料3」P.2, 2025年 4月22日

モデル事業で効果を検証 導入判断の材料に

 子宮頸がん検診は、受診間隔が広がり、受診者の負担が小さくなる「HPV検査単独法」を実施する市町村が多く出ることが期待されていた。
 ところが、24年度から導入しているのは、和光市、志木市、横浜市の3自治体のみである。

 その他の自治体も導入を検討しているものの、厚労省のヒアリング調査によれば、「先行自治体の具体的な導入方法や運用状況、課題を詳細に把握した上で導入を判断したい」との声が多く、慎重な姿勢がうかがえる。

 こうした状況を踏まえ、厚労省は「新たな検診項目・検診方法」の導入について、モデル事業を実施して検証を行うプロセスを提案した。

  • 国立がん研究センターは、検診項目に関するエビデンスの収集を行い、随時有効性評価を実施
  • 検討会は、有効性評価の結果、対策型検診として実施が推奨された項目について導入に向けた妥当性や論点を整理
  • 一部の自治体で試行的に実施(モデル事業)
  • モデル事業を踏まえ、検討会において導入の是非を検討

 検討会では、「新たな検診方法の実装・普及にあたっては、詳細な設計と検証が不可欠である」「モデル事業の実施と検証は重要」といった賛同意見、「国から精度管理や先行事例の共有など詳しい実施マニュアルの作成・提示をしてほしい」などの要望も出され、それらの意見を踏まえ提案は了承された。

 今後は、このプロセスに沿って、科学的根拠に基づく新たな検診項目や方法の導入が進められていくことになる。

参考資料

第43回がん検診のあり方に関する検討会(資料)|厚生労働省
がん検診のあり方に関する検討会 |厚生労働省

[保健指導リソースガイド編集部]
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