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【アルコール健康障害の最新情報】多量飲酒は認知症リスクを高める どんな状況で飲みすぎている? どうすれば飲みすぎを防げる?

 アルコールの飲みすぎは健康に悪影響をもたらす。アルコール使用障害(AUD)の悪影響について明らかにした研究が増えている。

 アルコールの飲みすぎは、脳損傷の兆候と直接関連しており、脳の健康に長期的な影響を与え、記憶力や思考力に影響を及ぼすことが示された。

 飲み会などの社交的な飲酒がアルコール使用障害につながることも指摘されている。

 スマートフォンなどのアプリの活用が、アルコール関連の障害を減らすのに役立つ可能性があるという新しい研究も発表された。

アルコールを飲みすぎると認知症リスクが上昇

 アルコールの飲みすぎは健康に悪影響をもたらす。アルコール使用障害(AUD)の悪影響について明らかにした研究が増えている。

 週に8ドリンク以上のアルコールを飲んでいる人は、記憶や思考に関連する脳損傷の兆候である脳病変を発症するリスクが高いという調査結果を、米国神経学会(AAN)が発表した。

 アルコールの1ドリンクは、純アルコール量に換算すると14gで、ビールであると350mL(缶ビール1本)に相当する。研究成果は「Neurology」にオンライン掲載された。

 「過度のアルコール摂取が脳にダメージを与え、記憶や思考に問題を引き起こす可能性があります」と、ブラジルのサンパウロ大学医学部のアルベルト フェルナンド オリベイラ フスト氏は言う。

多量飲酒は脳にダメージを与える 脳の血管病変が顕著

 研究グループは、死亡時の平均年齢が75歳だった1,781人の高齢者を対象に、アルコール摂取量などについて調査し、飲酒量により4つのグループに分けて比較した。対象者の死後は、脳を解剖して、脳血管病変などについて調べた。

 その結果、飲酒量がもっとも多かった人は、まったく飲まなかった人に比べ、平均して13年早く死亡していた。

 さらに、飲酒量が多かった人は、飲酒の習慣がない人に比べて、脳血管病変の割合が133%高く、過去に飲酒量が多かった人でも89%、中程度の飲酒者でも60%、それぞれ高いことなどが分かった。

 飲酒量が多かった人と、過去に飲酒量が多かった人の多くで、アルツハイマー病の人の脳で特徴的にみられるタウタンパク質の異常も示された。

 「アルコールの飲みすぎは、脳損傷の兆候と直接関連しており、脳の健康に長期的な影響を与え、記憶力や思考力に影響を及ぼす可能性が示されました」と、フスト氏は言う。

 「重度の飲酒は、健康障害や死亡の増加につながり、世界的に健康上の懸念事項になっています」としている。

関連情報

社交的な飲酒が多量飲酒につながることも

 アルコール使用障害の原因について、飲み会などの社会的な背景も影響しているという別の研究を、米国のイリノイ大学が発表した。

 「アルコールを飲みすぎている人について、家でひとりで飲んでいる姿をイメージしがちですが、アルコール摂取によるもっとも深刻な悪影響の一部は、社交的な状況も関連していることに注意を向ける必要があります」と、同大学心理学部のキャサリン フェアバーン教授は言う。

 研究者は、たとえば若年者が同年代の仲間から飲酒の世界に引き込まれ、アルコールの摂取量が増えたり、大量飲酒の習慣のある人が自分と同じ大酒飲みとつながり、その結果さらに飲酒量が増えてしまう例などを挙げている。

 社交の場で飲酒を楽しむことで、不安がやわらげられ、抑制が取り除かれ、社交体験が向上する可能性はあるものの、科学的な調査では、多くの人はプライベートな場よりも社交的な場で、より多くのアルコールを摂取している傾向が示唆されているという。

 「他人との交流は有益な効果をもたらし、過剰な欲求をやわらげると考える人もいますが、こうした考え方を好むのは、社交の場での過度な飲酒に対して責任を感じたくなかったり、言い訳をしたいからかもしれません。問題のある人間関係を修復するために、アルコールに頼ってしまう例もあります」と、フェアバーン教授は指摘している。

 「社会的なつながりを育むツールとして、アルコールの役割を強めることには危険がともなうことに注意する必要があります」としている。

スマホやスマートウォッチを活用してアルコール障害を減らす
アルコール指導にデジタルデバイスを活用

 それでは、アルコールの飲みすぎを防ぐためにどうすれば良いだろうか?

 スマートフォンやスマートウォッチなどのデバイスの活用が、アルコール関連の障害を減らすのに役立つ可能性があるという新しい研究を、英国のブリストル大学が発表した。

 「スマホアプリなどを利用することで、日常的な飲酒習慣をより正確に把握できるようになってきました。こうしたテクノロジーの活用が将来に、アルコール摂取に対する介入で重要な役割を果たすようになる可能性があります」と、同大学統合がん疫学プログラムのアンディ スキナー氏は言う。

 研究グループは今回、新たに開発した、毎日の飲酒量、アルコール飲料の種類、飲んだ場所や状況などを簡単に記録できるスマートウォッチ「AlcoWatch」を使った試験を行った。

 32人の参加者を対象に、「AlcoWatch」を12週間にわたり装着してもらい、過去2時間以内に飲んだアルコール飲料の量、種類、飲んだ場所、ひとりで飲んだか他の人といっしょだったかなどについて記録してもらった。

 その結果、個人の飲酒量を記録するもっとも確立された方法として、タイムラインフォローバック(TLFB)と呼ばれるオンライン日記ベースの方法があるが、「AlcoWatch」の利用はこれよりも優れていることが示された。

 「英国ではアルコール関連の障害が原因で、毎日約70人が亡くなっています。アルコールによる健康障害は、年間に35億ポンド(約7,000億円)の損失を、英国国民保健サービス(NHS)に与えています」と、スキナー氏は指摘する。

 「デジタルデバイスを活用して、短期および長期の飲酒のパターンを簡単に記録し、振り返りをできるようにすれば、飲酒をコントロールしやすくなり、適度な飲酒や禁酒を効果的に支援できるようになる可能性があります」としている。

アルコール健康障害対策 (厚生労働省)
How does heavy drinking affect the brain? (米国神経学会 2025年4月9日)
Association Between Alcohol Consumption, Cognitive Abilities, and Neuropathologic Changes: A Population-Based Autopsy Study (Neurology 2025年5月13日)
Social drinking also a well-worn path to alcohol use disorder (イリノイ大学アーバナ シャンペーン校 2025年5月6日)
Social Drinking and Addiction: A Social-Cognitive Model for Understanding Alcohol Use Disorder Risk (Current Directions in Psychological Science 2025年4月6日)
Smartwatch technology could help with future alcohol interventions, new study finds (ブリストル大学 2025年4月2日)
Smartwatch-Based Ecological Momentary Assessment for High-Temporal-Density, Longitudinal Measurement of Alcohol Use (AlcoWatch): Feasibility Evaluation (JMIR Formative Research 2025年3月25日)

[Terahata]
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