【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証

スマホアプリを利用すると運動量を増やせる
モバイルヘルスアプリを利用することで、身体活動量を増やせることが、大阪大学が8万人超のアプリのユーザーを対象とした調査研究で示された。アプリを利用した人は、1日あたりの歩数が平均約360歩増加した。
アプリを利用した研究は、これまでは小規模な研究が多く、その歩数増加の効果を科学的に分析するのは難しいという課題があった。
そこで研究グループは今回、大阪府が運営するモバイルヘルスアプリ「アスマイル」の8万689人のパーソナルヘルスレコード(PHR)データを利用し、アプリ利用開始後の歩数の増加量を、AIモデルで分析した。
「アスマイル」は、大阪府民の健康をサポートすることを目的に、府が提供しているスマートフォン用のアプリ。健康に対する留意点を学ぶこともできる。さらに、大阪府の市町村国保加入者であれば、特定健診の結果の自動連携や、生活習慣病の発症予測AIを利用することも可能だ。
アプリを利用した人は歩数が1日に360歩増加 8万人超を調査
その結果、1日あたり約360歩、28日間の累積で約1万歩の歩数増加の効果が示された。とくに、アプリ利用開始前の歩数が少ない集団や、若年者で、歩数増加の効果は大きく、季節も大きく影響することも明らかになった。
「モバイルヘルスアプリ利用を推進することで、大阪府民の身体活動量が増加し、生活習慣病の予防や健康寿命延伸につながることが期待されます」と、研究者は述べている。
研究は、大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターの大山飛鳥特任助教(現:招聘研究員)、土岐博名誉教授、山本陵平教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Medical Internet Research」に掲載された。
歩数増加効果の推定結果

層別解析による年代ごとの累積歩数増加効果の比較

アプリの効果はとくに若年者で大きい 保健指導でも活用
これまで、モバイルヘルスアプリの利用は、健康意識の向上に効果的であることは示されていたが、行動変容への効果は十分に研究されていなかった。
とくに、スマートウォッチなどのウェラブルデバイスやスマホアプリを用いた研究では、研究に参加可能な人数や対象集団が限定され、効果検証のためのデータが十分に集まらないといった課題や、研究目的でデバイスを利用することによって、日頃よりも健康に意識した行動をとりやすくなるといった心理的要因によるバイアスが生じやすいという課題があった。
そこで研究グループは今回、「アスマイル」の会員を対象に、アプリの利用の開始前後の日常的な歩数の変化を分析し、その歩数の増加効果を推定した。
従来の統計手法では、アプリ利用開始による歩数増加効果を推定するために、アプリを利用していない対照群が必要となる。研究では、Causal Impactと呼ばれる因果推論AIモデルを用いて、アプリの利用開始前の歩数や天候などのデータから、利用開始後の擬似対照歩数を推定した。擬似対照歩数と実際の歩数を比較することにより、利用開始後の歩数増加効果を分析した。
「アスマイルでは、毎日の目標歩数の達成や、体重や血圧などを入力してポイントを貯めると、電子マネーなどの特典が抽選で当たるという報酬が付与されていますが、行動変容への有効性がこれまで十分に研究されていませんでした」と、大山氏は述べている。
「本研究は、アスマイルの短期的な歩数増加の効果を示唆する結果になりました。モバイルヘルスアプリの利用推進が、身体活動量の増加、さらには生活習慣病の予防や健康寿命延伸につながることが期待されます。とくに若年者でその効果が大きかったので、若年者の身体活動量の増加にはアスマイルのようなアプリが有効である可能性があります。長期効果の評価が今後の課題です」としている。
研究は、JSPS科学研究費およびJST戦略的創造研究推進事業ERATOの一環として行われ、大阪府国民健康医療部健康推進室国民健康保険課の協力を得て行われた。
おおさか健活マイレージ アスマイル
大阪けんしんポータルサイト
大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター
Effects of Mobile Health Care App "Asmile" on Physical Activity of 80,689 Users in Osaka Prefecture, Japan: Longitudinal Observational Study (Journal of Medical Internet Research 2025年5月21日)


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