肥満や過体重の人は体重を何パーセント減らすと効果がある? 食事日記をつければ体重管理は2倍うまくいく

中年期に体重を何パーセント減らすと効果がある? 生活改善の効果を調査
30~50歳の中年期の人が、肥満や過体重がある場合は、体重を減らすことで、その後の病気や死亡のリスクを大きく低下できるという新しい研究が発表された。
中年期に食事や運動などによる体重管理についてのサポートを受け、持続的な減量に取り組み、体重を6.5%減らした人は、血圧値や総コレステロール値などが改善し、糖尿病・心筋梗塞・脳卒中・がんなどの慢性疾患のリスクは48%低下したことなどが示された。体重を減らした人では、死亡リスクの低下との関連もみられた。
研究は、フィンランドのヘルシンキ大学などによるもの。研究成果は「JAMA Network Open」に掲載された。
「今回の研究は、健康状態を最適に保つために、生涯を通じてBMIを25未満に維持することが理想的であることを示しています」と、ヘルシンキ大学およびオウル大学ライフコース健康研究センターのティモ ストランドバーグ教授は言う。
「今回の研究が、ライフスタイルを改善することは、健康状態を大幅に改善し、寿命を延ばすことにつながることを、多くの人に理解してもらうきっかけになることを願っています」としている。
若い頃から体重管理に取り組むと病気や死亡のリスクを大幅に減らせる
研究グループは、フィンランドと英国で実施された3件のコホート研究に参加した2万3,149人の成人を対象に、12~35年間の追跡調査を行った。
調査では、中年期のBMI(体格指数)の変化が、その後の慢性疾患や死亡のリスクにどのように影響するのかを追跡して調べた。3件の研究の参加者の初回測定時の平均年齢は、それぞれ39歳、42歳、39歳だった。
「研究が開始された35年前に比べて、今日では肥満や過体重の人が増えています。若い頃から健康的な体重を維持することで、年齢を重ねてから病気や死亡のリスクを大きく減らせると示せたことは、重要な意味をもちます」と、ストランドバーグ教授は述べている。
なお研究者は、研究で使用された身長と体重のみで肥満度を計算するBMIは完全な指標ではなく、内臓脂肪の蓄積や筋肉量を考慮した指標も必要と指摘している。年齢を重ねると、体重はそれほど変わらなくても、体組成が変化している場合も考えられるとしている。
食事日記をつければ体重管理は2倍成功しやすくなる
心筋梗塞・脳卒中・がん・腎臓病・認知症などを予防するために、若い頃からの健康的なライフスタイルが重要となる。
しかし、食事や運動などの生活改善に取り組んでも、その効果がみえづらく、それを維持することは難しいため、多くの人が途中で挫折している。
食事日記をつけ、食事を継続的に記録し、それをもとにフィードバックを受けることで、体重減少は2倍成功しやすくなるという研究が発表されている。
食事日記をつける頻度と、それをもとに提供されたグループミーティングへの参加回数が、体重減少のもっとも効果的な予測因子であることも示された。
研究は、米国の大手保険システムであるカイザーパーマネンテの健康研究センターによるもの。研究成果は「American Journal of Preventive Medicine」に発表された。
食事日記をつけて運動にも取り組む グループセッションで支援
「食事の記録を毎日つけていた人は、つけていなかった人に比べて、体重の減少が2倍に上りました。食べたものを記録するという単純な行為が、摂取エネルギーを減らすことを促すと考えます」と、同研究センターのジャック ホリス氏は言う。
研究グループは、25歳以上の成人1,685人を対象に、食事日記をつけてもらい、電子メールなどでフィードバックを提供し、食事や運動などについてアドバイスする6ヵ月間の20回のグループセッションにも参加してもらった。
参加者の79%が肥満で、87%が高血圧の薬を服用しており、38%が脂質異常症の薬を服用していた。
参加者に、高血圧の予防・改善を目的に開発された「DASHダイエット」に取り組んでもらった。この食事法は、野菜、全粒穀物、低脂肪の乳製品、魚介類、果物などを十分にとり、体に悪い塩分や飽和脂肪酸などを減らすことが中心になる。
さらに、活発なウォーキングなどの中強度の運動を1日30分以上行うことなども求めた。
効果的なツールとサポートがあればほとんどの人は体重を減らせる
その結果、参加者の体重は平均して5.8kg減少し、3分の2以上(69%)は4kg以上の減量に成功した。なお、食事日記の週の提出回数の平均は3.7回だったとしている。
「過去の研究では、わずか約2.3kgの減量でも、高血圧のリスクを20%低減できることが示されています。今回の研究では、食事日記を多くつけ、グループミーティングに参加した人の多くが、4kg以上の減量に成功しました」と、同研究センターのビクター スティーブンス氏は言う。
「これだけの減量を達成すれば、高血圧、高コレステロール、糖尿病、心臓病、脳卒中などの発症リスクを大幅に減少できます」としている。
食事日記は、必ずしも形式的なものである必要はなく、何を食べたかを書きとめたり、毎食の記録をメールで自分に送ったり、自分にテキストメッセージを送ったりするだけでも十分だとしている。
「今回の研究は、適切なツールとサポートがあれば、ほとんどの人が体重を減らせることを示しています。何を食べたかを振り返るプロセスを通して、私たちは自分の習慣に気づき、行動を変えることができます」と、同研究センターの体重管理イニシアチブの医師であるキース バックマン氏は述べている。
あなたの肥満、治療が必要な「肥満症」かも!? (一般社団法人 日本肥満学会)
Midlife weight loss linked to longer, healthier lives (ヘルシンキ大学 2025年5月28日)
Weight Loss in Midlife, Chronic Disease Incidence, and All-Cause Mortality During Extended Follow-Up (JAMA Network Open 2025年5月27日)
Keeping A Food Diary Doubles Diet Weight Loss, Study Suggests (カイザーパーマネンテ 2008年7月8日)
Weight Loss During the Intensive Intervention Phase of the Weight-Loss Maintenance Trial (American Journal of Preventive Medicine 2008年8月)


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